「人目を気にしない生き方」は本当に正しいのか?

黒坂岳央です。

「人目を気にしないで生きていきたい」と思っている人は少なくない。ネットでもたくさんの記事や動画でその方法の解説が出てくるあたり、強烈なニーズがあるのだろう。

確かにこの主張は部分的には正しいと思う。自分のように発信活動をしていると、イチイチ他人からの否定的な意見や顔色ばかり伺っていたら何も言えなくなってしまう。だが、気をつけるべきはひと目は気にするべき点と気にするべきでない点にわかれると思うのだ。それぞれ、思うところを取り上げたい。

maruco/iStock

人目を気にするメリット

人間は社会的な動物であるため、どこまでいっても人とのつながりから完全に開放されることはできない。自分の幸不幸の多くは、他人や社会からの評価が多くの割合を占めている事実を否定することは難しい。まずは人目を気にすることで得られるメリットを考えたい。

1つ目は外見である。筆者は記事を書く時は部屋着やジャージといったラフな服装をしていることが多い。だが、YouTube動画を出す時は着替えたり、ヒゲをきれいに剃るなど外見を整えることをする。外見があまりにだらしないとそこに視聴者の意識が向いてしまい、肝心の内容が頭に入らなくなってしまうし、やはり外見が与える印象は大きく発言の信頼性にも影響するので最低限の身だしなみは整える必要はある。

先日聞いた話では、フルリモート勤務をするビジネスマンはヒゲは伸ばしっぱなし、部屋も散らかり放題で服装も丸一日パジャマだった。しかし、リモートワークが解除されたことで外見を整えるようになったという話があった。人目を気にするからこそ、外見を整えることにつながる。

2つ目はビジネス感覚である。人間は主観の生き物であり、学問やビジネスを通じた知識や経験で社会性、客観性をスキルとして身に着ける。他者から見て自分はどう見えているのか?発した言葉はどのように受け止められているのか?こうした意識はビジネス力に直結する。この原稿も他者から見て、読みやすいか?といった人目を意識して書いている。頭に思い浮かぶままに好き勝手書いても、読みづらく無益な電子ゴミになるだけだ。

よく言われるのが、資産運用だけで生きていくFIREを始めた人が、大変怒りっぽくなったり、口を開けば人生の愚痴不満をぶちまけるようになって周囲から人が離れるという話である。これは人目を意識しなくても直ちにデメリットがなくなる立場を得ることで起きる現象と言える。

人目を意識しないことで人的魅力が低下する要素は忘れてはいけない。

最後は気にしない勇気

ビジネスマンなら、社会性や身だしなみは人目を意識した方が良いという話をした。だが、最低限の振る舞いに気を付けたらその後の評価についていえば、人目を意識する必要はないと思っている。

記事や動画を出すと賛同する声と同時に、必ず反対意見や批判の声も送られてくる。完全にマーケットからズレた意見を出してしまったり、反社会的な発言は慎むべきなのは言うまでもないが、そこをクリアしているなら反対意見は気にしなくてもいい。立場や価値観が違えば異なる視点を持っていて当然であるし、そもそも他人の批判しかしない人もいる。そこを気にして、自分の主義主張まで引っ込めてしまうべきではないだろう。

反対意見だけでなく、賛同してくれる人にこそ意識を向けて堂々と自信を持って主張するべきだと思うし、自分はそうしてきた。

「人目を気にしないで済むように強くなりたい」と悩む人は多いが、そうした人も人目を意識するからこそ、外見を整えたり社会性を持っている事実がある。本当に何も人目を気にせず、だらしないふるまいをしたら誰一人寄り付かなくなる。大事なのはそのバランスなのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。