会社経営における「3つの勘違い」

会社経営者がSNSに自社の経営状態に関する投稿をしているのをよく見かけます。

中には、自慢げな投稿も散見されますが、何だか勘違いしている投稿も多いのです。

例えば、資産規模を誇っている社長がいたりします。

100億円近い不動産を所有していることを自慢している会社があったとしても、問題は純資産がいくらかです。

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バランスシートで言えば、総資産から負債を差し引いたものかま純資産になります。

100億円のアセットを保有していたとしても、95億円借り入れをしていれば、純資産は5億円に過ぎません。であれば無借金の資産10億円の会社の方が財務内容は優れていると言えるのです。

地方の不動産になれば、購入時よりも不動産価格が下落していることもあります。そうなると、純資産がマイナスということもあり得ます。

いたずらに資産規模を大きくするのではなく、資産と負債のコントロールをしていくのが経営者の財務手腕です。

資産規模と同じように、会社の売上を誇っている人もいますが、大切なのは利益です

売り上げ100億円で利益1億円の会社より、売り上げ5億円で利益2億円の会社の方が、無駄な取引をせず、効率的に利益を上げられているのです。

スタートアップ企業の中には、売り上げが伸びているのに、一向に黒字化しない会社もあります。

私は法人の最大の社会貢献は、黒字化して法人税を納税することです。

経営者は社会貢献活動などを始める前に、まずは利益を出すことに注力すべきではないでしょうか。

さらに、資金調達ができたことをうれしそうに語っている経営者もいます。

もちろん、資金調達ができるのは、会社に信用力があってこそですが、資本調達や借り入れを行えば、株式は希薄化し財務状況は悪化します。

資金調達がゴールではなく、その資金で、何を生み出せるかが大切なのです。

なのに資金調達できたというメッセージを見ただけで、「おめでとうございます」などと能天気なコメントをしているSNS上のやりとりを見かけます。

「なんだかなぁ」という気分です。

会社は規模よりも安定性と収益性というのが私の考えです。

固定費が小さく、利益率が高く、安定した収入が得られるビジネスモデルになっている。そんな会社をこれからも目指していきたいと思っています。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年1月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。