フランスの味覚を彩る甘い伝統:復活祭ショコラの魅力

加納 雪乃

フランス人が一年で最もショコラを食べるのはいつか、ご存じだろうか?クリスマスと復活祭だ。

クリスマスシーズンの贈り物としてショコラは大人気。この時期は日本で言うところのお歳暮シーズンでもあり、12月、パリを代表するショコラ店は、店頭販売よりも企業からの大量注文でフル稼働だ。

そして、クリスマスと並んで最もショコラを食べるもう一つの時期が復活祭。体感では、クリスマスよりも復活祭の方が、ショコラを食べる機会が多い。

復活祭のショコラが賑やかに並ぶショコラ店

移動祝祭日の復活祭は3月〜4月に巡ってきて、今年は3月31日の日曜日。フランスでは伝統的に、復活祭の”再生や多産”をモチーフにした卵や雌鳥、うさぎの形をしたショコラを食べる。復活祭に先がけた3〜4週間、ショコラ店の店頭は卵や雌鳥のショコラで埋め尽くされるし、パン屋さんやお菓子屋さん、スーパーマーケットでも復活祭のショコラが目立つ場所にずらり。

宗教的には、復活祭前の46日間は四旬節と呼ばれ食事の節制が行われるが、現代の一般人は、この時期から、百花繚乱のごとく街中に溢れるショコラを嬉々として味見し始め、復活祭当日には、これぞ!と見込んだ作品が、宴のテーブルを甘やかに飾り、春の到来を喜ばしく告げる。

クリスマスのビュッシュ・ド・ノエル同様、名のあるショコラ店や高級ホテルは、毎年復活祭ショコラ(フランス語で、ショコラ・ド・パック)を発表する。今年の新作を見てみよう。

©︎Laurent Rouvrais

©︎Laurent Rouvrais

ショコラの名門「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」は、夏に控えたパリオリンピック&パラリンピックをテーマに、卵型のかわいらしいアスリートたちや卵型のストップウォッチオブジェ。定番の卵&ウサギをデザインした、ピーナッツやヘーゼルナッツのプラリネもキュート。

職人技術際立つ実力派ショコラティエ「パトリック・ロジェ」は、卵をガチョウに見立てたチャーミングなオブジェ。中には、店自慢のプラリネ類がぎっしり。プラリネの詰め合わせボックスは、毎年大人気で売り切れ必須。

フランス料理の巨匠が手がける「ル・ショコラ・アラン・デュカス」は、グラフィックな造形美を持つ卵や動物をテーマにした作品群。

ラグジュアリーホテル「ルテシア・パリ」は、海洋環境にコミットし、卵を鯨にデフォルメしたアーティスティックな作品。子供向けに、ぬいぐるみのような可愛らしい鯨型ショコラも揃えた。

ホテルの中庭や公園などでは、子供たちを対象にした卵型チョコレート探しイベントもあちらこちらで開催され、毎年、バスケット片手に色々なところに隠されたチョコレートを探す子供たちで大賑わい。

長い冬が終わり本格的な春の到来を告げてくれる、復活祭のチョコレート。明るく幸せな雰囲気を漂わせる歳時菓子を、ボナペティ(召し上がれ)!