新年の抱負がムダに終わる理由

黒坂岳央です。

こんなことをいうと反発する人は確実にいるが、現実的には新年の抱負はムダに終わることが多いのではないだろうか。去年も似たような記事、「新年の抱負」より「昨年の反省」をしなさいを書いたが、今年はその理由を論考したいと思う。

確かに新年の抱負は楽しい。自分は夢を膨らませている人にわざわざ冷水を浴びせるつもりはないが、結果としてそうなる可能性はある。そのため、この先の記事は新年の抱負に夢と希望を込める気質の人は見ないでもらいたい。

LanaSweet/iStock

理由1.本当にやりたいことではないから

「願えば叶う」みたいな話がある。成功した人に成功の秘訣などのインタビューなどをすると「強い想いを持つことだ」といった答えを出すことも多く、それに感化されて元旦という神聖さの感じる時期に願ったことは実現すると考えてしまいがちだ。

しかし、これまでいろんな人の抱負を聞いてきて思うことは「それって本当に心の底から、情熱的にやりたいこと?」と感じる事が少なくない。「世界一周旅行にいってみたい」とか「起業してみたい」といった抽象的なテイストで返されることが多いからだ。

これらは新年の抱負というより、「できたらいいな」という妄想に近い。なぜならこうした願望を年内に実現させるための具体的なプロセスの明確化がまったくなされていない事が多い。

人は本気で心から求めるものがあれば、行動力がケタ違いに上がる。たとえば本気で恋愛をしたら、効率性とか合理性などはどうでもよくなり、あらゆるタスクの優先順位の一番上に来る。自分は合理性を好む気質であるが、昔、付き合っていた彼女に15分間会って話をしたくて片道2時間移動したことがあった。本気になった人間の行動力はケタが違う。仮に新年に立てた抱負がそのレベルの本気度でないなら、1週間後に忘れ、1ヶ月後により優先度の高いタスクに上書き保存されているだろう。つまり本気でやりたいものではないのだ。

たまに「今年の目標を叶えました」と言っている人がいるが、よく見てみるとそういう人たちは新年のタイミングに即席で願望を作り出したのではなく、普段からずっとその願望を持ち続け実現するための行動を続けているだけに過ぎず、その願望を新年に表明しただけというケースがほとんどだ。つまり、新年の抱負を叶えたという人の抱負は、元々持っていた現在進行系のプランであり、厳密には抱負ではないのである。

理由2.プランニングの欠如

新年の抱負なら、それは1年以内に実現させる前提であるべきだが、現実的に1年以内に実現するとは考えられない願望であることは少なくない。

たとえば難関資格取得を新年の抱負に上げる人がいるが、現在の学力を冷静に考慮した場合、必要な工数や時間を考えると年内の合格は到底現実的ではないことも少なくない。例として英語力がほぼゼロの状態なのに「今年中に英検1級とTOEIC900点を取ります」といった抱負を持つことは一部の例外を除けばほとんど意味がない。

年内に達成させる願望を持つなら、ゴールから逆算して再現性の期間計算を行い、現実的な着地見込みを定めるべきだろう。だが初心者の段階で厳密な見積もりなどできるわけもないため、「今年はまずは毎日の英語の勉強習慣を作る!」といったもっと現実的で実現可能なプランニングであるべきだろう。1つクリアすればその次の目標が見えてくるものなのだ。いきなり大きく始めようとしてはいけない。

理由3.行動力、習慣力の欠如

新年の抱負は大きなミッションを掲げる人が少なくない。だが、大きなミッションであるほど不断の行動力、粘り強い習慣の力が必要となる。当たり前の話だが、願望の実現には途方もない時間を必要とするからだ。

だが新年の抱負を口にするのは簡単でも、実際に行動に移すのは誰でもできるわけではない。なぜなら行動力、習慣力というスキルが不足しているからだ。行動や習慣というと気合根性論に聞こえるが、これらの要素の理解を深めると実は技術や知識で戦うゲームであるという実態が見えてくる。ルールを知らない球技を練習しても上達しないのと同じで、まずはどうすれば行動や習慣ができるかを学び、そしてそれを新年の抱負に組み込むことが大事だろう。

参考までにいうと、自分の場合はやりたいことが湧いたらその場でGoogleカレンダーのスケジュールに予定を入れている。旅行や食事ならその場ですぐ予約してしまう。予定が決まれば、後はもうやるしかなくなる。たとえば「モルディブにいってみたい」という願望があるなら、元旦に半年先に航空チケットを買い、ホテルの予約をしてしまえばいい。こうなればもう取り返しがつかないので、やる気や仕事といった壁は何が何でも乗り越えてでもいくしかなくなるだろう。

新年の抱負より、目の前のタスクをとにかくこなしていく方がよほど重要だと思っている。手前味噌のようでおこがましい限りだが、筆者は2023年に法人でやっているフルーツギフトビジネスではふるさと納税で熊本県全事業者の中で売上1位になり、その実績を知った新聞社によって全国の新聞に掲載されるというありがたい実績を得ることができた。他のビジネスも自分なりに満足する結果を得られた。だが、「新年に抱負を持って叶えたい!」なんて1秒も思わなかった。いや、今もでかい夢とか目標なんてない。ただただ、目の前のタスクを必死にこなすだけである。叶いもしない抱負づくりに時間をかけるより、やるべきことをドンドン処理することに時間をつかう。その継続で抱負以上の良い結果がもたらされるのではないだろうか。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。