ウォーレン・バフェット氏の市場観:カジノ的高騰への警鐘

バフェット氏が恒例の「株主への手紙」を公表し、市場がカジノ的高騰を見せていると警鐘を鳴らしています。一方、アメリカも日本も株価が史上最高値にあり、強気派が弱気派を打ちのめし、売り方の買い戻しが続く中、株価に対する楽観視が多く見られます。バフェット氏が「カジノ的」と指摘することがどういう意味なのか、もう少し考えてみたいと思います。

バフェット氏 同氏Xより

バフェット氏の投資姿勢は基本的に長期安定成長型であることと人々が必要とするものへの投資という観点に立っています。保守的であり、株価がある日突然、暴騰暴落するような銘柄というより時代と共に着実に歩を進めていく、そのような銘柄を投資対象にしています。

その氏の投資方針に照らし合わせると市場にはもう投資したい銘柄はほとんど残っていないということです。その為、手元の現金が積み上がり、現時点で25兆2000億円と天文学的な数字になっています。ここまで増えると対象の銘柄への投資がその会社の株価に極めて大きく反応するため、簡単に手出しできない、そんな悪循環の状況でもあるのです。

バフェット氏は更に「米国以外では、バークシャーの資本展開の選択肢として意味のある候補は基本的に存在しない。(アメリカを含め)全体として、われわれが目を見張るような業績を上げる可能性はない」(ブルームバーグ)と述べています。これはアメリカがあくまでも投資の主体であり、日本の商社への投資は例外的だったと言っているわけです。その5大商社への投資も現在、9%程度の持ち分となっており、10%を超えないと断言しているので増やしてもあと各社1%程度であり、金額的にも知れたものになります。個人的にはバフェット氏は為替動向を見て商社株は売ってくるとみており、今年か、来年あたりにはある程度手じまいすると考えています。

というのはバフェット氏はバリュエーションの考え方が基本にあります。例えば商社株はバフェット氏が仕込んだ時は安かったのですが、その後、株価は上昇し、既に60%もの非実現利益を取っています。買い増しするにしろ、長期ホールドにしろ商社が今後、更に成長するという前提があればよいのですが、そのピクチャーが描けなければ売るのが基本であります。たとえば三菱商事は適正株価水準の上限を既に突破していますが、日系の証券会社が買い推奨をしているのはポジショントークに近く、バフェット氏と三菱商事が日本株を救ったぐらいのノリとツキの話だと冷たく見ております。

バリュエーション、会社の現在の価値と将来の期待についてみると私もバフェット氏に近いスタンスにあり、北米市場において私も打診買いはするもののどんどん買い増す感じにはならないのです。特にマグニフィセントセブンへの過大なる資金の集中は尋常なレベルではなく、何かのきっかけでコロッと崩れてしまうリスクが大きく、バフェット氏の言う「カジノ状態」であるのは強く同意できます。エヌビディアも上昇する株価を横目で見ていますが、それに対して悔しいとか、買っておけばよかったという気持ちが一つも沸いてこないのです。

たぶん、こんなトーンの内容は今の市場の空気とは大きく違うので「小心者!」と言われそうですが、株価の形成のそもそも論を考えると年間に何十%も上がるのは個別企業ベースではあっても経済全体としては全員勝者になることは考えにくく、業績が悪化するところもあるわけで当然、相殺され、結局、一国の内需プラス外需の伸び率の合計を大きく超えることはないと考えています。よって現在の日本の株価も半導体と半導体装置産業への強い期待が先行していることを囃しているわけで日本経済全体を語るとそこまでではないでしょう。

バブル時代の高揚感がないというのはそういうことだと思います。ただ、何度も言うように日本はお祭り的盛り上がりをするので春闘が良い結果になれば消費の上向き期待⇒需要の増大⇒企業収益の向上が具現化されてくると思うので着実な経済改善は期待できます。また消費者も雰囲気にのまれる傾向があるので一部の人がお金を使い始めるとそれが一気に広がりを見せ、総需要が拡大し、需給バランスが好転しプラスの回転が効き始めるシナリオは描けます。但し、人口が減少する中、やはり外需への依存度は高くならざるを得ないと思います。

もう一点、世界全体を見渡すと2つの戦争の行方やそれ以外の不穏な動き、更にはアメリカ大統領選挙の行方など地球規模で影響を及ぼすイシューも出てくることからいつまでも春風でメローな気持ちになり続けるのも禁物ではないかと思います。以前、申し上げたように3月頃に一旦調整を挟むほうが長期的な視野に立つと安ど感が出ると思います。バフェット氏の言葉の含蓄とはカジノ、つまり勝ち続けることはないのだ、というのが私の理解であります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年2月27日の記事より転載させていただきました。