コロナ禍、インフレ、DX……。激変するビジネス環境下で、「売れない問題」が発生したら、どう対応するのでしょうか。実践マーケターが、多くの具体例から解き明かします。
「売れない問題 解決の公式」(理央周著)日経BP 日本経済新聞出版
買ってくれない理由を探る
理央さんは、売れない問題に直面した際には、なぜ売れないのかではなく「なぜ顧客が買ってくれないのか」という視点で状況を見てみることが大切だと言います。そして、理想のゴールとのギャップがどこにあるのか、その原因を探ることが大切だと。
「私たちは頑張って売ろうとするあまり、『売り方』ばかりを考えてしまいがちです。たとえば、ネットショップだけでは売り上げが上がらないから、知ってもらうためにアパレルメーカーの店頭で期間限定のPOPアップショップをやってみる、といった具合です」(理央さん)
「それはそれで間違いではないのですが、 商品構成を見直し(何を 少し高めのパールをラインアップに加えたり、ターゲット層(誰に)を見直して、若めの層にアピールするなどして、『売り方』以外にも目を向けて『売れない問題』を解析する必要があります」(同)
また、成果を出している会社や人は、何かしらの戦略に沿った計画を立てて働いています。マーケティングや営業の仕事をしていると途中経過をチェックすることが疎かになりがちです。
「計画段階で立てた戦略の中身は、数字や状況から予測した『こうだろう』という仮説に過ぎません。ですから100%計画通りにうまくいくわけがない、と認識しておくべきです。私も30年以上マーケティングに携わっていますが、当初の計画通りに進んだことはほとんどありません」(理央さん)
「戦略や計画は、立案した通りに実行することを目指すのではなく、当初の仮説のどこが正しいのか、どこが違うのかを確かめながら改善を繰り返して、 できる限り理想やゴールに近づいていくためのものなのです」(同)
経営の仕組みはシンプル
30代の頃にビジネススクールに通ったことがあります。当時は、バブルの不良債権問題が色濃く残っている時代です。銀行案件で、債権分類の実務を担当したことがありましたが、かなり勉強になりました。債権分類(第1分類~第4分類)などを聞いたことはないでしょうか。
第1分類は「価値の毀損について危険性がない資産」。第2分類以下は「回収が困難、通常の度合いを超える危険を含むと認められる資産」と評価されます。当時は、第2分類の企業が多く、リストラを推進して救済する(リストラ後に正常分類に移行させる)、または、破綻処理などをするための判断基準となる分析実務が多かったのです。
中小企業がなんらかの粉飾をしていると言われるなかで、病巣を発見するには経験と勘が必要とされます。私は、内部留保をチェックするようにしました。内部留保が多い会社は「金儲けが上手い会社」と判断できるからです。このような着目ポイントは人によって異なりました。
また、経営の仕組みはシンプルで業績を改善する方法は3つしかありません。1つ目は売上高を増やすこと、2つ目はコストを下げること、3つ目は限界利益率の改善です。しかし、市場にはシンプルな仕組みをわざわざ難しく語る書籍が多いので注意が必要です。
まったく経営のことがわからない人には少々不向きかも知れませんが、本書は市場に出回っていたどの専門書よりもわかりやすいと思います。基礎を学べる良著といえるでしょう。シンプルにマーケティングを理解し経営の仕組みを学びたい人におすすめしたい一冊です。
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)