士業専門コンサルタントが教える「プロ士業」の見極め方(横須賀 輝尚)

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経営者をサポートする士業と呼ばれる専門家がいます。難関資格を保有する専門家として尊敬を集める一方、同じ資格保有者でも仕事内容や方針、そして能力も当然異なります。

「士業には、あなたが抱える問題を全て解決してくれるプロ士業と、そうでない士業がいる。士業のことをよく知って、本物のプロ士業を見極めた上で選んでもらいたい。」

そう語るのは士業向けの経営コンサルタントで自身も士業(特定行政書士)である横須賀輝尚氏。同氏の著書「プロが教える潰れる会社のシグナル」から、プロ士業の見抜き方を再構成してお届けします。

プロ士業かどうかを見極める質問

プロ士業かどうかを見抜く質問、それは「最終的に案件について、先生のご意見をいただけますか?」というものです。「えっ、自分の意見を言わない士業なんているの?」と思われるかもしれませんが、いるのです。それは「リスク感覚」にひも付きます。

例えば、あなたが難解な問題を抱えていたとしましょう。そうですね、労務問題などがわかりやすいと思いますので、労務問題の例を挙げます。よくある「問題社員」の存在で、解雇できるほどの損害がなく、かといって戦力になっていない。それでいてほかの社員に悪影響を与えている。まあ、結構多い事例ですね。

そのときの対応としては、

(1)教育・指導して改善の方向を目指す
(2)退職勧奨を継続的に行う
(3)リスクを踏まえた上で解雇する

というのが士業から出てくる回答です。

そして、士業はこうした(1)(2)(3)を並べてこう言います。「社長、どれを選ばれますか?」と。つまり、選択した責任を負いたくないがゆえに、自分の意見を言わない。あくまでそれぞれにおけるメリット・デメリットの説明に終始するのみ。これがスタンダードな士業の回答で、そこに士業の判断は含まれないのです。リスクに敏感ですからね。

プロ士業はここが違います。自分の判断を伝えることができる。これがプロ士業です。例えば、いまの例ならこんな感じで回答してくれるのが、プロ士業です。

「社長、選択肢としては(1)、(2)、(3)とあります。しかし、他の社員に与える影響を考えると、のんびり改善などしていると大量離職の可能性があります。ここは、早急に退職勧奨。場合によっては、解決金のようなものを積んでもいいでしょう。とにかく早く問題社員に辞めてもらうべきです。」

もちろんその結果、労基署に駆け込まれたりなどのリスクは当然あります。しかしながら、あなたの会社のことを考えて、自身のリスクを顧みずに自分の判断を言えるのがプロ士業。最悪の状態も当然想定した上での判断をします。

ですから、自分の判断をきちんと言ってくれるか。これがプロ士業と普通の士業との違いと言えるでしょう。

別の言い方をすれば、高い顧問料を支払うのですから、そのくらいのリスクは負わせた方が良いです。その方がお互いの関係もピリッと引き締まったものになります。この「判断業」ができるかどうかは、プロ士業の大きな特長であり、魅力です。

白、黒、グレーの中で、判断を任せられるのが「プロ士業」

「判断」ということで、合わせてグレーゾーンについても解説しておきましょう。パブリックな媒体への記載になりますので、ちょっと表現は曖昧にさせていただきますが、要は白、黒、グレーの判断の中で、グレーゾーンについてきちんと自分の考えを伝えることができる士業がプロ士業です。

別の視点で見れば、真っ白しか認めない士業は、ほぼ行政と同じなので、高い顧問料を支払って相談する意味がありません。だって行政に聞けばタダですからね。

グレーゾーンそのものの説明は不要でしょう。例えば、あるものの経費算入について、白ではないけれど、黒でもないようなときがわかりやすい。社長のスーツとかですね。

日常的な衣服に関しては、経費参入が認められないとされていますが、例えば社長個人の講演会が多く、それが大きな収益になっている場合は、衣服ではなく衣装として経費算入が認められるケースがあります。ね、微妙でしょう。

これに絶対はなく、あくまでケースごとの判断になりますが、こういった点でも、「自分の判断」を言える人がプロ士業です。それもあなたの好みに応じて。

例えば、「おそらく経費算入することはできますが、税務調査が入った場合、否認される可能性があります。それでも私は必要経費だと戦いますが、負けてしまうケースもあります。ただし、経費としては微々たるものなので、今回は入れてしまっても全体で見れば問題ないと考えます。もちろん、入れなければ何も言われることはありませんが…」のようなかたちで、きちんと意見を言ってくれる人が、プロです。

特にこの税金の問題で多く起こります。節税と脱税、言葉は似ていますが、その境目は微妙なところで税理士も関与税理士となった以上、悪質な場合は幇助したとみなされるリスクを持っています。ですから、真っ白な方が税理士としては楽なわけです。そこを踏まえて、きちんと判断してくれる人。それがプロ士業といえるでしょう。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚 https://www.amazon.co.jp/dp/B08P53H1C9
公式サイト https://yokosukateruhisa.com/

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年12月20日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。