政党法など

石破茂です。

今週も予算委員会は大半の時間を政治資金パーティと旧統一教会関連の質疑に費やしました。どちらも自民党の問題であり、このようなことで大切な予算審議の時間を使ってしまうことの責任はすべて我々にあります。

「政治に信頼が取り戻されない限り、予算審議など出来ない」との野党のご主張もごもっともですが、これらのスキャンダル系の議論は予算審議とは切り離して、別途特別委員会を作って行われるべきでしょう。予算委員会と特別委員会は並行して審議をすればよいのです。肝心の予算に関する審議がほとんど行われないのは国益を大いに損ねています。

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何分昔のことであまり記憶が定かではありませんが、子供の頃国会中継を視ていて「予算委員会なのに何で予算の話を全くしないのだろう」と不思議に思ったものでした(昭和41年、佐藤栄作内閣の「黒い霧疑惑」の時期だったかと思います)。

経済は高度成長期であり、それが「恐怖の均衡(MAD)」によるものであったとはいえ、東西の力がバランスした冷戦期の一種安定した国際状況と今とでは内外の状況が全く異なるのに、国会だけが旧態依然であってよいとはとても思われません。

「政治とカネ」の問題も、結局は政党の統治(ガバナンス)の問題に帰着するのですが、残念ながらこれを律する政党法についての議論が国会では全く行われていません。自民党の派閥は政策研究や人材育成の集団というよりも権力獲得集団というのがその本質であり、そのための手段が資金とポストであったことは多くの人が知るところですが、最大与党の党首選挙は事実上の首相選挙であるにもかかわらず、そのルールと運用がころころ変わるというのはどう考えてもおかしくはないでしょうか。

かつて自民党の総裁選挙では、国会議員や選挙権を有する地方の代議員一人当たり百万円から千万円単位で現金が乱れ飛んだと言われていました。今はそのようなことはないとしても、極端な言い方をすれば、総裁選で買収を禁じるような明示規定はありません。選挙人の範囲や選挙期間などのルールがその都度変わるようなことで、正当な選挙と言えるとはあまり思われません。

民主主義社会において政党が大きな公的性格を持つ以上、党綱領の制定、党首選挙のルール、意思決定のあり方、政党支部数、政党助成金使途の明確化、各級選挙の候補者の選定方法などを定めた政党法について、早急に議論を開始すべきものと考えます。自民党内の「政治刷新本部」は、このような大きな課題にも正面から取り組んでもらいたいと切に願います。

日本のGDPがドイツに抜かれて世界第4位に転落したことが話題となっていますが、そもそもGDPは付加価値の総和であって、国民の豊かさと直接関係があるわけではありません。社会の目的は生活を豊かにすることであって、GDP自体が政策目標になるものでもありません。

技術の進歩によって製品の性能や耐久性が向上し、価格が下がれば(薄型大画面テレビは十数年で価格が三分の一になりました)生活が豊かになってもGDPは下がりますし、社会資本整備によって利便性が向上して生活が豊かになってもGDPの増加には寄与しません。

フィリップ・コトラー氏(マーケッティング理論の提唱者の一人)の論考によれば、「適切な所得再分配をする上で、ミルトン・フリードマン氏が掲げた株主第一の資本主義には、雇用を増やせば人々が幸せになれるかについての考察が無いという致命的な欠陥がある。GDPは産出の増減の指標に過ぎず、これが増えれば人々が幸せになるのではない」「ドラッグや銃などの『筋の悪い製品』の販売促進や、まだ十分に使えるモノを計画的に陳腐化させて利益を出すような『筋の悪い商法』は、GDPを上げても人々の幸福を増進させることはない」などの所説には首肯させられる点が多くあります。

かつて国民総幸福量(GNH)なる概念が提唱され、ブータンがこの指標が高い国として注目されたことがありました。ブータンが日本よりも幸福かどうか、そもそもなにが幸せか、など、もっと本質的な議論を進めてもいいのではないでしょうか。

昨年統一地方選挙が終わったばかりなのですが、鳥取県議会鳥取市選挙区に2名欠員が生じましたため、3月15日告示、24日投開票という日程で補欠選挙が行われる見通しとなりました。自民党に対する批判が強い中、何とか議席確保をするため努めていかなくてはなりませんが、急遽の選挙で、まず候補者選びから始めなくてはならず、来週はこの作業もしなくてはならないと思っております。

立春も過ぎ、啓蟄まではお雛様を飾る時期となるようです。私には年の離れた姉が2人いるのですが、彼女たちが大学生だった頃、鳥取の家にかなり立派な雛飾りがあったことを懐かしく思い出します。あれから60年余が経過しましたが、日本全体が今よりずっと貧しくても、様々な素敵な風習が残っていた心豊かな時代だったように思います。このようなことを考えるのはやはり齢を重ねた所為なのでしょうね。

まさしく三寒四温、不安定な天候が続いています。皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。


編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2024年2月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。