東京藝術大学大学美術館で展覧会「大吉原展 江戸アメイヂング」が3月26日から開催予定だが、その公式サイトの内容が、ネット上で物議を醸している。なぜか。
公式サイトに、
「江戸のメディア王も、新進気鋭のクリエーターも、最新のエンタメもここから生まれた!」
「美術館が吉原になる!」
「桜満開の上野に江戸吉原の美が集結!」
「約250年続いた江戸吉原は、常に文化発信の中心でもあったのです。3月にだけ桜を植えるなど贅沢に非日常が演出され仕掛けられた虚構の世界だったからこそ、多くの江戸庶民に親しまれ、地方から江戸見物に来た人たちが吉原を訪れました」
などの文章が掲載されていたからだ。
こうしたキャッチコピーや説明文に「人身売買や性的搾取という厳然たる側面に一言も触れずに、アートや芸術を標榜する軽薄さが痛々しい」「暗い部分綺麗に排除されてて不自然さがすごかった」などとの批判が集まったのである。
また、脳科学者の茂木健一郎氏も同展について「ひとつ一つの展示物はともかく、全体のキュレーション、文脈付けが致命的に愚か」「大吉原展のようなまったく調子外れの企画展が出てきた事実に衝撃を受けました。大幅な企画の変更ないしは中止は不可避だと考えます」とX(旧ツイッター)で主張されている。
確かに「否定論者」が言うように吉原の歴史に暗い側面があったこと、人身売買の場所であったことは疑いがない。また、同展のキャッチコピーが華やかな面だけを強調していることも否めない。しかし「最新のエンタメもここから生まれた」とあるように、吉原が文化の発信地だった面もあった。吉原の歴史には「明暗」があったのだ。
大吉原展の広報事務局は、産経新聞の取材に、吉原について「多くの文化人が集い、膨大な絵画や浮世絵などを生み出す場となった」「遊郭『吉原』は、前借金の返済にしばられ、自由意志でやめることのできない遊女が支えた。決して繰り返してはならない女性差別の負の歴史を踏まえて展示していく」(大吉原展の告知に賛否「遊郭の悲惨さ、エンタメでない」「同性の憧れだった」『産経新聞2月99日)と回答しているので、「明」の部分のみならず「暗」の部分も展示・解説していくのではないか。
よって私は「大吉原展」を中止する必要はないと考える。展示を実際に見た上で、賛否両論、あれこれと議論することが大切なのであって、端から展示自体を潰してしまう、中止してしまうのは反対である。
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