AIに仕事を奪われる時代でも人間に残る、ある貴重なスキルとは(滝川 徹)

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近年、ChatGPTをはじめとしたAIの進化で、人間の仕事がどんどん楽になると話題だ。これから求められるのは、AIを使いこなすスキルであることは間違いない。AIを活用する人とそうでない人とで、仕事の生産性に大きな差が生まれるからだ。

しかしもう一つ、多くの人が見落としている重要なスキルが一つある。そう語るのは時短コンサルタントの滝川徹氏。今回は、多くのスキルがAIに置き換えられる時代でも人間に残る、ある貴重なスキルについて、滝川氏の著書『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング) 』より再構成してお届けします。

AI時代に求められるスキル

ChatGPT-4を使ったことがある人は想像できるかもしれないが、AIの進化がとんでもないことになっている。

たとえば堀江貴文氏は著書『夢を叶える力:世界初? AI(CHATGPT)で99%書かれたビジネス書』(ホリエモン出版)をそのタイトル通り、99%をAIで書いたという。

私もChatGPT-4を普段使っているのでわかるが、これは十分可能だ。試しにChatGPTで「タスク管理について、何か記事を書いてみて」と極めて曖昧な指示を出してみてほしい。それだけでそれらしい文章を書きあげてくれる。

より具体的に指示をすれば、さらに良い文章ができ上がる。こうした結果を目の当たりにすれば、堀江氏が言っていることは誇張ではないことは誰にでもわかるはずだ。

もっと衝撃的な話をしよう。Google Xの元最高業務責任者であり、業界の最先端で働いてきたモー・ガウダット氏。彼によると、ChatGPT-4のIQはテスト結果で評価すると155にのぼるという。現時点で大半の人類よりも知能が高いのだ。

ちなみにアインシュタインは160だったとされる。しかも旧版のChatGPT-3.5より倍賢く、その更新はわずか数カ月。これから数か月で知能がさらに10倍になるとしたら? そのときこそ世界は大きく変わるとモー氏は指摘する。

では世界はどう変わるのか? AIの専門家たちの話を聞いていると、長いスパンで見れば楽観的に考えている人が多い。ターミネーターのような世界がこないとは言いきれない。

しかしどちらかというと、AIが人間に代わり仕事をこなしてくれるようになり、人々は働かなくていい時代が来る。ユ-トピアが待っているというのが専門家達の見解だ。これは一見聞こえがよいかもしれない。しかし、生きがいの喪失などの深刻なリスクも想定されている。

たとえば本や音楽、映画、アート全てにおいてAIが人間を凌駕し、何をやっても人間は太刀打ちできない。そのとき人類は何を生きがいにし、どう生きるのか-。我々は問われることになるというわけだ。

しかし実は、そんな時代が来る前に訪れる大きな危機がある。それは過渡期にともなう大きな変化だ。

AIを活用する人が、そうでない人々を置きかえる時代。多くの人が仕事を奪われ、とんでもないことになる。これが専門家の見解なのだ。しかもこの変化は2040年、50年の話ではない。むしろ2~3年以内に訪れるとされている。

たとえばChatGPT-4の10倍の知能をもつChatGPT-5がリリ-スされた世界を想像してみてほしい。現状でもビジネス書1冊を書き上げる知能を有するのに、そこからさらに10倍だ。

AIを使いこなせるか否かで仕事の生産性にとんでもない格差が生まれる。これは想像に難くない。AIを使いこなせない人は失職する。このことも間違いなさそうだ。私でさえ、このことに恐怖を感じている。

ただひとつだけ、私が人より優れていて頼りになると考えているスキルがある。それは(タスクを)実行する力だ。

実行力だけはAIに置きかえられない

いずれタスク管理もAIに任せられるようになるだろう。自分が抱えているタスクをAIに説明して、どの順番でどうこなしたらいいか教えてと言えば最適な順番で計画を作ってくれることはまちがいない。

AIの進化により、タスク管理能力に差は生まれなくなるはずだ。一方、明確な差が生じるのがAIに提案された計画を実行する力だ。

たとえばタスクAをこなせと提案されても、それを先送りしてしまえばいくら理想的な計画を提案されても意味がない。AIが先送りの衝動まで管理してくれるわけではないからだ。

つまり、少なくともAIが人間の仕事の全てを置きかえる時代がやってくる前、すなわち過渡期に(AIを使いこなすスキルとは別で)必要となる重要なスキルのひとつは実行力となるはずだ。

そういう観点で本書はこれからの時代を生き抜く武器になる。私はそう確信している。

滝川 徹(タスク管理の専門家)
1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。 

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年4月15日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。