まさかのラフプレーに驚き憤慨した。ただでさえ時間が短い番組において、貴重な与野党間の建設的な議論が台無しになってしまい、誠に遺憾である。
『日曜討論』(NHK10月29日放送)という公開討論番組内で、あろうことか野党第一党立憲民主党政務調査会長である長妻昭議員が議論の核心から大きく逸脱した言動を展開した。自民党と萩生田政調会長に対する悪質なレッテル貼りを展開し、一時番組の議論が脱線するという珍事が起きた。
しかも整然とした司会進行をも乱す“不規則発言”で番組に迷惑をかけ嗜められるに至り呆れてしまった。通常ならばNHKの議論進行に関する事前説明で議題を外れないような要請があったはずである。
普段から国会でも目にする光景ではあるが、国民の関心の高いテーマに関する議論を不毛にした事について、長妻昭議員には抗議したい。
当該問題言動部分(9時50分~54分)の文字起こし(※別稿参照)をベースに、簡単に問題点を確認して行く。
問題の悪質なレッテル貼りの場面は、以下の通り「意味の改変(や切り取り)」を防ぐためにやや長いが問題部分の全貌を記載する。また口頭のやりとりは文字にするとニュアンスが欠落するので、雰囲気を残すべく発言タイミングなどを括弧“()”で補う。
発言者はそれぞれ、番組進行のNHKアナウンサーを「MC」、自民党萩生田政策調査会長を「萩生田」、立憲民主党長妻政調会長を「長妻」とした。(敬称略)その上で問題部分を太字とした。
番組の場面(9:50~)状況概要
テーマは『旧統一教会「被害者救済」に関し、解散請求を受けて教団の財産保全の法案に関する議論』に移った。立憲と維新がそれぞれ教団財産保全に関する法案を提出、与党は「必要な法案提出を含め来月中旬を目途に方向性を固める」という状況である。
以下の通り番組では、この状況についての議論が進行して行った(ここからは文字起こし記録、文意の変わらない範囲で口語における不要な発語は削った)。
番組冒頭、MC:国会では代表質問に続き、予算委員会で論戦が始まっています。今朝は焦点となっている重要政策課題について与野党の政策責任者の皆さんに議論して頂きます。
MC:自民党の萩生田さん、与党内で被害者救済に向け検討が行われていますが具体的にどのような方針で対応して行きますか?
萩生田:与党としては「実効的な被害者救済の推進に関するプロジェクトチーム(PT)」を組織しまして、今会合を重ねているところであります。PTではまず財産保全法制や訴訟の現状を認識した上で、現行制度で出来るところ、足らざるところの整理を行って、「どうすれば救済の実効性を上げることができるのか」を考えて行きたいと思います。
例えば、「海外への財産の持ち出しは外為法での規制を強化すること」や「被害者救済の法テラスでの相談体制をさらに強化する」等は速やかな実施の観点から有効だと思っています。
「そこで手が届かない人たちというのはどういう人たちなのか」ということをしっかり整理したうえで、関係者の皆さんにもヒアリングをし、被害者弁護団ともお話をさせていただいて、11月中旬を目途に中間提言というのをとりまとめて行きたいと思います。
いずれにしても被害者の方々によりそった救済というものをしっかり考えて行きたいと思っております。
MC:長妻さんに聞きます。立憲民主党はこの特別措置法案ということですけども、この狙いはどういうところにあるのでしょうか?
長妻:まずは今、萩生田政調会長の話聞いてがっかり致しました。ま、法律は出すんだと思いますけども、法テラスを強化するとか外為法を変えるとかですね、これ国外に資金が流出するという懸念もありますが、国内の別組織に変えると、こういうことも懸念されているのですね。やはり腰が引けていると言わざるを得ません。
私はですね、自民党の中でも萩生田政調会長は最も統一教会と関係の深い議員の一人だと、いう風に思っていますから、まさかそういうことはないと思いますが、いろんな文書がきているらしいですね、旧統一教会から。「こういう法律はやめてほしい」とか「憲法違反だ」とか。萩生田会長のところにも来ているのですか?
これ自民党の中からも、「野党案は憲法違反のパフォーマンスに過ぎない」とこういうような失礼なことをおっしゃっている方がいるんですが、これ徹底的にやっぱりやらないといけないと思うのですね、財産保全は。
我々は特別措置法という新法で「裁判所に請求して裁判所が、適切な範囲、財産保全の状況を見て、そして命令を出す」ということで、裁判所が噛んでいますから憲法違反ではありません。ちゃんと法制局のチェックを受けていますので、ぜひ速やかにやっていただきたい。
MC:萩生田さん、「動きが遅いんじゃないか、与党側は」という指摘ですが。
萩生田:まずこういう公的なところ(筆者注:NHKという公共放送の公開討論番組の場)で、名指しで、関係の深さを一方的にレッテル張りされるのは非常に心外です。
(MCの指名なく不規則発言で)
長妻:深くないんですか?萩生田:党としては、関係について我々はきっちり説明をしてきたと…(遮られる)
(萩生田発言を遮るタイミングで)
長妻:どういう関係なのですか?反論してくださいよ。萩生田:私はだから、女性連合の皆さんとご縁があったということは明確にお知らせしている通りでありまして…(遮られる)
(萩生田発言を遮るタイミングで)
長妻: 選挙におけるボランティア支援は?
萩生田:それは女性連合の皆さんによるご支援はあったと明確に申し上げておりますが…(遮られる)(萩生田発言を遮るタイミングで)
長妻: 旧統一教会主催の会合への出席もあるじゃないですか。萩生田:だからそれを以て「最も深い関係だ」という風にレッテル張りをされるのが非常に迷惑だと…(遮られる)
(萩生田発言を遮るタイミングで)
長妻:最も深い関係の議員の…(MCに静止される)MC:長妻さん指名してから発言してください。
(萩生田発言中にかぶせる形で)
長妻:反論があるなら具体的に言ってくださいよ。萩生田:ですから、そこがね、そこがパフォーマンスだと私申し上げたいのですよ。被害者の皆さんの救済をすることが目的だとすれば、野党の法案の中身についてもしっかり我々は吟味をしたいと思っています。
(萩生田発言中にかぶせる形で)
長妻: 腰が引けてるって。なんでこれ協議しないのよ…(MCに遮られる)(MCが進行主導権を取り戻す)
MC:いったん音喜多さんにも聞きます…
(文字起こし記録はここまで。太字は筆者。)
問題点①:議論自体を毀損した
テーマは『旧統一教会「被害者救済」に関し、解散請求を受けて教団の財産保全の法案』であり、討論番組のこの時間帯はそれに関する貴重な公開議論の場である。にもかかわらず根拠を示さない主張で議論相手の印象を貶める人格攻撃は議論を毀す禁じ手である。もはやそこで何を展開されても誤謬や詭弁に陥ってしまうからである。
有力な野党の重鎮議員でもある長妻議員がこの議論の機会自体を毀損してしまったのは非常に問題である。
問題点②:無責任な放言を放送させた
野党の中の質が悪い一部の議員はこれまでにも、番組中に事実から遠い話や根拠の示せない放言で政権与党の印象を悪くしようとする言動をNHKの日曜討論で行ってきたことを筆者は観測している。
今回もその事例が一つ増えただけであるが、今回の印象付けは特に卑怯な行為である。国会議員がNHK(公共放送)で発言した場合、それが事実と異なっていたとしても広く一般視聴者が“本当のことだ”と信じてしまうことに一定の合理性を発生させてしまうからである。
そしてブラックコーヒーに一度ミルクを入れたらもうミルクを回収できないのと同様に、一度悪印象が混入したらそれを完全に除去することは不可能になってしまうからである。
むすび
今回の行為は、典型的な「野党ラフプレーによる国益毀損行動」である。
一部の野党議員は国会において、不祥事や(マスメディアの虚報を元にした)騒動等に便乗して人格攻撃や政権追及ばかりを行う。これにより国会機能が低下してしまうことが常態化している。その結果、国政に関する建設的な議論ができず、必要な改革に手がつけられずに日本が迷走し続けてしまう。
今回の長妻議員の行為はそんな日本の政治を象徴しているように感じられた。
唯一、萩生田政調会長が正面から堂々と応答していたことはせめてもの救いであった。またサウナでの珍事件で覚醒した音喜多議員がその場を和ませたことには個人的に感謝したい。そして、長妻議員には、まるでいじめのような言い逃げ・レッテル貼りは止めよと言いたい。
最後に、このような悪質な印象操作にも負けず国政を推進する萩生田政策調査会長に敬意を表す。