自分の能力を把握しておくべき理由

黒坂岳央です。

「あなたは何が強みで弱みですか? 他者に対し、何に優位性を持っていますか?」

この質問を受けて正確に即答できる人はかなり少ないだろう。

皆、他人のことはよく見ていてあれこれ評価したがるが、こと自分自身のこととなると殆どの場合は見えなくなってしまう。その理由はシンプル、自身を客観視するという行為が大変むずかしいことに由来する。

それ故に仕事でも学業でも、本来の自分の実力より遥かに小さい世界で活動をしてしまう傾向がある。

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能力の限界に挑戦する経験

自分は人生の早い段階で、自身の能力の限界値に挑戦する経験を積んだ方がいいと思っている。なぜなら年を取るほど挑戦するのが怖くなってしまうし、社会人になるとお金と体力があっても時間がなくなってしまうからだ。

若い頃に仕事でも学業でも「もうこれ以上は無理だ」というレベルにやり込めば、大体自分の能力の最大値が見える。しかし、それをしなければ本来の能力値の半分以下の世界に自分を閉じ込めることになるだろう。それはとてももったいないことだ。

サラリーマン時代、飛び抜けて能力が高いビジネスマンがいた。起業して自分でビジネスをすれば少なくとも現在の数倍粗利を取れるのは間違いない。一度、本人に興味はないのか尋ねてみたことがあったが、「あれは一部の天才にしかできない世界だよ。自分なんてとても無理だ」と返ってきたことがあった。

これも本来持っている能力値と本人が認識している能力値には大きな乖離がある事例の一つであろう。

市場と自分ニーズの乖離

市場に自分の付加価値を晒した経験が浅いとこの逆の現象が起きる。すなわち、高望みである。

転職をしたことがないビジネスマンは大抵の場合、最初は高望みをやりがちだ。「自分は現職でこんなに頑張った。パフォーマンスを出した」そう思っていても、先方のニーズに訴求するプレゼンができないと自分を高値で売ることに繋がらない。敗北が続けば次第に自己評価が小さくなっていき、やがて「今より少しでも条件がマシならどこでもいい」と安売りを始めてしまう。

婚活も似たような状況であることを、結婚相談所経営者から話を聞いたことがある。最初は平均値よりよい条件のお相手を積極的に探して、自分が求める相手ばかりに応募していくが肝心の自分のPRが相手のニーズに刺さらないのでミスマッチが続く。嫌気がさしてやめてしまうか、条件を引き下げてマッチングを待つことになる事が多いのだという。

「弱点を潰して完璧な人を目指そう」という考えはビジネスには当てはまらない。なぜなら、ビジネスは一点突破主義でも通用する世界だからだ。他者に対して圧倒的な優位性を持つ人は、弱点があっても気にしなくてもいい。市場ニーズにマッチする能力さえあれば、それを求める人は必ず見つかり取引は成立するためだ。重要なのは自分にどんな強みがあり、市場にそのニーズを訴求するマーケティングなのである。そのためには自分自身を正確に把握する必要があるだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。