賛否両論のThreads:私が相見積もりや競合プレゼンに応じない理由

またまた賛否両論のThreadsのこちら

相見積もりが嫌いだ。
同じ図面=同じ家 なのか?
断られるかもしれない仕事の為に職人みんなの時間を割いて見積もりを依頼する事も嫌いだし、断られた時に「ごめんなさい、あれダメでした」と言うのも嫌いです。

Threads

わたし、同じようなことを自分のサイトでも書いています。

仕事のお問い合わせの前にお読みください

↑のThreadsの投稿についてはリプは大きく分けて2つに分類されていました。

【事業者側】
○まったくそのとおり。相見積もりまでされて仕事は要らない
○何の抵抗もない。相見積もりされてもかまわない

で、ユーザーさん側ではこういうのが代表的

相見積を取るなら断るという住宅関係の方がいる。過去に経験のない数千万円の契約を、比較せずに行えというのだろうか?
できるなら相見積はしたくない。こちらも手間暇かかるし、手間も時間もかけてもらったのに断るのは心苦しい。でも、予算は決まっているので、その中で最大の効果をだしたい。

Threads

相見積もりが妥当なお仕事、無意味なお仕事

おそらく相見積もりが嫌いだという事業者は相見積もりは必須だと思ってるユーザーとは合わないので逃げて貰ってかまわないのであるが、ここでわたしが言いたいことをまとめます。まずは結論から。

○全く同じ、ほぼ同じものなら相見積もりはわかる
○意匠やアイデアやノウハウに左右されるのに相見積もりはないよね

これは金額が高い安いということではなく、質の担保の問題なのであるが、↑のユーザーさん側の人たちはどうも分からないっぽい。「美容師さんならせいぜい数万円なのに数千万する家で相見積もり無しはあり得ない」というのはその典型です。

たとえばアーチストに絵を描いて貰うとして、違う画家さんに相見積もりくださいっていったら断られるでしょう。アーチストによってそのスタイルや掛ける時間が異なるからです。また名前が売れている人のほうが高い。

で、実は工務店や大工さん、庭師、そしてイラストレーター、音楽家、デザイナー、彫刻家に至るまで「腕に自信がある人で仕事にこだわる人ほど、相見積もりをされることが嫌だと思う可能性が高い」ということなんです。相見積もりで少しでも安くして受注したいと思うのは仕事がない人です。もちろん閑古鳥が鳴いていても腕の良い人もいないことはないでしょう。確率は低いですが・・・

官公庁や企業がビルの建設などで入札制度を採り入れられるのは、「きちんとした明細までの要求仕様書」があって、最低価格が算出してあり、適正な価格が最初に分かっているからですね。最低価格以下ならまともな工事は無理として入札からはじくことができ、最低ラインに一番近いところが受注する仕組みです。

で、素人さんが家を建てるとき、自分で詳細な要求仕様書を作って最低価格を算出できますか? できないのであれば最低価格を下回る手抜き工事や、それはないにしろ意匠を最低限簡単にしたり使う材質を下げて安くする会社に発注したらどうするんですか? 「あの見積もりならこれはできません」って普通に言われますよ。数千万掛けて痛い目見ますよね。つまり設計や意匠を込みで相見積もりは意味がないってことです。逆にリスクが上がる可能性もある。

家を建てるときに一番良い方法は、まずは全体を仕切ってくれる設計士を見つける。強度計算がしっかりできる1級建築士がいいと思いますが、サイトを見ればいままでの事例が出ているからそれで気に入った人を見つける。現物を見せてもらうのは必須です。

設計士のギャラはだいたい基準があって全体の施工費の10〜15%です。有名建築家なら倍くらいのようです。設計士で相見積もり採る意味はありません。だって設計するものが違うのに価格比較しても意味ないよ。

まずはこの人とという設計士さんと契約したらその人に工務店を選定して貰う。そのときに相見積もりを取るのは当然です。設計士さんはプロですから最低金額はこのくらいというのは分かるし、工務店の見積もりを見ればどの程度の能力があるかも分かります。

これがベストだと思うのだが、どうも「相見積もりは当たり前」と考えている人たちは「設計料も込みで相見積もり」と考えているらしく、そうなると逆にとんでもないところと契約する可能性もありますよってことになります。

相見積もりを取らないメリット

あらゆる仕事に共通するのですが、わたしの例を書きます。

相見積もりは発注する側とされる側という立場に基づきます。まず、永江さんだからお願いしたいというかたはこちらの要求するタスクも頑張ってやる確率が高いのですが、発注者意識の強い人は丸投げしたらなんかやってくれるだろう的な要素が強くて成功しづらい。去年も一発痛い目を見ました。

いままでの仕事履歴で一番成功したのがJTBの電子予約サービス。コロナで吹き飛びましたが、最初に永江さんにお願いしたい。予算は×千万円取りましたと言われて燃えに燃えて自分のコストは最低限に抑えてめちゃくちゃ成果出しました。楽しい仕事だったなあ。

仕事に自信を持っている人は
意気に感じる
ということがあります。

××さんだからお願いしたいと言われるのと、あなたが一番安いからお願いしますではモチベーションが180度違います。意気に感じた場合は利益なんかより、「よーし、ココまで言われたらめちゃいいもの、作ったる」と燃えるわけで、異世界マンガ見たら鍛冶屋のドワーフってみんなそうじゃないですか。ww

言い方変えると

豚もおだてりゃ木に登る

っていうやつ。恋愛も同じで「あなただけが好き」と言われるのと「いろんな人を比べてあなたが一番お金持ってるから」と言われてどっちがコイツを幸せにしようと思うかってことですよ。

そのためには事前に相手の仕事をよく調べてこの人にならお願いしたいというところまで自分で持っていかないとダメなんです。これをしないで価格だけで決めるのが相見積もりで、よほど仕事に困っている人以外は「あー、仕事取れたね」っていう感じで「ヤッター」にはなり得ないと思うんです。


こういうの読むところから理系脳ははじまります。


編集部より:この記事は永江一石氏のブログ「More Access,More Fun!」2024年1月15日の記事より転載させていただきました。