中国はアルゼンチンでのダム建設から撤退
アルゼンチンで2つのダム建設を施工することになっていた中国企業Gezhouba社はミレイ新政権からの工事継続のサインを待ちきれず撤退を決めた。1800人の従業員は解雇。中国から派遣されていたエンジニアも本国に帰国させた。
この工事は2013年に当時の大統領だったクリスチーナ・フェルナンデス氏の政権下で始められた事業であった。その建設費用は50億ドルと見積もられた。(3月14日付「Swissinfo」から引用)。
ところが、そのあと欧米寄りのマウリシオ・マクリ大統領の誕生で工事は4年間中断し、双方に多大の出費をもたらした。ところが、マクリ氏の後、アルベルト・フェルナンデス大統領が誕生し、クリスチーナ・フェルナデス氏が今度は副大統領に復帰したことに及んでこの工事は再開となった。
しかし、アルベルト・フェルナンデス氏の政権は1期4年続いただけであった。そこで、再び欧米寄りのハビエル・ミレイ氏が昨年12月に大統領に就任。彼は中国との取引は極力避けたいという方針と財政緊縮を徹底して実行して行くという理由から公共事業についても最低限必要な工事だけを継続し、新しい公共工事は実施しないという方針を明らかにした。
新大統領のこの判断の影響を受けて、この2つのダム建設工事も当面は据え置かれることになった。ということで、中国側ではこれ以上待っても工事の再開は期待できないと判断し、Gezhouba社は撤退することを決めた。
ミレイ大統領支持のトランプ氏大統領復帰が怖い中国
当初、中国政府はこのダム建設の再開を期待していた。ところが、米国でトランプ氏が大統領に復帰する可能性が次第に高まっている。
ミレイ大統領を強く支持しているトランプ氏が大統領に選出されれば、アルゼンチンは完全に米国寄りになると中国は判断したようだ。この判断も中国がこの工事の継続を断念する理由となったようだ。
中国はスワップ取引も撤退か?
この決定に続いて、中国はアルゼンチンとのスワップ取引から撤退する可能性も生まれている。仮にそうなると、アルゼンチンは同取引から発生する180億ドルに加え、総額300億ドルの負債が新たに加わることになる。(3月13日付「ラ・ポリティカ・オンライン」から引用)。
更に、ミレイ大統領にとって不安材料となるのは、中国がアルゼンチンからの輸入を減らす可能性も生まれて来る。昨年の中国との取引は130億ドルで、例えば、カタマルカ州の輸出の45%が中国向けとなっている。それが減少すると、同州の経済は深刻な打撃となる(上述「ラ・ポリティカ・オンライン」から引用)。
実際、中国は大豆と牛肉の輸入についてはそのウエイトを既にブラジルにシフトしている。皮肉なのは、アルゼンチンの最大の貿易取引国であるブラジルがアルゼンチンの中国向け品目の市場を奪っていることになる。