NHKより
そもそも論だが、大谷の通訳はなぜ、米大手スポーツ専門局ESPNのインタビューに応じたのだろうか？ 予想通り、通訳の発言が1つのきっかけで、大谷のPC使用で胴元に振り込んだことが公開され、大谷自身の賭博関与の疑いが深まった。
重要な争点は、大谷自身がどこまで賭博を違法と認識していたか、違法と知らずとも、胴元への送金と認識していたか？だ。
大リーグ機構の捜査よりも、刑事犯になり得る最悪の事態を避けるため、反証が非常に難しい捜査当局への対処が必要になった。
ESPNに関してだが、私自身は取材したことも、競合して完勝したこともある。少々寄り道になるが、小生が完勝した取材とはなにか？ 大谷の通訳問題と野球から少し離れるが「スポーツ賭博」と関係するので、ここに書く。
大分前になる。自分は門外漢だったがボクシング取材をした。2012年12月、メキシコが誇るマルケスとフィリピンが誇るパッキャオとのラスベガスでの一騎打ちだった。
当時、飛ぶ鳥を落とす勢いのパッキャオを、マルケスが見事にKOして、パッキャオが下り坂を落ちる端緒を作ったゲームだった。
その史上に残る試合の世話役がボブ・アラムだ。ボクシングのプロモーターとしては世界一と言っても反論はないだろう。一時期ドン・キングのライバルとも言われたが、ここ10年以上は、圧倒的にボブが上だ。
ボブ・アラム（左）と筆者
マルケスもパッキャオも2人とも、彼の「手のひらで踊っている」と評した識者もいた。
さらに、ロンドン五輪で金メダルをとり、プロ転向後もWBAミドル級で活躍した村田諒太選手。世界チャンピオンになった世界に誇れる日本人選手だ。
彼の試合の面倒をみたのもボブだった。
マルケス・パッキャオの試合で、当然ながら、世界のメデイアが取材に殺到した。私事で恐縮だが、小生はボクシングそのものには興味がない。
そもそも格闘技など嫌いだ。いまギャングが闊歩してクーデターが起きているハイチ。現地訪問取材は2回やったが、防弾ベストを着て愛用のグロック16連発を常に所持した。米国でもほぼ日常的にグロックを持ち歩く。相手がボクサーとか格闘技のプロでも、接近戦になれば勝てない。だがいつも距離を取るようにして、3〜4メートル以上離れているようにする。そこですぐに銃を発射すれば殺せる。狙うのは防弾ベストがあり得る胸ではなくまずは額（顔）、そして胸。順番が逆だと、体が動くので狙いにくくなる。基本中の基本だ。正当防衛には銃が一番。ボクシングなどは論外だ。ボクサーの脳への衝撃が心配で、プロの試合を見ることも殆どない。
ではなぜ、ボクシングの取材をしたのか？ 米国のスポーツビジネスの表と裏を知りたかったからだ。
最終的にボブはESPNなど米国や他国の大手メデイアには許さなかったことを、自分にはやらせてくれた。平日の夜、自宅で4時間くらい長時間対談することができた。
それまでボブのメデイア対応は。記者会見と質疑応答だけ。「自宅は初めて」と側近が驚きながら言った。
いろいろボブと話して驚いたこと。ウマが合ったこと。
もともと彼自身もボクシングそのものには興味なく好きでもなかった。法律に詳しい。日米で法律を勉強した部分も含めて。ここが小生と話が合った。
彼は大昔、司法省にいた法律のプロ。賭博行為やビジネスの闇の部分を捜査した。その時に正義感だけではなく、賭博などが果たす役割を知り、同時にかなり儲かるビジネスになることを学んだ。
野球も含めてスポーツ賭博は、確かに勤労意欲を削ぎ落し、借金に借金を重ねて家庭崩壊も多々ある。同時にスポーツで贔屓のチームが勝ち、さらに掛け金が数百倍になって戻ってくるとなれば、高揚感・幸福感も数百倍になり、人間に幸福をもたらす（大谷の通訳もこんな状況になり、奈落の底から這い出ることができなかったと言える）。
同時に脱税をしていない限り、州政府にも巨額の税収がある。米国で違法にしても、米国民は欧州の賭博ビジネスに賭ける。それは止められない。どうせなら米国で解禁すれば州が潤う。結果、その通りになった。賭博は、違法な州では違法だが、完全否定できない側面がある。
こんな議論をボブとした。
大谷の通訳問題に話を戻す。今回、通訳から直接話を聞いたESPNの女性記者、いろいろインタ内容を公開、ほぼ全ての経緯を話しているが、例えば捜査当局をpoliceと言った。今回はFBIとIRSの2つが中心だ。根っこはつながっているが、どちらかというと、連邦の国税庁IRSは脱税・マネロン摘発だから胴元。大谷は賭博法違反の可能性だからFBI。一義的には州法違反だが、今回の賭博ビジネスは、ラスベガスがあるネヴァダ州など他州とも関係する。大きな組織犯罪がまず間違いなく関係する。つまり警察レベルではなく、FBIの管轄だ。いずれにせよ、捜査担当の主体は連邦機関Fedsとでも言うべき。これをみただけてもESPNのレベルが分かる。
そんな記者に通訳は90分も詳細を話した。驚くべきはほぼ間違いなく大谷側のアレンジだった。それが主な理由で通訳は取材を受けた。大谷の「人の良さ」を正直に言えば、一件落着と考えたのか。そしてすぐに大問題に気が付いて、あれは嘘だったと大谷を庇うとしか思えない訂正発言をさらにした。通訳だけでなく、もしかするとアレンジした大谷関係者の信じられない低レベルだ。
さらに大谷側は巨額窃盗で通訳を告訴した。胴元の口座記録には大谷の口座からの振り込みが10回近くあった。大谷のPCを使って何回もの送金を、大谷を胡麻化してどのようにやったのか？
通訳が大谷の資産管理をしていた可能性はある。だがそうなら「横領」になる。今回は「窃盗」での告発だから、その可能性はまずない。それも含めてここの部分の証明責任は大谷側にある。できないなら誣告罪の可能性だ。
一緒に大谷のPCを見ながら、説明で嘘をつきながら、大谷にパスワードを入れさせて、大谷自身もしくは、通訳が大谷の目の前で、通訳自身が送金ボタンを押した？それを証明できるのか？
通訳は当然最低最悪。ギャンブルは得意でないのに巨額の借金まで膨れ上がるまで、止められなかった。人間として失格。最近は通ったという大学UCRも行っていないことが判明した。私も確認したが、学歴詐称だ。別名で行った可能性はほぼゼロ。関係者には悪いし、大学ランキングは基準が色々ある。だがUCRはカルステートよりは上だが、UCの中では下のレベル。なんで詐称したのか不思議。
さらに大谷側の球団広報、弁護士、皆が十分で高いレベルではないと言える。例えば、深刻さはかなり違うが、基本は似ている昔のO・J・シンプソン事件をみても分かるように、スポーツ有名選手の刑事事件は、良いも悪いも魑魅魍魎が多数登場して、大変なことになる。
後日シンプソン本人が、一事不再理を認識しつつ、友人に「実は俺が妻と愛人を殺した」と告白した。それが腕利き弁護士が人種差別問題にすり替えることに成功。計画性がある第一級殺人者が「無罪」になった。いまでも思い出す。信じられない事実だ。
最近のトランプ裁判をみても、一応、機能しているはずの米国の司法に疑問点が残る。逆にいえば、間違いなく大谷は無罪のはずだが、日本では想像できないレベル、情け容赦がない連邦捜査機関の手腕で有罪になる可能性がある。永遠になくならない「イエローモンキー」大谷への嫉妬もある。人種要素が入ると、客観的に理解不能な飛んでもないことになり得る。そこを私は恐れる。
大谷が球団に勧められたという、一応有名だが、現在のスポーツ・映画・エンタメが得意の弁護士（チーム）では無理。もちろん球団・広報でもこれまでの対応。特に「巨額窃盗」とした辺りを見る限り、十分な能力があるとは言えない。
一刻も早く有名人が関係する刑事事件専門弁護士を雇って、発言など全てを任すようにしないと大変だ。さすがに永久追放はないだろうが、調査中は出場停止も十分にある。捜査当局や大リーグ機構などともやり合える弁護士が必要だ。
これを書いた直後に、やはり大谷は腕利きの弁護士を雇ったと、聞いた。一番重要な刑事事件を扱って結果を出している専門家だ。一応、実績もある。少し安堵。
この事件、舐めると大変なことになる。大谷選手には野球に専念して欲しいと心より願う。
さらにここで飛び込んできたニュース。大谷本人が25日に事情説明をする。私は大谷自身のメデイアへの自由発言はいまはするべきではないと書いてきた。単純にファンの気持ち優先で、米国捜査機関への無知、大谷の危機を理解しないで「本人が早めに説明するべき」というNHKの元解説委員長を批判した。
連邦捜査機関の捜査対象になっている現在。不要な発言が万が一の刑事訴追の時に不利な形で使われるのは米国だけでなく世界の常識。「捜査機関を甘く見るな」という他の似たような意見の方と基本的に同意する。
私はあくまでも米国の常識、正式な容疑者になる前でも、刑事事件被疑者になる可能性がある時、公の発言は、後日不利に使われる可能性を懸念した。昨年から今年初めにかけてのFBIの捜査でも大谷・通訳の名前が浮上した可能性もある。だが実際に通訳の不用意なメデイアに対する発言が、大谷自身への疑惑の出発点の１つになったことは否定できないことを指摘した。
私のように米国の刑法を勉強し、IBM 産業スパイ事件から始まり、ロス疑惑、東芝ココム、ヤマハのヘリ事件など書き切れないくらいの刑事事件を40年以上直接取材しないと、理解できないことかもしれない。最悪のシナリオを考慮するのは「危機管理の原則」で、世界の常識だ。
明日月曜の説明は、私が最初からこのアゴラでも主張したこと。有名人の「刑事事件」の経験がある専門弁護士を雇えということが実現して、その新弁護士の判断だ。
さらに地元で大きな影響力があるLAタイムス紙の主張が通った形だ。事件発覚後、大谷人気が落ちた。これで黙秘ならさらに人気が落ちる。やはり人気ビジネス、ファンを優先にすることが大きな要因で発言が決まったようだ。
だがまずは送金の詳細は話さない。予定稿を読むだけかも知れない。一見フリー発言でも社会を騒がせ、ファンを不安にさせたことへの謝罪くらいで、大谷の出番は終わり。残りは新弁護士が代わりに言うか、事件の詳細は、現時点で「コメント無し」で終わるだろう。
繰り返しだが、現時点で振り込みの詳細を、大谷自身が公に自由に話すのはご法度だ。
私が繰り返し書いたように、大谷のPCから胴元の口座に10回近く退勤が振り込まれたのは事実。送金がどのように行われたか？大谷自身がお金の行先が胴元であるか、それをどこまで認識していたか？は争点になる。だが現時点で間違いなく言えるのは、どう転んでも大谷が100％刑事訴追されないという確証はない。
新弁護士は、当局に完全証明義務がある、疑わしきは罰せず、さらに当局は法廷で完全証明できないと判断したと思われる。本当にそうならば良いのだが。上記のように一応他国に比べればまともな米国の司法だが、現在のトランプ裁判をみても、当然、100％間違いない判断なのか？正義が果たされたのか？保証はない。
つまり担当する捜査官、検事、判事、（訓練された判事ではなく一般市民なので感情論で動くこともある）陪審によって流動的な要因があるのが米国の常識だ。
最悪のシナリオの１つ。大谷が「違法賭博ビジネスに加担して刑事訴追で有罪」。非常に考えにくいが、可能性はゼロではない。
また刑事犯にはならないとしても、賭博には異常に神経を尖らす大リーグ機構を怒らせて、試合に出られなくなる可能性。背筋が寒くなる。だから私は騒いでいる。
とんでもない通訳に足を引っ張られた形になった大谷選手。私の心配が杞憂に終わることを願う。なんとか早めに全て解決して、野球だけに専念できることを心から祈る。
