都電荒川線めぐり①:鬼子母神前駅から学習院下駅へ

3月9日 土曜日。所用でひさびさに都電荒川線に乗りました。少し時間があったので途中下車。降りたのは豊島区の鬼子母神(きしぼじん)前駅です。

狂気の人食い鬼が改心して出産・子育の女神へ

駅から徒歩5分ほどのところにあるのが法明寺鬼子母神(きしもじん)堂。読み方の違いに注意です。

「鬼子母神」の名は「恐れ入谷の鬼子母神」という昔の洒落で知ってはいましたが、訪ねたのは初めてです。洒落で使われた入谷の鬼子母神はここではなく、台東区下谷にあります。

鬼子母もともとは人の子をさらっては食べてしまう悪い鬼でしたが、仏が教化のために彼女の最愛の子を隠したところ嘆き狂いました。仏は鬼子母が他人の子を食べたことでその親がどれだけ悲しんだかを諭して子を返したところ、鬼子母は仏に帰依し、出産・子育(こやす)の神となったのです。上の写真の「鬼子母神」と掲げられた銘板の鬼の時には一画目の点がありません。この字で鬼子母神がすでに神であり鬼ではないということを表しています。

さほど広くはない境内の中、3組の乳児連れの両親がカメラマンとともにお宮参りに来ていました。さすが鬼子母神は出産の神様、無事子が生まれたことへのお礼お参りと子が健康に育つようにお参りをしにここを訪ねる親は後を絶ちません。

境内の売店で駄菓子なんかも売っています。こんなところに駄菓子屋って珍しいな、と思って何の気なしに写真を撮りましたが侮るなかれ、上川口屋さんは1781年創業で日本最古の駄菓子屋であることを後で知りました。駄菓子買っておけばよかった…

手塚治虫が暮らした「並木ハウス」

さて、鬼子母神にお参りしたあとは少し周辺をぶらぶら歩いてみることにします。参道脇の細い路地をいった先にあるこちらの住宅は「並木ハウス」と呼ばれる木造アパート。昭和28年に建てられ戦後の住環境を今に伝える価値の高い建物として平成30年に登録有形文化財に指定されました。

昭和29年には漫画家・手塚治虫が椎名町のトキワ荘からここに引越し、3年間生活したことでも有名です。

「天気の子」でも登場!崖のようなのぞき坂

鬼子母神前駅の脇の踏切を超えて、南に歩を進めます。地下鉄雑司が谷駅3番出口を南に行った先に東京の数ある坂のなかで最も急であることで知られる「のぞき坂」があります。

坂の向こうに新宿の街並みが見えます。逆に急坂すぎてすぐ先にあるはずの道路が見えません。のぞきこまないと下が見えないことから「のぞき坂」の名がつきました。

当たり前ですが道路はこのように続いています。それにしてもすごい坂です。映画「天気の子」で登場したことで聖地巡礼で訪ねる人も多くなりました。

※1:00ごろに一瞬登場します。

傾斜は23%で車が通れる道としては日本でも有数の急坂です。

車でさえ上るのがきつそう。下るのはもっとこわそうです。

下から見るとこんな感じ。ここを通って地下鉄駅に向かう人も多いようですがさぞ大変でしょう。

のぞき坂の西には都電荒川線が並走しています。サンシャイン60をバックに走る荒川線。のぞき坂ほどの勾配はありませんが急勾配であることに変わりなく、1両のローカル線が逞しく登っていきました。

鬼子母神前駅から学習院下駅までひと駅ですが見どころの多い散歩道でした。東京に住まわれている方も都電荒川線には乗ったことがないという人が多くいます。ふらっと都電に飛び乗って散歩に出かけてみるのも楽しいのではないでしょうか。


編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2024年3月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。