「お金」より見えにくい、潰れそうな会社が発する「組織」のシグナルとは?(横須賀 輝尚)

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会社が倒産しそうなとき、そのシグナルが出るのは「お金」だけではない。「お金の変化と比較して見えにくいものの、組織の崩壊についても兆候はあるもの。察知しやすいシグナルを少しだけ紹介するので、参考にしていただきたい。」と言うのは経営コンサルタントの横須賀輝尚氏。今回は、横須賀氏の著書「プロが教える潰れる会社のシグナル」より、潰れそうな会社が発する「組織」のシグナルについて、再構成してお届けします。

理念のない会社は危ない

私は個人的に、会社の理念は極めて重要なものだと考えています。もちろん、理念があれば会社が儲かるわけではないですし、理念がなかったから潰れるというわけでもありません。それでもなお、「理念のある会社は潰れにくく、理念のない会社は危うい」と考えています。

逆の例から考えてみることにしましょう。例えば、儲かっている会社がある。なぜ、その商品を扱っているかを聞くと「儲かるから」と社長は言う。社員の給与水準も高い。こういう会社に勤めたい社員は、お金が目的。もちろん、それ自身は悪いとは思いません。お金、大事ですから。

でも、その会社の業績が低迷し、給与水準が下がることになったらどうでしょう。あるいは、その会社を遥かに超える好条件の会社が別にあったらどうでしょう。おそらく、給与が目的なら、条件の良い会社に乗り換えるはずです。それも、いとも簡単に。

なぜ、簡単に転職できてしまうのか。それは、その会社で働く理由が金銭面の条件でしかないからです。

この仕事を通じて、なにを実現するのか。どんな社会貢献をするのか。社長も、儲かるだけではモチベは続きません。だって儲かれば儲かるほど税金は高くなりますからね。額面1億円の役員報酬を設定したとき、その約半分は税金です。お金だけでやる気出ます?なかなかそうもいかないんです。

様々な意見や見方がありますが、理念のひとつの効用は「その会社で働く理由ができる」というもの。案外、こういうのって大事なんです。まあ、抽象的な話なのでこのくらいで。

二つだけ補足。

なぜ、「理念のある会社は潰れにくく」と言って「潰れない」と断言しないのかというと、理念があってもかたちだけのことがあるから。使命のような本物の理念を持っている社長って、なかなか会社を潰さないですよ。

もうひとつ。

社長に聞いてみてください。「なんのためにこの会社をやっているんですか?」って。 これに歯切れよく回答できれば少し安心。なかったり、「単に儲かるから」だけだとちょっと危ういな……と私は考えちゃいます。お金が基準なら、いざというときはあっさり社員を切っちゃうかもしれませんしね。

会議に不要な人材が集まってくる

会議はもともと必要なものです。企画会議、営業会議、戦略会議……いまはオンラインツールも充実していますので、必ずしも一堂に会する必要があるわけではありませんが、この会議に「オブザーバー」や「顧問」とか「相談役」とか参加者が増えてくるとちょっと心配です。

なぜなら、会議で様々な意思決定がされることは重要ですが、それに必要のない社員が参加しているということは、その社員は利益に直結するような仕事をしていないことになるから。会議ばかり、会議だらけの会社は営業ができてないという見方もできます。

はたまた、すでに経営から降りた前会長が会社に来たから会議に参加してもらって、ありがたい助言をいただく。前会長が参加するからには、会社の主要人物は集めなきゃならない。さらに前会長が来たからには、会議のあと一席設けないと……というのも、本末転倒。

要は、なんのための会議なのか。会議のための会議になっていないか。軽目のシグナルですけど、そりゃ会議ばっかりやっていたら、何も進まないですよねってことです。

社員のSNSに無頓着な会社は危険

これも全部が全部統制できるかといえば難しいのですが、社員のSNSに関して無頓着、無関心なのはちょっと怖いかなと考えます。

いまや一夜にして炎上し、倒産にまで陥ってしまう時代です。以前に話題となった「バイトテロ」など、社員のSNS運用によって会社経営に回復不可能なダメージを負ってしまう可能性があるわけで、少なくとも秘密保持契約や仕事中のスマホ利用などには一定の制限をかけておくべきです。

最近では、SNSで自ら情報発信する社長も少なくありません。見栄や承認欲求からくる投稿などは、経営者のSNS投稿の特徴ですが、社長にせよ社員にせよ、多くの場合「見られている感覚」が欠如していることが炎上や低評価の要因です。

仮にフォロワー数が多くなかったとしても、そこはオープンなインターネットの場。FacebookのようなクローズドなSNSでも、いまはスクショを撮られてX(旧Twitter)で拡散なんていうのも当たり前で、中にはLINEのやりとりやSNSのDMのやりとりまで公開されてしまう時代。

そういう意味では、小さなことにもスキのない会社が潰れにくく、情報発信に楽観的な会社は危険ということになるでしょう。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚 https://www.amazon.co.jp/dp/B08P53H1C9
公式サイト https://yokosukateruhisa.com/

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年1月29日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。