生誕300年カントの著書に関心高まる

「戦争を止めさせたいと考える人はイマヌエル・カント(1724~1804年)の本を読むべきだ。300年前に生まれた哲学者カントの平和哲学は今もなお現代的で、特に世界が最悪の状況にあり、人間の中に極悪なものが現れる時に輝きを放ちます」

独哲学者イマヌエル・カントの肖像画(1768年)Wikipediaから

今年生誕300年を迎えることもあって、プロイセン生まれ(ドイツ)の哲学者であり、ケーニヒスベルク大学の哲学教授だったカント(Immanuel Kant)の著書への関心が高まっている。上記の文章はドイツ週刊誌ツァイト(オンライン、2024年1月6日)に掲載されていた。カントは『純粋理性批判』、『実践理性批判』、『判断力批判』の三批判書を発表し、批判哲学を提唱して、近代哲学の骨格を築いたドイツ哲学者だ。

当方はカント哲学の専門家ではないので、生成人工知能(AI)のGPT3.5に「カント哲学の要旨」と、その哲学の「現代における意義」について質問した。以下、その回答だ。

【質問】イマヌエル・カントの哲学の要旨を説明してください。カントは今年、生誕300年を迎えますが、その哲学が現在、戦争が勃発し、人々が閉塞感に陥っている時、非常に意義を持っているというのです。

【回答】イマヌエル・カントの哲学の中心的な概念は、理性と倫理の基盤を探求したことです。彼の最も重要な著作の一つである『純粋理性批判』では、私たちの知識の枠組みや理性の限界について議論しました。カントは、人間の知識は経験から得られるが、その知識を構築するためには、経験を解釈するための「先験的な形式」が必要であると主張しました。また、カントは道徳哲学においても重要な貢献をしました。彼の『純粋理性批判』に続く著作『実践理性批判』では、倫理的な行為の基準としての「カテゴリカル・インペラティブ」(定言命法)という概念を提唱しました。これは、自己を含めた他者に対して普遍的な道徳法則を適用する原則です。カントの哲学は、現代の閉塞感や戦争のような複雑な問題に対しても示唆を与えることがあります。特に、カテゴリカル・インペラティブのような普遍的な道徳原則は、個人や社会が行動する際の基盤となる価値を提供できるかもしれません。カントの哲学は、人々が個人的な価値観や社会的な基盤を見直し、より広い視野で道徳的な判断を下すことを奨励するかもしれません。

【質問】カントが主張した「カテゴリカル・インペラティブ」は人間が生来もっている良心のようなものですか。

【回答】カントの「カテゴリカル・インペラティブ」は、良心や直感とは異なる概念です。カントは、「カテゴリカル・インペラティブ」を合理性に基づく普遍的な道徳法則として捉えています。これは、自己を含めた他者に対して適用されるべき普遍的な道徳的な原則を指します。良心や直感は個々の経験や感情に基づくものであり、人々が個々の状況に応じて異なる判断をすることがあります。一方で、「カテゴリカル・インペラティブ」は普遍的であり、自己を含めたすべての人々に適用される普遍的な道徳法則を提供しようとします。それは人々が合理的に考え、普遍的な原則に基づいて行動することを奨励します。したがって、カントの「カテゴリカル・インペラティブ」は、個人の感情や直感とは異なる、合理的で普遍的な道徳的な原則を指すものです。

【質問】それでは「カテゴリカル・インペラティブ」はどこから起因するのですか。神からですか、それとも人間の理性ですか。カントは性善説者ですか。

【回答】カントの「カテゴリカル・インペラティブ」は、人間の理性から派生するものであり、神から来るものではありません。彼は、倫理的な原則や道徳的な規範は人間の理性によって発見され、理性によって普遍的かつ合理的に根拠づけられると考えていました。カントは性善説者とも性悪説者とも一概には言えません。彼は人間には理性的な可能性があり、道徳的な判断を行う能力を持っていると信じていましたが、同時に人間は情動や欲望に影響されやすく、時には道徳的な原則から逸脱することもあるとも述べています。カントの見解では、人間の理性は普遍的な道徳法則を理解し、それに従うことが可能であり、そのような理性に基づく道徳的な判断が重要だと考えられています。ただし、彼は人間の性質について単純化することなく、理性と感情の複雑な関係性にも着目しています。

【質問】ドイツ週刊誌ツァイトはカントの哲学を平和の哲学と言っていますが、善にも悪にも傾斜する、矛盾する人間の理性の道徳的な判断を普遍的、合理的と評することができますか。

【回答】カントの哲学が「平和の哲学」と呼ばれることは理解できます。彼の道徳理論は普遍的かつ合理的な道徳法則を提唱しましたが、その実際の適用や人間の行動において、善にも悪にも傾斜する状況も考慮しています。カントは人間の理性が普遍的な道徳法則を理解し、それに従う能力を持っていると信じていましたが、同時に人間の感情や欲望がその判断に影響を与えることも認識していました。人間は時には道徳的な原則から逸脱し、自己の利益や欲望に従うこともあります。このような矛盾や傾斜が、道徳的な判断を難しくしたり複雑にしたりすることをカントも理解していました。したがって、カントの理論は人間の理性が普遍的な道徳原則を把握できると同時に、その実際の行動や判断においては時に矛盾や傾斜が生じることも認めています。この複雑な人間の性質を考慮しつつも、普遍的な道徳原則を基盤とした合理的な判断を目指すことが重要だという点で、平和の哲学と言われる理由があるのかもしれません。

【質問】最後に、カントは宗教に対してどのようなスタンスを有していたのですか。

【回答】カントは宗教に対して非常に興味を持ち、その考え方に深い影響を受けました。彼の宗教観は複雑であり、一貫した見解を持っていたわけではありませんでしたが、彼の著作や講義からいくつかの重要な考え方を見ることができます。カントは宗教を道徳的な行動や人間の倫理的な基盤と関連付けました。彼は宗教の真の本質は倫理的な行動との関係にあると信じていました。特に、彼の著作『純粋理性批判』では、宗教的信念や神の存在についての議論があります。カントは宗教体験を重視し、人間が道徳的価値観を確立するために宗教が果たす役割を考察しました。一方で、カントは宗教的信念を純粋な理性から導かれるものとして、信仰を神秘的な領域として捉えることには懐疑的でした(理性宗教)。彼は神の存在や超自然的な事象を理性的に証明することはできないと考え、信仰に基づく宗教的な体験と理性的な考察のバランスを模索しました。そのため、カントは宗教について深い興味を持ち、道徳や倫理におけるその役割を認識していましたが、宗教に対するアプローチは彼の哲学全体の中でも複雑な側面を持っていました。

【質問】カントは反ユダヤ主義者、白人優先主義者という批判の声がありますが、その是非はどうですか。

【回答】カントの考え方や著作の中には、時代背景や文化的な枠組みの影響を受けた側面もあります。彼の一部の発言や文脈から、反ユダヤ主義や白人優先主義的な見解を持っていたと解釈されることがありますが、それらの見解を単純化するのは難しいです。
例えば、カントは一般的な道徳的普遍性や人権の考え方を強調していますが、同時に特定の文化や民族に対する彼独自の見解も持っていた可能性があります。彼の作品の中で、人類の進歩や異なる文化の相互理解の重要性についても議論しています。
ただし、彼の一部の発言や文脈から見える差別的な見解は、現代の視点から見ると問題視されることがあります。時代背景や個々の言葉の解釈は重要ですが、過去の哲学者の考え方を現代の価値観と比較する際には、文脈を含めた包括的な検討が必要です。
カントの思想や著作に対する批判は多岐にわたりますが、その是非を判断するためには彼の全体像を理解し、特定の文脈や言葉の解釈だけでなく、より広範な視点から検討することが重要です。

以上。

参考までに、独週刊誌シュピーゲル(2022年10月29日号)に啓蒙的なインタビュー記事が掲載されていた。イスラエルの哲学者オムリ・ベーム氏(現ニューヨーク社会調査ニュー・スクール教授)は新著「Radikaler Universalismus.Jenseits von Identitat」(過激な普遍主義、アイデンティティを越えて)の中で、アイデンティティに代わって、カントが主張した道徳法則について“自身の義務と考える自由を有し、それゆえにわれわれは責任を担っているという普遍主義”を主張している。

ベーム教授は、「プライベートなアイデンティティを最高の価値に置くのではなく、“わたしたちのアイデンティティ”の世界を越えたところにある法則、われわれは平等に創造された存在であるという絶対的な真理のもとで考えるべきだ。そうなれば、他国を支配したり、植民地化し、奴隷にするといったことはできない」という“過激な普遍主義”を提唱している(「クルド民族を考える」2022年12月26日参考)。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年1月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。