上司にクビと言われた!労基署は助けてくれるの?

「労基署に駆け込む」という言葉を耳にしたことはありませんか。社内で労働問題に巻き込まれた際の常套句で使用します。

はたして労基署は助けてくれるのでしょうか。

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労基署はこんな場所

労基署は厚生労働省の第一線機関として全国に点在します。法定労働条件に関する相談や、勤務先が労働基準法などに違反している事実に行政指導を求める申告を受付、事業場に立ち入って監督・指導をします。

重大・悪質な事案については、刑事事件として取り調べなどの任意捜査や、捜索・差し押え、逮捕などの強制捜査を行い、検察庁に送検する司法警察事務も担っています。

労基署について、使用者による不当労働行為の相談を何でも受け付けてくれる「駆け込み寺」かのようにアドバイスをしている識者がいます。それはまったくの間違いです。

人員整理は突然やってくる

松井正さん(43歳、仮名)は大手メーカーの営業部課長の職責にあります。営業畑ひと筋に20年が経過しました。社内結婚し子供にも恵まれました。上司の勧めもあり長期ローンの自宅を購入したのは5年前です。通勤は会社まで片道2時間かかりますが、充実した生活を送っていました。

そのような時、上司から急な呼び出しがありました。呼び出された部屋に入ると、上司と人事課長が座っています。上司からは突然、「君には今日で辞めてもらう。荷物はあとで送るから心配しないでくれたまえ!」と一言。人事課長からは業績悪化でやむをえないことの説明があり、無理やり誓約書にサインをさせられました。

必死に掛け合いましたが取り合ってくれません。パソコンは押収されて、ルームキーも取り上げられました。これで収入の見込みは立たなくなりました。ショックのあまり精神的ダメージを受けましたが、悩んでいる時間はありません。

いま考えられる選択肢は2つあります。不当解雇を訴えて会社に残る道を模索するか、会社に見切りをつけて転職先を探すかです。松井さんは、何とかして会社に残る道を探すことにしました。どのような行動に出ることが望ましいのでしょうか。

労働基準監督署に駆け込むと・・・

「労基署に駆け込め」を実行したらどうなるでしょうか。窓口で軽くあしらわれて相手にしてもらえないでしょう。運よく監督官と面会できたとしても、対応はさじ加減ひとつです。労基署に持ち込まれる案件は山のようにあり対応しきれないことが原因です。

また、労基署が後ろ盾になり解雇の撤回を求めることはありません。違反があれば是正措置はするものの、解雇が有効か否かの判断はしません。労基署には司法警察としての権限がありますが、個別の事案については対処しません。事案が極めて悪質な場合はどのようになるでしょうか。次のように言われるはずです。

会社に連絡を入れます。依頼があった旨を話しますがよろしいですね?

労基署に駆け込んだことが会社へと知られることになります。労基署が比較的早く動くのは未払い残業(時間外労働)のみです。温度差はありますが証拠が揃っていれば相談者の話を聞いてくれるはずです。しかし、収入の問題は改善しません。

会社と争うには覚悟が必要

筆者は会社と争うことはお勧めしていません。運よく復職できても、待っているのは茨の道です。会社から退職を求められたら、退職金などの面で有利な条件を引き出す交渉くらいにとどめ、次のキャリアパスを探したほうが生産的ではないかと考えています。

争った場合、何らかの報復が待っていると考えたほうがいいでしょう。本来、報復をしてはいけないのですが建前です。懲戒、異動、降格、賃金カット、あらゆることを想定しなくてはいけません。会社を相手に争うことになりますので、相当な覚悟が必要になります。

労働者に言い分があるように、会社にも言い分があります。それらをつき合わせれば、100%どちらかが正しいということはありません。まずは、自らが正しい情報を収集しなければなりません。