2024年金融市場のキーポイントと株価への影響

2024年にひと稼ぎしてやろう、と意気込んでいる方も多いでしょう。新NISAも始まり、初めての投資にドキドキしながら値動きをみる主婦の方もいらっしゃると思います。日本では金融の教育が極端に遅れています。お金のことを考えたり話したりするのは半ばタブー視されてきたからです。

東京証券取引所 Wikipediaより

納税という概念も給与所得だけの人は会社がやってくれるため、稼ぐ=会社の給与、税金=天引きされるものであり、税金をいくら払ったか、税金の控除の仕組み、なぜ自分の税額はこうなのか、といった学びは少ないと思います。(給与)ー(天引きの税)=(使ってよいお金)では一種の「ざる勘定」に近いものともいえるのです。

私も正直、サラリーマンを20年やっていた時代、所得税を意識したことなどなく、貯金も社内財形とか定期預金や投資もしていましたが、運用という観点は薄かったと思います。

しかし、今はお金をもっと知る時代です。うまく運用し、長期的な資産形成を目指すことが幸福な人生の支えになることは事実です。その為には経済がどう動くのか、税の仕組みや金利や為替、株がどうなるかという興味と意識は持ち続けたいものです。

今日は日本市場に絞ってみたいと思いますが、今年の金融市場のキーポイントをいくつか掲げます。

① インフレはどの水準で沈静化するか?
② 春闘で賃金がどれぐらい上昇するか?
③ 会社は儲かっているか?
④ 日銀は金融正常化に踏み切るか?
⑤ 為替は円高に振れるのか?
⑥ 日本の政治は安泰か?
⑦ 世界経済が日本にどれだけ影響を与えるか?

まだまだあると思いますが、一般の方からすれば「えーっ、そんなにあったらわからない」ということになるでしょう。経済評論家とかアナリスト、あるいは私のようなブロガーを含め、好き勝手なことを言っていますが、結局上記にあげた主要要素(エレメント)をそれぞれどう分析し、どう組み合わせるかによって答えは無限にできてしまうのです。その中で確率的にこの可能性が高いという判断をプロットしていくと偏差ないしAI判断として見ることも可能です。ただ、大事なことはそれなりのプロがもっともらしい説を唱えても外すケースが多いのです。仮に当たってもずっと当て続けることは至難の業なのです。

これらを変動要素とか変数と考えるのですが、世の中の予想など半年先すら出来ないのに表やグラフ、データや裏情報を満載して「さもありなん」と言い切るわけです。

ではお前はどうするか、です。私の考え方はなるべく俯瞰し大局を見るようにしています。とすれば細かい部分では外しても180度違う方向には行かず、大当たりもしない代わりにはずれもしないのです。一般的な投資判断ならこれで十分だと思います。

ではお前が月に立って地球をみたら2024年はどんな色に見えるのか、と聞かれたら「雲の間から青い地球が垣間見える」と申し上げます。2020年に始まったコロナから丸3年、地球は厚い雲に覆われていました。22年終わりにはコロナ明けから晴れが見えるかと思ったらいわゆるコロナ反動によるインフレ、戦争、政治機能低下などコロナ期のしわ寄せが来たわけです。

日本企業の決算はどうかと言えば、23年の相次ぐ値上げラッシュでそれが見事に決算に反映されるので良い数字が出てくるだろうとみています。特に「前年比」という括りで見れば23年3月期はコロナの影響で冴えない数字だったので24年3月期は比較論で見れば驚くほどジャンプできる決算になるはずです。ただ、気をつけるべきは株価は先を見て反応しやすい点です。これから決算発表を迎えますが、24年3月期より25年3月期を各社がどう予想しているか、これが株価に最も影響しやすくなります。

日銀植田総裁は春闘の行方を見て金融政策の判断をすると言っています。あまり指摘されたことがないのですが、日銀は日々のテクニカルな金融コントロールにとらわれ過ぎて本来あるべき経済政策の趣旨を置き去りにしています。つまり、金融正常化こそが日本経済に活力を与える正しい政策である点です。さもないとゾンビ企業を無尽蔵に生み出し、キャッシュフローだけをビジネスの拠り所とする悪い企業体質がまん延し、国内のデフレが逆に進みやすいという点を放置しているのです。

今年は日本企業が復活できるかの試金石とも考えています。その為には経営陣が若返ること、国際感覚を十分に養うこと、攻める経営ができること、の3つを挙げておきたいと思います。特に主要企業は売り上げや利益の過半を海外に依存する時代になってきています。私は中期的に海外比率が75-80%まで引きあがるとみています。つまり日本企業と言えども国際化せざるを得ないわけです。その為には海外拠点のみならず、国内の本社など中枢機能でも外国人の活用が進むはずで本格的な社員への洗礼と競争が生まれるはずです。また経営陣も外国人従業員を使いこなせないければ意味がないとも言えます。英語ができるだけの経営陣はいりません。

一方、地球の中の日本という位置づけも必要です。グローバル化が進んだ今日において世界経済や貿易の流れは重要です。例えば日本は中国との貿易量が一番多いわけですが、日中問題次第ではこれに大きな影響が出ます。トランプ氏は大統領に選出されたら国内産業保護を打ち出しており、各種関税を導入するでしょう。人口減の日本にとって海外拠点を通じたビジネスを拡大するにおいてそこはキーポイントなのです。

例えばホンダがカナダに巨額のEV工場投資を決めました。アメリカではなく、カナダである点がミソなのです。政治的リスクを最小限にとどめ、北米ビジネスを享受できる賢いプランだと思います。

最後に国内産業ですが、日本人の実質賃金は下がっていてデフレリスクがあると一部アナリストは懸念を示しますが、訪日外国人が物価を引き上げている部分はあると思います。ホテルや一部の観光地はそうでしょう。築地場外市場の飲食店相場は外国並みの高さです。つまり、外国人をうまく取り込む国内産業は勝ち組になるとみています。

これらを見ていくと2024年の概観はつかめてくると思います。皆さんにとってよい2024年の投資になればと思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年1月10日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。