ロシア系容姿でもブラジルでは目立たない
ブラジルはロシアがスパイを潜伏させるのに好んで選ばれている国のひとつ。ラテンアメリカではキューバ、ベネズエラ、コロンビアなどもロシアがスパイを潜伏させるのに好んで対象にしている国々となっている。
ブラジルの場合は多民族によって国が構成させているのでロシア系の容姿をしていても別に目立つわけではない。また、治安の安全性においてのコントロールも緩慢で偽造書類の作成も容易な国とされている。正に、スパイが潜伏するには格好の国である。
以下に7月13日付「エル・デバテ」がロシアのブラジルでの諜報活動について取り上げた記事内容を要約することにしたい。
ブラジルでの3人のロシア人スパイ
例えば、ロシアの二人のスパイは出生証明書をチェルカゾフ氏はリオデジャネイロ市で1989年4月に取得し、ミクシン氏はパドレ・ベルナルド市で発給してもらっている。それを入手するのは、勿論、賄賂である。
2015年までこのような偽造証明書も公証業務の課程を通過する必要がなかったから偽造書類の作成は容易であった。チェルカゾフ氏が残した報告書のひとつに、400ドルのネックレスを役所に勤務していた女性に贈り、彼女はその見返りとして出生証明書を作成してくれた、と言及しているという。そのあと彼は市民権と運転免許証も取得している。
彼ら二人に、もうひとりシミレフ氏を加えて3人は名前もブラジルの名前に改名して諜報活動を行っていた。チェルカゾフ氏はビクトル・ミュレール・フェレイラと改名し、ブラジル人女性と結婚。勿論、彼の上司の許可を得ての結婚であった。彼らはサンパウロに在住していた。
ところが、2022年にハーグの国際裁判所での勤務が受け入れられてアムステルダムから入国しようとした時に彼は逮捕された。ブラジルに送還されて取り調べが行われた。偽造書類を使って違法活動していたということが判明して懲役15年の判決がくだされた。しかし、法廷でロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の諜報員かという質問に対して彼は沈黙を守ったという。
シミレフ氏の場合は同じくスパイ活動をし、イリナ・ロマノヴァ氏と結婚していた。彼女はギリシャで諜報活動をしていた。ところが、2023年に彼が付き合っていたブラジルの女性が彼の突然の失踪を訴えた。それが機縁となって彼の諜報活動が判明して逮捕された。
ブラジルではゲルハード・ダニエル・カンポという偽名を使って3Dプリント会社を経営していた。この会社は陸軍と空軍や文化省から受注を受けていた。彼が逮捕された時には彼の妻であるイリナ・ロマノヴァ氏も別の愛人と生活していたということも判明している。
ところが、奇妙なことにシミレフ氏と彼の妻イリナはほぼ同時に行方を晦ましたのである。恐らく、ロシアの諜報本部から逮捕される危険性があると警告されたようである。彼女も当時同棲していた男性には如何なるメッセージも残さず去ったという。彼女の場合はアテネから去ることができた。
3人目のミクシン氏の場合はブラジルではホセ・デ・アシス・ジアマリアという偽名を使っていた。ブラジルで数年諜報活動を行った後にノルウェーに移って、アルティカ大学に籍を置いていた。そこでの彼の研究テーマはハイブリッド戦争ということであったが、ブラジル国籍であったということで当初は疑われることはなかったが、最終的に逮捕された。
ウクライナ戦争がスパイ派遣に間接的に影響
ウクライナ戦争が勃発して以来、ロシアの外交官を各国で受け入れなくなっている。その為、外交官としてGRUの諜報員を世界に派遣することが難しくなっているという。これはロシアにとって打撃である。