面接で危ない会社を見抜く視点と倒産前の会社から確実に離れる方法(横須賀 輝尚)

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「勤めている会社が倒産した場合、解雇扱いとなります。そもそも危ない会社に入社しないことはもちろん、勤めている会社が倒産しそうな場合、早く確実に離れることも、キャリアと自分の身を守るために重要です。」

そう語るのは、経営コンサルタントの横須賀輝尚氏。会社が倒産してしまうとき、事前に打てる手は何か? 今回は、横須賀氏の著書「プロが教える潰れる会社のシグナル」より、再構成してお届けします。

面接で「夢を語らせる」会社は危ない?

組織運営というものは、本当に会社それぞれのもので、正解などはありえません。

そんな中でも、「例えば」ということでひとつ。面接のときに、求職者に「夢を語らせる」会社は危ないという話があります。これはなぜでしょうか??

「夢を語らせる」というのは、現実的な数値目標のことではなく、抽象的な空想的ないわゆる「夢」です。夢を持つことはとても素敵なことですが、会社経営は数字先行。夢だけでは食べていけません。壮大な夢だけではなく、現実的なことを言える・できる人材が必要であり、夢だけを語る人材は、戦力にならないというわけです。

別の視点でみれば、人事選考のときに人事部だけでなく営業部がきちんと面接や選考に立ち会う会社は現実的ということ。

ちょっと抽象度が高い話ですが、会社のスタンスとしてきちんと数字を追っているか、それともそのあたりが曖昧なのか。そういう話でもあるといえるでしょう。

危ない会社から離れる方法~法律的には退職は非常に簡単~

まず、知っている人も多いと思いますが、実は退職するのって法律的にはとっても簡単なんです。

正社員の場合、「退職の二週間前に、退職の旨を伝える」これだけです。

言った言わない論にならないよう、実務上は「退職届(願)」を会社に提出します。そして、一般社員が出すのが「退職届」。社長や役員などの幹部社員が提出するのが「辞表」というのは豆知識。

と、このように法律的に辞めること自体は簡単です。

解雇があれだけ難しいのに、退職は簡単なんて、社長側から見るとなんて不公平だって感じがしちゃいますが、現実的に辞めることはそんなに簡単じゃなかったりするわけです。

上司や同僚からの引き止め。自分が辞めたせいで残る社員に迷惑がかかる。上司との関係性が良くなくて、辞めると純粋に言い出しにくい。こんな繁忙期に辞めるなんて、何言われるかわからない。様々な理由から、退職を躊躇します。

このくらいならまだいいですが、上司からの暴言、損害賠償を請求するなどの脅迫、自宅に押しかけての説得……なかには暴力事件にまで発展することもあります。

何も知らない人は、「退職なんて簡単」って言います。でも、昔とは違って、SNSやLINEなどのチャットツールでどこまでも会社と社員は繋がっていますし、ネット上での誹謗中傷などに繋がる可能性もあります。

例えば、2015年に起きた電通での女性社員の自殺事件。この女性は、時間外労働時間が約130時間にも上っていたとのことで、過重労働を苦にして24歳の若さで自らの命を絶っています。

「自殺するくらいなら、退職すればよいのに」という意見もあります。でも、極限状態になると人は正確な判断ができないものです。特に真面目で優しい人は、ほかの人に迷惑をかけるわけにいかないとさらに無理をしてしまうこともあります。それが常軌を逸した働き方だとしても、渦中にいるとなかなか気付けないものです。

このように、明らかに辞めたほうが賢明な状況だとしても、様々な事情から退職を言い出せない人も多いのです。

退職代行サービスを使うのは甘えなのか?

そこで、ここ数年脚光を浴びているのが「退職代行サービス」。

このサービスは、社員の代わりに退職を告げてくれるサービスで、弁護士や社会保険労 務士、その他の企業がこの退職代行をサービスとして提供しています。

なお、社員の代理人になれるのは法律上弁護士のみ。弁護士以外のサービス提供者は代理人になることはできませんので、あくまで「退職通知の代行」業務のみとなります。

この退職代行に関しては様々な意見があります。中でも辛辣なのが「退職代行を使うのは甘え」という意見です。法律上、ただ「辞める」と伝えるだけなのに、そんなサービスを使うべきではないというもの。中には、「弱者からお金を巻き上げて、法律的に代理・代行するサービスを行うのは言語道断」みたいな強烈な言い方をして批判する人もいるようです。

これは個人的な意見ですが、病んだり自死を選んだりするくらいなら、甘えと言われようがなんと言われようが、退職代行を使ったほうがいいです。現代社会は、昔のようなシンプルさはありません。メンタル不調なんて言葉もなかった。鬱病も甘えと言われていた。でも、いまは本当に複雑なんです。

SNSやチャットツールを通じた人間関係やおびただしいほどの情報。自分よりもっと過重労働で苦しんでいる人が辞めていないとか、自分の会社よりブラックな企業で耐えている人もいる。そんな情報もすぐに手に入ります。しかも、その情報が本当か嘘かもわからないのに。

つらいなら、退職代行を使って辞めていいと思います。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 WORKtheMAGICON行政書士法人代表 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚 https://www.amazon.co.jp/dp/B08P53H1C9
公式サイト https://yokosukateruhisa.com/

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年2月5日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。