「新聞に載ったぐらいで喜んで、あいつバカじゃないの」。
これは、著者の堀さんが、SNSに書かれた悪口です。それを見たとき、熱いお湯に浸かっていたにもかかわらず、急に寒くなり血の気が引くのを感じたそうです。
なぜ人は悪口をやめられないのでしょうか。
「悪口を言われても気にしない人の考え方」(堀もとこ著)あさ出版
SNSに書き込まれた悪口とは
この悪口を書いたのは、堀さんの知人でした。悪口を誰かに言うことはあっても、まさかSNSに書くとは想像もしていなかったようです。
「新聞に掲載された内容は、ボランティア活動のこと。それを誇らしく思っていたので、『○○新聞に掲載していただきました』と、自分のSNSに投稿していました。それを新聞に載ったぐらいで喜んで、あいつバカじゃないのと書かれてしまったのです。『載ったぐらいで』という言葉を見て、少し恥ずかしさも感じました」(堀さん)
「あまりにもショックだったので、私は別の友達に相談しました。すると友達は、私に共感してくれつつも、こう言ったのです。『そんなのいちいち見るからダメなのよ。 もうその人のSNSは見ちゃダメ』。言われてしまえばその通りです。その知人のSNSを見さえしなければ、私はわざわざ傷つくこともなかったのです。その場でそっと、フォローを外しました」(同)
これほどまでにSNSが私たちの生活の一部になったいま、見たいもの、知りたい情報だけを目にするのは不可能です。「閲覧注意」と前置きしてくれる親切な投稿ばかりではないように、「あなたの悪口が書いてあるから読まないでね」なんて前置きする投稿もありません。
誹謗中傷はブーメラン
あなたは仕事で成功を収めて充実した日々を送っています。家庭も満ち足りた状態です。おそらく、他人を誹謗中傷することなど考えもしないはずです。ところが、誹謗中傷をやめられない人がいます。なぜ、多くの時間を費やしてまで「粘着」するのでしょうか。
誹謗中傷をやめられないということは、自らの人生が充実していないことを認めているようなものです。なぜ、思ったことを我慢せずに吐き出してしまうのでしょうか。それは不安が強いからです。「自粛警察」や「マスク警察」が過剰に反応するのと同じ理由です。不安から逃れるために他人を攻撃せずにはいられません。
他人を攻撃するとマウントを取った気持ちになり、優越感に浸ることができます。優越感は次第に「快楽」へと変化し、「幸福感」を感じるようになります。おいしいものを食べると「満足感」を得るのと同じ仕組みです。
ところが、幸福感には強い「依存性」があります。次第に刺激の強い幸福感を求めて、誹謗中傷の量が増えていきます。この連鎖に気付かないとエスカレートして、頭の中は「ネガティブ思考」に染まります。
誹謗中傷は人を傷つけ苦しめます。言葉のナイフで相手の心を刺しているからです。ところが、人を傷つけ苦しめた人もそのままではいられません。傷つけた分だけ自分を傷つけているのです。そして、ブーメランのごとく跳ね返ります。この仕組みを理解しない限り、行動を改めることはできません。
人はなぜ、「嫉妬」をするのか
あなたの名前は凡田さん(仮名)です。大手消費財メーカーA社に勤務する入社5年目の社員で、これまで、大きなミスもなく過ごしてきました。先日、社長から「リーダー選抜制度」の発表がありました。人事部が、数カ月をかけて若手を選抜する新たな施策です。
そんな中、出木杉さん(仮名)が中途入社してきました。出木杉さんは凡田さんよりも若く、財閥系の総合商社に勤務していました。出木杉さんには上司や役員も大きな期待を寄せています。
半年後、出木杉さんはゼネラルマネジャーに昇進しました。社内のリーダー選抜会議を経てアサインされたのです。一方、凡田さんは選抜会議にかけられることはありませんでした。納得いかない凡田さんは上司批判を繰り返しました。しかし、次第に居場所がなくなっていきました。
これはよくある話です。「自分よりも優遇されている」と思うと今までの実績が否定されて、すべてを失う感覚に陥ってしまいます。コントロールが効かないと嫉妬の気持ちがどんどん膨れ上がっていきます。このとき、あなたの中には「情動(感情)のパニック」が起きています。
怒りの感情はフラストレーションを高めて、情動のパニックを引き起こすのです。これは、自分にとって大事なものを遮断されたときに発生する感情です。そして、破壊的な人格に変身して、ネット上で書き込みを開始するのです。
いま、誹謗中傷のスイッチが押されました。嫉妬は発作に近いので、簡単に収まることはありません。「情動のパニック」を起こさないためにもそのメカニズムを理解しておきたいものです。
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