パリ管弦楽団&クラウス・マケラ&アレクサンドル・カントロフ@フィルハーモニードパリ。
パリ管の定期は基本2夜連続なのだけれど、このプログラムは1夜限り。カントロフ(フランス人)がソリストというのもあり、大入り満員大盛況。
カントロフは、2019年のチャイコフスキー国際コンクールの優勝者。2位が真央くんだった。19年は、このコンクールの当たり年ね。
1年半ぶりのカントロフ、相変わらず、ものすごくお上手。この間、ギルモア・アーティスト・アワードを受賞してさらに注目度増したけど、なるほど、受賞するなぁ、という技術。
曲は、サン=サーンス”コンツェルト5番”。初めて聴くし、ネットやCDでも全然聴いたことなかったのも、なんとなくわかる。だってこれ、三楽章、ものすごく難しいのでは?弾きこなすの大変そう。
カントロフの音色は、全体的にまろやかで優しく木管的な響き。先週のポゴレリッチがトランペットというかエレキギターだとしたら、カントロフはオーボエ。空気に自然とふわっと溶け込むような、かつクリアで端正な響き。
ただ、ちょっと気が散る。三楽章は、スピードとテクニックとノリでお見事だけど、二楽章にニュアンスが少し欠ける気も。エジプト情景が見えてこない。まだ20代半ばだものね、、。ピアニシモのニュアンスや余韻、休符の存在感は、経験積まないと難しいよね。
ビスも、最初のゆっくりまったりのものより2曲目のリストの方が好み。音符多い楽譜の方が、今はまだ似合うような。また、彼の”火の鳥”聴きたいな。
気が散るのは、オケの問題もあるかな・・。
サン=サーンスの前後は、ラヴェル”シエラザード序曲”とシューマン”シンフォニー2番”。(あと、ジョン・ダウランドの”ラクリメ”という17世紀の古い古い弦楽。)
雰囲気あって速い部分はそれなりに勢いでいい感じだけど、遅い部分のニュアンスとかフレーズのつながりがときどき滑らかでない。全体的にもったりした響き。ここぞ!ってところで失速して浮遊し損なったり。音にキレがないというか、弦は各パートの音が微妙にずれて揺らぎがあって、凛としてエッジの効いたクリアな印象に欠ける。管はオーボエはいいけど他は特に・・。ティンパニもう〜ん。友達は、”ベルリンフィルやウィーンフィル、コンセルトヘボウと比べちゃだめだよ”と。確かに。
マケラは、踊るような動きと豊かな表情で、”さあみんな、僕についてきて!”って感じで渾身の振りなのだけれどね。(赤い靴下がチャーミング。)コンセルトヘボウで体験したいな、マケラの指揮。
編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々5」2023年11月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々5」をご覧ください。