裏金がなぜ必要なのか?

桐島聡容疑者は1975年5月に指名手配されたのでざっくり49年弱逃亡生活をしたことになります。これを聞いて思い出したのがフィリピンのジャングルに戦後29年間隠れていた小野田寛郎氏です。今では覚えている方も少ないでしょう。氏は最上級レベルではなかったですが、陸軍中野学校の分校でスパイ学を学んでおり強い精神力を持っていました。桐島容疑者も「内田」というアバターで自分のウソの分身を作りました。こんなこと、推理小説の世界でしかできないと思っていましたが、日本人の精神力という点ではあきれるほど頑強だと改めて感じさせました。

では今週のつぶやきをお送りいたします。

再思考、アメリカ株式市場

この項で北米市場の話を意図的に数週間しませんでした。理由は市場に参加していて怠い日が続いていたのです。今週は更に悩ませました。水曜日、パウエル議長がFOMCの後の記者会見で利上げのバイアスが終焉したことを認め、利下げタイミングを計っていること、だが、3月の利下げの可能性は低いと述べました。これを市場は嫌ってその日は激安となり、翌日は台風一過のように上げます。覚えている方もいらっしゃると思いますが、私は利下げは年中盤(6月頃)と相当前に予想しました。EUの方が先に利下げとも申し上げました。利上げでは先行したカナダが利下げでもアメリカに先行すると思いますが、3月に利下げに踏み込む状況にはありません。

市場は「勝手話」に花咲くのです。そして投資家はそれに振り回されるのです。こういう時はもっとどっしり構えなくてはいけないのですが、投資ファンドはアクティブに動いてなんぼなのでキャッシュを持っていてはいけないのです。ハイテクの決算が出そろいましたが、ざっくり負け組がグーグル、テスラ、アップル、勝ち組がメタ、アマゾンでマイクロソフトは中立でしょうか?特にメタの金曜日の株価は初めて配当を実施することを発表し、20%も上昇、これぞメタメタな状況で唖然です。市場はメタならぬネタに飢えているともいえるのです。

どん欲なのは労働市場もそう。本日発表された1月度の雇用統計は35.3万人。事前予想が18万人だったのでアナリストは全員クビものであります。記事に隠れていますが12月分も21.6万人から33.3万人に12万人近くも上方修正です。強すぎです。3月の利下げの可能性はかなり低いですが、ハイテク株は金利敏感株とされるのにそれを乗り越える強さを見せているのが特徴的です。大統領選がある年の株価は強いのはジンクスではなく、現職大統領が当選を目指し、景気刺激策とり、国民に甘い汁を吸わせるからです。私は甘い汁を吸えていませんが、お裾分けしてもらえるのでしょうか?

裏金がなぜ必要なのか?

今から6年ほど前、私は東京で会合があった際、ある国会議員と面会し挨拶しました。その後、センセーが「せっかくカナダから来たなら飯でも食っていけ」と秘書に命じます。秘書は5分ぐらいして、「センセー、すぐそこに店を確保しました!」と。確か、地元秘書がもう一人、運転手、それに陳情者1名の全部で6人で入ったのはカウンターとテーブル席が2つしかないおばちゃんが一人で経営する居酒屋。センセーとの対面者はテーブル席で1対1、残りはカウンターの雀です。センセーが「おい、好きなものを好きなだけ取っていいぞ!ビールも飲め飲め!」。店主のおばちゃんは注文がいっぺんに来ると困るという困惑顔。

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このセンセー、帰り際に私に一冊の自叙伝をくれて「よろしく頑張ってくれ!」と言い残し、黒塗りでさっと街の喧騒に消えていきました。その数か月後、このセンセーは大臣になります。「あっ、あの本、読まなきゃ」と目を通しましたが、印象は田舎の人の良いおっちゃんで熱意だけはあるタイプであります。今ももちろんセンセーなのですが、きっと「〇〇大臣」という名刺を持てて人生の頂点に達したのでしょう。最近はメディアでまるで名前を見かけることはなくなりました。

あの時の居酒屋代は裏金の一部だったのかもしれません。センセーのポケットマネーと言ってもセンセーが財布を出してクレカで払うのではないのです。秘書に「おい、(精算は)終わったか?」の一言です。センセーの経済観念は二の次。まずは格好と体裁と振る舞い。しかし、センセーも人の子。麻生さんのように別腹の収入や資産がある議員はほとんどいないのです。センセー方にとって政治資金は裏でも表でもなく単にいつでも「おい、終わったか?」と秘書に言え、秘書が「はい」といえる関係以上の何物でもないのかもしれません。

コンビニ経営は昭和の人間臭さありき

私が中学生の頃に住んでいた家の斜め前にセブンイレブンが出来ました。商店街のど真ん中です。当時、セブンはまだ駆け出しの新進気鋭、当時そこで、スラーピーをよく買ったものです。日本では今では幻の飲み物とか。北米ではセブンに限らずガソリンスタンド併設のコンビニでは「マスト商品」で私はハイキングの帰りにあれを一つ飲むのが癖であります。さて、家の近くのセブン、10年もやらずに閉店しました。理由は「やってられねぇ!」。売り上げとロイヤリティの計算後、手元に残るお金でスタッフの給与を払い、廃棄分を引き取る思想が馴染めなかったようです。

コンビニオーナーぎりぎり日記」(仁科充乃著)という本を読ませて頂きました。2023年7月時点で1057日連勤の還暦過ぎの30年以上ファミマ経営している方の日記です。いやはやあの狭いコンビニで起きるドラマはすさまじいもの。そしてなぜこんな本が売れるのか、と言えば「アッと驚くそんな事件、あんな事件、おもろい客にトンデモ客」などほとんどすべてが客と店員にまつわる話なのです。つまりコンビニの商品がどうこういうストーリーはほとんどなし。店舗責任者のご夫婦の葛藤や本部やバイトの人との人間関係などウェットそのものの世界なのです。

日経がセブンも店頭無人コンビニ導入と報じ、既にファミマは30店舗に拡大したとあります。上述の様な日記はもう生まれないかもしれません。コンビニ客は終始無言で終わるものだと思っていたら著者曰く「あの人、無言で帰った」というぐらいなので場所によってはコンビニはコミュニティの集り的要素も兼ねているのかもしれません。近所にあるコンビニに行けばいつもの店員の笑顔と知った顔の客にほっとする瞬間を感じる人がいるとすれば、人材不足でどんどん機械化される社会はずいぶん味気ない気がしないでもありません。

後記
今週開催されたNPOの年次総会で勤めていた会長職から無事退きました。2年だけのお勤めでしたが変革と世代交代と活性化は達成できたと思います。理事をやってみたいと思う人もぐっと増え、そのほとんどが2-30代。NPOの活動にそんな若い人が積極参加することなんてなかなかありません。よいムードが出来て良かったです。さぁ、一区切りつけた私はこれから次の人生を歩みます。というか、既にだいぶ準備は進んでいます。リーダーシップからいよいよ自分磨きの始まりです。楽しみです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年2月3日の記事より転載させていただきました。