適法な辺野古最高裁判決と違法な沖縄県知事の徹底抗戦

辺野古最高裁判決に至る経緯

世界一危険とされる沖縄県普天間米空軍基地移設のための辺野古移設における軟弱地盤の改良工事をめぐり、沖縄防衛局による埋め立て設計変更承認申請を、沖縄県知事は公有水面埋立法に基づき災害防止対策や環境保全対策が不十分との理由で2021年11月不承認とした。

このため、沖縄防衛局は、国土交通省に対し地方自治法255条の2及び行政不服審査法4条に基づき審査請求をした結果、国土交通省は2022年4月不承認を取り消す採決をし、沖縄県知事に対し承認を命ずる「是正の指示」をした。

玉木デニー沖縄県知事
NHKより

しかし、沖縄県知事はこれに従わず、違法な国の関与であるなどと主張して、国に対し福岡高裁に裁決の取り消しを求める抗告訴訟を提起した。福岡高裁は国土交通省による採決を適法と認め沖縄県知事の訴えを棄却した。これに対し沖縄県知事は最高裁に上告したが、2023年9月4日最高裁第一小法廷判決は全員一致で原審福岡高裁判決を維持し沖縄県知事の上告を棄却し確定した。

本件最高裁判決理由の骨子

  1. 本件公有水面埋立法に基づく埋め立て設計変更申請に関する都道府県知事の承認事務は、国が都道府県に国の事務を委託している「法定受託事務」(公有水面埋立法51条1号、地方自治法2条9項1号)に該当する。
  2. 「法定受託事務」は、国が本来果たすべき役割に係るものであって、国においてその適正な処理を特に確保する必要がある公益性の高い事務であるから、都道府県知事がなした不承認処分に対する地方自治法及び行政不服審査法に基づく審査請求は、公有水面埋立法を所管する国土交通大臣に対してなされるべきものである。
  3. 沖縄防衛局による審査請求に対して、国土交通大臣がなした本件埋め立て設計変更承認の採決は、行政不服審査法及び地方自治法の趣旨に照らし適法であり、他に採決の適法性を争うことができる旨の規定もないから、原審福岡高裁の判断は相当であり、沖縄県知事による本件採決の取消を求める本件抗告訴訟は不適法として却下されるべきである。

 適正妥当な本件最高裁判決

本件最高裁判決には、行政不服審査法や地方自治法など関係法令の解釈・適用に特段の違法性は認められず、加えて、移設工事に不可欠な公有水面埋め立て設計変更の承認事務という本件「法定受託事務」の高度な公益性を考えれば、本件最高裁判決の判断は相当であると言える。

すなわち、国は、外国の侵略から国民の生命身体財産を守る安全保障上の重大な義務と責任を負っているところ、この義務と責任を果たすためには、日米同盟関係の強化を含め、必要とされる防衛力・抑止力の保持整備が不可欠である。

したがって、本件はまさに1億2000万国民の安全保障にかかわる公益性の極めて高い事案であり、安全保障に責任を持てない一地方自治体知事の権限を超越し、これに馴染まない国の専権事項に属する事案である。本件最高裁判決はこれらをも考慮した適正妥当な判断であると言える。

本件最高裁判決等に対する批判

米軍基地反対の左翼系の一部行政法学者などは、行政不服審査法は私人の国に対する審査請求を前提としているから、国である防衛省が同法に基づき国土交通省に審査請求する適格性がなく違法であると批判している。

しかし、判例によれば、行政行為の適正化の見地から、国(厚生大臣)による行政不服審査法に基づく審査請求も認めているから(東京高判昭30・1・27行例集6・1・167)、国にも同法に基づく審査請求の適格性があり違法とは言えない。

軟弱地盤により埋め立ては困難であるから、国土交通省による埋め立て設計変更承認の採決は違法ないし不当であるとの批判がある。しかし、東京国際空港や関西空港などにおいても埋め立て工事の実績があるから、技術的に辺野古移設工事に限って埋め立てが特段困難であるとは言えない。

選挙等で示された辺野古移設反対の沖縄の民意は「公益」であり、判決はこれを無視するものとの批判がある。しかし、民意は重要ではあるが、国民の生命身体財産を守る国の安全保障に関する事項については一地方自治体の民意のみを絶対視することは相当ではなく、安全保障上は危険でさえあると言えよう。

違法な沖縄県知事の徹底抗戦

玉城沖縄県知事は、上告を棄却した最終審である本件最高裁判決すらも一切無視し、あくまでも辺野古移設に絶対反対し、埋め立て設計変更の承認を拒否し続け、今も徹底抗戦している。

このような沖縄県知事による法を無視した行動は、民主主義及び法治国家の原則である「法による行政の原理」にも背反し違法である。本件最高裁判決に照らせば、代執行訴訟では知事の敗訴は確実である。

法を無視した沖縄県知事の違法な徹底抗戦は、日米同盟関係の強化に悪影響を及ぼし、国益を害するだけではなく、軍事力を増強する中国や北朝鮮を利し、日本の抑止力を低下させる危険性がある。