憲法などでは国会議員の報酬を次のように規定しています。
- 憲法49条:両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
- 国会法35条:議員は、一般職の国家公務員の最高の給与額(地域手当等の手当を除く。)より少なくない歳費を受ける。
議員報酬の総額はいくら
国家公務員(一般職)で最高額をもらうのは事務次官です。国会議員の報酬は事務次官より少なくしてはいけないと規定されていますから簡単には下げることができません。さらに、歳費法によって歳費、旅費および手当等の支給についても細かく規定されています。
国会議員の歳費は月額129万4000円と定められています。年額で1552万8000円になります。ここに、期末手当(賞与)として年額635万円が加算されますので、総額2187万8000円が基本ベースです。
昨今問題視されている「文書通信交通滞在費」(現在は「調査研究広報滞在費」に名称変更)が1200万円(月額100万円×12カ月)が支給されます。領収書の公開などが不要であるため、第2の給与とも呼ばれさまざまな用途に使用されているのが実情です。領収書による精算が必要ありませんからブラックボックスです。
次に、「立法事務費」780万円(月額65万円×12カ月)を加算してみましょう。立法事務費は会派に対して支払われますが、1人会派だとしても政治資金規正法上の政治団体として届け出ていれば認められます。また、まったく活動していなかったとしても立法事務費の使い道を第三者が確認する術はありません。
さらに、JR特殊乗車券・国内定期航空券の交付や、3人分の公設秘書給与や委員会で必要な旅費、経費、手当、弔慰金などが支払われます。くわえて、政党交付金の一部が、各議員に支給されます。これらを踏まえて国会議員1人当たり、年間にどれだけのお金がかかっているのか試算してみましょう。
【国会議員A氏(北海道選出)のシミュレーション】
- 基本給:1552万8000円(月額129万4000円)
- 期末手当:635万円
- 文書通信費:1200万円(月額100万円)
- 立法事務費:780万円(月額65万円)
- JR特殊乗車券、国内定期航空券:北海道選出の議員であれば羽田 ⇔ 新千歳(ファーストクラスなら往復10万円 × 月4回×12カ月=480万円)
- 秘書給与:2100万円(政策秘書900万円、第1秘書700万円、第2秘書500万円と仮定)
- 政党からの支給:0~1000万円程度
- 合計:6000万~7000万円程度と推測
政党からは役職に応じて黒塗りの車もあてがわれます。
議員会館の賃料は無料、議員宿舎には格安で居住することができます。2014年に賃料引き上げを行いましたが、周辺相場の2割程度で借りることができます。24時間体制の警備が施されセキュリティーは万全です。部屋から緊急通報のボタンを押せば秒速でスタッフが駆けつけます。
毎回先延ばしの議員特権議論
2021年10月31日の衆議院選挙後に「満額」が振り込まれたことにより文書通信交通滞在費をめぐる問題は、連日メディアで報道されました。しかし、問題は先送りされました。与野党ともに「日割り」にして決着をつけようとする姿勢が強く見受けられました。
各党は「使途公開」を口にしていました。ところが成立したのは当選した月の支給額を「日割り計算」にする改正だけです。使途公表や国庫返納はなんら盛り込まれていません。さらに、文書通信交通滞在費から「調査研究広報滞在費」に費目が変更されただけでした。
JR無料パスの違法使用、パパ活疑惑があり、国民からは「議員特権を廃止すべき」という厳しい声が上がりました。国民の血税で活動している以上、国会議員にかかる諸費については透明性を持たせる必要があります。
しかし、政治家は自らが当選に有利になることでないかぎり前向きには議論しません。政治システムを変える法案を提出することもありません。当然のことながら不利になるシステムに変更されることもありません。実現させようなどと思っていないからでしょう。
1月の通常国会はまもなく召集されます。