高齢者の方の運転免許返納について、悩まれているご家族の方も多いのではないかと思う。実は私のうちでも、父が75才になったら返納すると言っていたのだが、更新が近くなったらあと一回更新すると言い出して困っている。次の更新が来たら、もう一回と言いそうで怖い。
運転が危なげだから、もう止めて欲しいと思っても、なかなか止めてくれないものである。運転免許を返納すると、タクシー料金の割引など、現在でもいろいろ特典はあるが、十分だろうか?
結局、運転免許の返納が進まない理由にはいくつかあると思うのだが、そのうちの一つは運転免許の取得に高額の教習料を支払っているからではないかと思っている。
普通自動車の第一種運転免許であれば、現在だと30万円くらいかかると思う。私の場合は大型二輪と大型特殊の免許も持っているので、50万円くらいかかっている。それを、返納することによってゼロにする、というのは私自身も少し抵抗がある。
日本の運転免許の教習制度は、丁寧で、交通事故の減少に貢献していると思う。だから、教習が無駄だとか、高いとかいうつもりはない。だけど、高額な料金がかかっているので、返納するのに心理的な抵抗があることも事実である。そこで、免許返納には現在でも特典があるが、その特典をいっそう充実させてはどうだろうか?
現金で30万円返金するのは難しいのかもしれないけれど、商品券やタクシーで使えるチケットなど、教習料金と同額の金品を特典として支給できないだろうか? もちろん、私のように地方に住んでいれば、運転免許の問題が単に金銭的な問題ばかりでは無いことはわかっている。バスや鉄道が不便で、場合によっては通っていないこともある。病院へ行くにも車が必要、という事情がある。
だから金銭的なメリットを付与しても、運転免許所持者にはそれほど魅力的には映らないかもしれない。一方で、高齢者の起こす交通事故は、日々報道で目にするものである。特に印象的なのは、ブレーキとアクセルの踏み間違いが多い。
運転免許は資産のうちの一つである。それを返納してもらうには、もっとメリットを提供しなくては難しいのではないかと考えている。
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松橋 倫久
1978年青森県生まれ。東北大学経済学部卒業。弘前大学大学院修士課程修了。元青森県職員。統合失調症で辞職後、求職者支援訓練Webデザイン科を経て、就労移行支援を利用し求職活動の予定。