話題にならなくなったウクライナ問題

ウクライナの報道がめっきり減ってきました。このところ、膠着状態であった上に食傷気味となっており、メディアも何か新味がないと報道しない商魂たくましさがあります。そこにイスラエルとハマスの問題が勃発、報道機関からすれば渡りに船、そして見事に目線をほぼそちらに振り替えました。

ゼレンスキー大統領の胸中やいかに 同大統領Fbより

このとばっちりを受けたのは元コメディアンであるゼレンスキー大統領でしょう。元コメディアンとわざわざ断りを入れたのは芸人は着目度があってこその芸人なのです。人気が落ちることは自分のビジネスが終わることを意味します。

元芸人ゼレンスキー氏は様々な手段で各国にウクライナ支援を訴えました。まさに決死の営業活動です。おかげで多くの国の賛同を得て、高価で高度な武器、兵器の供与が次々と決まりました。が、同じトーンで繰り返す氏のスタンスは「継続こそ力」だとしても聞く側にはインパクトが無くなるのです。これはゼレンスキー氏の行動に限らずどんな事象でも共通します。これを経済学の限界効用逓減の法則に当てはめることも可能なのかもしれません。

イスラエルとハマスの戦いが休戦になる可能性はあります。この両者は過去、ずっと戦ってきては停戦を繰り返しています。個人的には今回もさほど遠くない時期に停戦になるとみています。しかし、仮に停戦になってもその後、再びウクライナ問題に目を向けるか、と言われれば耳目を集めることはない気がします。つまり、ゼレンスキー氏が外交的にどれだけ訴えても和平がキーワードになれば世論の圧倒的賛同を得られることはなく、各国は動けなくなる、ということです。

ロシアとウクライナ、どちらが強いか、といえば現時点ではロシアに分がありそうです。理由は明白。ウクライナには自前で武器が調達できず、NATO頼みにあること、しかも欧州もアメリカもここにきて無尽蔵な武器供与は各国の国内事情があり、徐々に難しくなっていることがあります。2番目に兵力の問題。様々な推計調査がありますが、概ね20万人。それに対してロシアは90万人。双方、総力戦にはなっていませんが、兵力を貯金と考えれば取り崩しが大きいのはウクライナであります。特に世界大戦のように第三国が合流する場合は兵力の増強が図れますが、世論が戦争を厳しく統制する時代となった今、ウクライナに合流し、共に血を流す第三国はないでしょう。これでは兵力という貯金を使い果たすことが目に見えてくるのです。

私は再三、ウクライナという国家が壊れることを懸念してきました。国家の構築すなわち、インフラや国民の財、教育、人口、社会保障、その他あらゆる基盤は一朝一夕では立ち上げられません。私は50年というスパンを見ています。つまり、今回の戦争、そしてその責任者であるプーチン氏とゼレンスキー氏は国家を少なくとも50年分後退させたのです。

その上、ウクライナはもともと極端な人口減に直面しています。ウクライナが独立した91年、5200万人を超えていたのに欧州の不良国家と言われ続け、不正大国だったこともあり、海外流出が続き、人口は減少の一途となり、現在は3600万人程度。更に問題は人口ピラミッドで一番少ないのが15-34歳の層であり、今後、戦争が終結してもウクライナが国家としての体を成さなくなってしまいます。

戦争は大義と引け際ほど難しいものはありません。大義の基本は国土防衛です。ロシアの最大の懸念はウクライナがより欧州寄りになり、将来NATOに加盟するなら国境を接することになり、かつての東欧のような緩衝地帯が無くなることが最大のリスクと捉えています。戦争当事者は盲目のようなデスマッチに陥りやすいものです。日本もそうでした。

プーチンが負ける日はプーチンが死んだ時以外に考えられません。北朝鮮がそうであるように完全独裁で全ての権力を握りしめています。それはロシアという国がそもそもそういう成り立ちであって国民は民主主義そのものを理解できないし、独裁政権下の民が不幸か、と言えばその価値判断は西側標準であって彼らは西側のスタイルを必ずしも必要としないこともあるのです。

西側諸国が武器を供与しにくくなった時、戦争終結に向けた外交が動く時だと思います。様々な解決方法があるでしょう。ビジネス的に東部ウクライナをかつての東欧のような緩衝地帯として独立させ、ロシアは実質的に緩衝地帯に将来干渉できる代償として巨額の戦後補償金をウクライナに払う案は無いとは言えないでしょう。ただ、その場合、ウクライナが再び不正の温床になりやすいことから第三国なり、欧州がその資金管理ないし監査をするという条件をつけるべきでしょう。

戦争はそもそもご免ですが、長期戦になった国はアフガンでもイランでも荒廃が進みます。欧州の穀倉地帯に安どの日を早く回復することが我々の使命ではないでしょうか?

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2023年11月29日の記事より転載させていただきました。