日米首脳会談が導くこと:日米同盟の深化という点では大いにプラス

今回の岸田首相の訪米にあたり、一部では弱い者同士のトップ会談と揶揄するものもありました。確かに両者の支持率は低迷し、双方、秋までには自分の運命を決める選挙が待ち構えています。その中でたぶん、一番話しやすかったのが岸田氏にとってのバイデン氏であり、バイデン氏にとっての岸田氏だったのではないでしょうか?

世界を取り巻く情勢は緊張感が非常に高く、手放しで外交ができるのは日米関係だけではないかという気すらします。特にアメリカからすれば盟友イスラエルとの厳しい関係、更には欧州の各国とも今一つ関係構築が積みあがらない感じに見えます。一方の岸田首相も外交面では韓国の総選挙が予想通り与党の惨敗となり尹大統領の政権のかじ取りはより難しいものになることが判明したばかりです。インドも選挙を控える中、腹を割って話せる盟友はあれだけ外交で飛び回っている割には少ないのです。

岸田夫妻とバイデン夫妻 首相官邸HPより

今回の首脳会議は日米同盟の深化という認識でよいと思います。特にぎくしゃくした社会の中で日本の防衛面強化についてアメリカの支援を再認識したことは大いにプラスでしょう。これを受けて中国外務省は猛反発していますが、それはまるでプーチン大統領がNATO加盟国がロシアの隣国に来るぐらい嫌悪感だろうと想像しています。

今回の岸田氏のはつらつとした外交ぶりをみて岸田氏はやる気を補充したとみています。つまり秋の総裁選に打って立つ、そんな気配を感じます。国内の冷たい風をどうやって吹き飛ばすか思案していることでしょう。裏金問題が簡単に幕引きするとは思えませんが、それで国政が滞るわけにもいかないし、日本が抱えている問題は山積しているのです。その中で茂木幹事長が茂木派の解散を検討するという産経の独自ニュースが入ってきています。派閥と裏金が自民党に究極的なボディブローになっていることを茂木氏もようやく理解したということでしょう。とすれば自民党内が揉むにはもう少し時間がかかるということです。

私の大胆予想としては岸田氏は北朝鮮に行くのではないか、そんな気がするのです。少なくともバイデン氏にその仁義を切ったということ、すでに水面下での調整が進んでいる可能性が高いことから夏前に訪朝はあり得ると思います。なのでもちろん訪米後の解散総選挙などみじんも思っていないと思います。

ただ、北朝鮮に行ってどんなやり取りをするのか、そこが難しいところだし、私には想像がつかないのです。拉致被害者の件は金正恩氏は直接的には知らないわけで当事者でもなかった手前、それだけを主題にするわけにはいきません。では弾道ミサイルの発射実験を止めろと言いに行くのでしょうか?それもおかしな気がします。そもそも訪朝の可能性が生まれたのは金与正氏の微妙なニュアンスの発言からでした。そして能登半島の地震に見舞い電報を送ったのは驚きでありました。日本と韓国との関係分断作戦ではないか、という見方もありました。ここは慎重な考察が必要かと思います。ボトムラインは「コミュニケーションは良いこと」なのでその点は評価します。

ところでアメリカの大統領選挙ですが、なんとなくですが、トランプ旋風の風が弱まってきたように感じるのです。裁判を抱え込み、司法費用のやりくりに頭を痛めながらも強気一辺倒で臨んできたトランプ氏は厭世観すらある現在のアメリカに突風を吹かせることを狙っているわけですが、その風は心地よい風ではないということを国民が感じてきたのではないか、つまり夢から覚めて現実を見始めたのではないかという気がします。どん底から這い上がり勝利を勝ち取るというのはアメリカのドラマ仕立ての様で聞こえは良いのですが、今回のシナリオはあまりにも賛否が多く、刺激が大きすぎるでしょう。トランプ氏が仮に大統領になっても彼が口にしている公約達成はどれもこれも相当難しいということを国民が今認識しつつある、これが選挙を6か月後に控えたアメリカの現状ではないか、という気がします。

仮にこの予想が当たるなら弱い者同士の傷の舐めあいといわれた岸田氏とバイデン氏ですが、案外、秋には両名とも笑っている可能性はないわけではなさそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年4月12日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。