黒坂岳央です。
高島屋のケーキ問題を受け、SNSでは様々な反応が見られた。
「仕事なのだからきちんと商品を届けて然るべき」という声や「12月は時期柄、平時と同じように物が届くと考えるべきではない。配送現場はとっくに臨界点を超えている」といった声もあった。大手物流会社においては、12月は通常期の2倍以上の荷物量になるという専門家もいる。
こうなるとなるべく贈り物や買い物は繁忙期の12月を避けるのが無難だろうが、社会全体で自主的に実践することは難しい(そもそもケーキ問題は配送ではなく冷凍に問題があったという見解も見られるが)。
もしかしたら12月は配送料金を値上げする時代になるかもしれない。いや、むしろ配送システムを維持するためにもそうするべきと考える。
航空業界や宿泊業は「時価」が普通
我々を取り巻く商品サービスは値段がついており、今年はインフレと円安で値上げ著しかったが、それでも日次でポンポン変わることはない。一方で、日次で値動きをする「時価」を採用するものもある。その代表格が航空券や宿泊料金である。他にも引越し業者やテーマパークなども同じだ。
こうしたサービス業界では夏休みや年末年始は、金額が跳ね上がる。そういう意味で、日用品などとはまったく異質の商品である。航空業界や宿泊業は繁忙期の値上げによって、閑散期は多くの利用客を呼び、繁忙期は客単価を高めて限られたマンパワーで対応できる合理性を担保している。
そして長くデフレが続いて価格変動に大変敏感な我が国でも、こうした業界の時価には慣れている。筆者を含め、価格が跳ね上がる時期を避けて、旅行は閑散期に行くようにしている人も多いはずだ。実は我々は一部の商品において時価にうまく付き合っているといえる。
配送料金もハイシーズン価格に
通常期の荷物量は増加しているのに、現場では人手不足が深刻な状態が続いている。こうなると他の業界はサービス料の値上げをすることで、利用時期を分散させるインセンティブが働く。だが、配送料金は同一料金で現場の努力で耐えている。配送料金にハイシーズン価格を導入することで改善できないだろうか?
無料アルバイト誌を見るとヤマトや佐川、郵便局の配送スタッフの大量募集がされているが、クリスマスケーキの製造スタッフなどの仕事に時給負けして人員が集まりにくい状況が起きていると想像している。配送料金が通常期と同じでは、より高い時給の力でスタッフを集めることも難しい。だが、ハイシーズン価格を導入すれば他の業界より高めの水準でアルバイト募集ができるので人手不足の解消につながる。
また、ハイシーズン価格を採用すれば、発送側も創意工夫をする。ネットショッピングの買い物も、ちょこちょこポチるのではなくなるべくひとまとめで買い物をしようとするだろう。不要不急の買い物なら11月や1月にズラしてもいいと考える人も出てくるはずだ。
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自動運転によるトラック輸送の長期構想もあるが、規模が大きいプロジェクトなので今日、明日すぐさま実現とはいかない。その前に12月の繁忙期の配送に限界が来ればそのコストは社会全体で負うことになる。すぐさまできる対応の一つに繁忙期のハイシーズン価格の採用があるだろう。12月も当たり前に荷物が届く、そんな時代が終わろうとしているのではないだろうか。
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