過疎地から銀行支店の撤退が続く
スペインの大手銀行の行員リストラが積極的に実施されている。その影響をもろに受けているのが過疎地の自治体である。
定期的に移動ATM車両が巡回して来るのであるが、そこでのお金の引き出しはカードでないとできないことになっている。通帳ではできないのだ。おまけに引き出すのに手数料を1.35ユーロ(160円)が差し引かれる。高齢者はこれまで現地に所在していた銀行支店の窓口で通帳でお金を引き出していた。カードを持っていない高齢者が多くいる。だから、住んでいるところから距離的に一番近い支店に行ってカードをつくってもらわねばならない。
移動ATM車両が来る前にお金が必要であれば誰かからお金を一時的に融通してもらうようになる。あるいは、一度の引き出して必要以上の多額のお金を引き出して家で所持して行くこともある。しかし、その場合は盗難とかの危険性も覚悟しておかねばならない。
顧客へのサービスよりも銀行自体の存続を優先
銀行は顧客へのサービス優先ではなく、銀行自体の存続を優先している。その典型的な犠牲者は支店が撤退した自治体の住民である。
スペインにある8131ある自治体で銀行の支店がない自治体は今年4月の時点で4618あるという。(4月11日付「シンコディアス」から引用)。
それは地理的にはスペインの中央から北部の地域が特にそうだ。例えば、中央北部のバレンシア県内にあるすべの町村の内の91.8%には銀行の支店がゼロである。(同上紙から引用)。
毎日4支店が閉鎖されている
2010年には全国に4万3000の支店あったのが、2022年には1万9000の支店しか残っていない。12年間に2万4000の支店が閉鎖されたのである。それを行員数で見ると14万人以上の行員がリストラされたことになる。この現象が目立っているのが上述しているように過疎地での支店の撤退である。
支店の閉鎖は今も徹底して実施されており、全国的に見ると、毎日平均して4支店が閉鎖されているという。筆者が在住している町の隣の自治体は人口4万人の都市であるが、スペインで最大手のカイシャバンク支店の前に大勢の人が列を作っていたのを先日筆者の目に映った。よく観ると8台のATMの前で市民が操作している姿であった。最近までそこでは行員がお客をアテンドしていたのである。その支店の規模からして、そこでは支店長と他5人くらいの行員が働いていたはずである。
デジタル業務に精通した人の採用が増加
その一方で、行員をリストラするのとは反対に新たに雇用も増えている。銀行のデジタル業務に精通した人材を積極的に採用しているのである。スペインではデジタル銀行が10%増えるごとに、それは従来の市中銀行の28%を閉鎖することに繋がるとされている。(2021年4月24日付「20ミヌートス」から引用)。
これからさらに支店の閉鎖は続く。例えば、大手銀行のひとつBBVAでは人口4000人以下の町にある支店はすべて閉鎖するプランをもっているという。筆者が住んでいる町は人口3800人の町で、大手銀行が2支店と農協銀行が1支店がある。かつては5つの銀行が支店を開設していた。近い将来この大手銀行の支店も撤退するであろう。そしてそこにATMの設置台数を増やすようになるであろう。サービス業務も今では週に3日間支店が開いてお客を直接アテンドしているだけである。15年くらい前までは結構多くの顧客が支店に出入りしていたのを思い出す。
これからさらに支店の閉鎖は続き、行員のリストラも継続して行くはずだ。