地球の平均気温は1.5℃目標に到達したが、人類は絶滅しない

池田 信夫

EUの気象情報機関コペルニクス気候変動サービスは、2023年の世界の平均気温が過去最高を記録し、産業革命前より1.48℃高くなったと発表した。

これは気温上昇を1.5℃以内に抑えるというパリ協定の努力目標まであと0.02℃だが誤差の範囲であり、多くの地域で1.5℃を上回っている。この最大の原因はエルニーニョだが、今年前半も温暖化が続く見通しだ。

平均気温と1.5℃上昇の偏差(ABC News)

つまり人類は環境活動家が「1.5℃上昇を超えると人類が破滅する」と叫んでいた気温に事実上到達したのだが、破滅は起こっていない。

CO₂も温暖化も植物の生長には必要

それどころか自民党の麻生副総裁が言ったように「温暖化だとえらい騒ぎだが、結果として北海道の米がうまくなった」。

CO₂は植物の生長に必要なので、それが増えると農業生産は増える。気温上昇も植物にとっては望ましいので、農業生産は増える。

CO2排出と農業生産(CO2 Coalition)

この10年の海面上昇は、WMOの集計によると毎年4.5mmである。これはIPCCの予想する毎年7mmを下回っており、先進国では毎年の防災対策の範囲内である。

温暖化の弊害は熱帯に集中している

温暖化の弊害は何かあったのだろうか。気候変動の影響を報告するサイトによれば、アフリカ東部の干魃で300人が死亡し、リビアではダムの決壊で3400人が死亡したが、温暖化との因果関係は不明である。

このサイトは他にも熱波、豪雨、干魃、山火事などの例をあげているが、それをみてわかることは、地球温暖化の被害は圧倒的に熱帯に集中しているということだ。これを防ぐには、効果の疑わしい脱炭素化より堤防などのインフラ整備が必要だ。

最大の弊害は、温暖化対策でエネルギー価格が上がったことだろう。脱炭素化で世界のトップを走っていたドイツは、ウクライナ戦争で安価な天然ガスの供給が断たれ、マイナス成長に転落した。

Foresightより

気候変動はゆるやかに起こっている自然現象であり、2100年までに2℃上昇ぐらいの変化は、少なくとも北半球では大した問題ではない。

脱炭素化は雨乞いのような気休めで、自然の大きな変化を止めることはできない。これだけ大騒ぎしても、最高気温を記録したことがそれをよく示している。気休めでもやりたい人はやればいいが、毎年5兆ドルも税金を使う価値はない。

人類はもっと謙虚になり、自然を改造しようなどと考えないで、気候変動に適応して生きる道を考えるべきだ。