やる価値のない4つのムダな努力

黒坂岳央です。

「世の中にムダな努力はない」という言葉がある。確かにこれは100%完全には否定したくはない。やってみないとわからないことはたくさんあるし、やってみてムダだと感じたらその時点でやめればいいからだ。

しかし、やる前からわかりきっている「最初から手を出すべきではない努力」は確実に存在すると思っている。独断と偏見で取り上げたい。

Kar-Tr/iStock

将来性がない投資

投資は今より将来の成長にベットする行為である。すなわち、現状より未来が悪くなるものへの投資はすべからく失敗ということになる。ここでいう投資は資産運用だけでなく、自己投資、事業投資などすべてにいえる。「そのような愚かな投資などあり得るのか?」と反論が返ってきそうだが、そうした愚かな投資は山ほど存在する。

たとえば使う予定もない専門知識へ自己投資する人はかなり多い。「資格さえ取れば収入アップになるかも」「いつか役に立つかもしれない」という意識で使うもしない専門知識への投資はムダに終わる可能性が極めて高い。自分自身がやらかした経験がある。筆者は工業高校出身なので、在学中に「危険物取扱者の資格を取ればガソリンスタンドのバイトの時給があがる」とクラスメイトが話しているのを聞いて勉強してみたことがある。結果的に一番簡単なものすら落ちてしまう体たらくだったが、仮に取得できたとしてもガソリンスタンドで働くことはなかったので努力がムダに終わった可能性は否定できない。

ビジネスで言えばやたら豪華なオフィスを借りたり、高級車に乗るなどだ。ブランディング効果のリターンが見込まれるならありだが、気分の高揚など一瞬で雲散霧消するのでこうした豪遊の多くはただの浪費で終わる。

将来使う予定のない投資のほとんどはムダである(ちなみに教養は除く。こちらは将来役に立つかどうかではなく、己の人格を磨くために有効だ)。

質の低い努力

そして明確に成果を出すために努力する場合でも、質が伴わない頑張りはムダである。

勉強で言えば大人になった後の脳はエピソード記憶や文脈記憶、理解を伴う反復を経なければ知識としてまるで定着しない。それなのに無味乾燥に学生時代の一夜漬けのような勉強をしてもムダな努力で終わる可能性は極めて高い。この場合、まずはやる前に勉強の質を高める技術を学ぶべきだ。

その他でも健康になろうとして努力した結果、かえって不健康になる人もいる。たとえばサプリメントなどの栄養補助食品をせっせと食べるも、そもそも栄養の吸収率を加味せず戦略を立てたり、特定の栄養価だけ過剰摂取してかえって下痢や体調不良になっては元も子もない。これでは努力がムダどころか逆効果になってしまう。実例で言えば筆者の亡くなった祖母は昔、意志から骨密度が低いと言われてカルシウム剤をとりすぎで尿路結石になった。

結果を出すには目標を明確に定め、ゴールから逆算して必要な努力量と努力の質を理解し、淡々と積み上げるしかない。努力の量も必要だが、それ以上に質が伴わなければせっかくの量も無駄になってしまう。

適正のない分野を頑張る

努力の量も質も伴って成果を出す。ドラマや映画であれば、めでたしめでたしで幕が終わりるのだが、現実世界は違う。たとえば勉強をして特定の専門分野の知識技術をつけてプロになって働いた後も、現実的に適正がないのでうまくいかない、楽しめないということは起こり得る。

過去に何度か話した通り、それこそまさしく昔の筆者である。会計の専門家として、簿記の資格を取ったり米国大学留学をしたり、外資系で働いて10年くらいこの分野で必死に頑張ってみた。努力の結果、プロとして挑戦する土台には立つことができたが、適性がなかったので一生やりたいと思えず長い間苦しむことになった。最終的には会計職を完全に捨ててまったく別のビジネスで起業した。このように適正がなければ結局途中でやめることになり、無駄になる。だが難しいのは適性はやってみないとわからないこともある点だ。

合わない人と付き合う

最後に人間関係において自分と合わない人と無理に付き合う、ということである。

お互いに等価交換をして利害関係者として付き合うならまだいい。すなわち、これはビジネスにおける取引だからだ。合わないとわかっていても上手に不快感を覚えない距離をしっかり保つことができれば、特に問題はない。問題は利害関係者でもないのに合わない人に付き合うケースである。

たとえば近所で顔なじみだからという理由だけで不快な想いをさせられても我慢するとか、学生時代の友人だったという理由だけで図々しいお願いを我慢して受け入れるというケースである。こうした我慢は一切不要だ、相手から嫌われても陰口を叩かれてもやるべきは取引の拒絶、no dealいったくである。

我慢してそれでも上手に付き合うという努力をしても、未来への延長線上に幸福は待っていない。つまりムダな努力に終わる可能性は極めて高い。合わない人と無理に付き合う時間を過ごしていいほど人生は長くないのでさっさと損切りをして合う人と合う部分だけ快適に付き合うべきであろう。人間はたくさんいる。眼の前の一人に無理に固執する必要は何もない。

今回紹介した4つの無駄な努力は知識として知っておけば、やる前から回避することができる。せっかく頑張って時間や資金を投じるなら気持ちいい結果を全身で受け入れたいものである。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。