今回の東京15区、島根1区、長崎3区の衆院補選は現在のところ、自民党の2戦敗は決定している。島根1区については、立憲候補の亀井亜紀子氏が知名度の点で一歩抜きん出ている印象がある。ただ、島根は保守王国とも言われ、元々、自民党の強固な基盤があった地域であるため、自民党県連が一枚岩になれば、或いは錦織候補の勝利もなくはないという状況だ。
自民党選対は、今回の3補選に積極的に候補者擁立を見送った形だが、それは解散総選挙の可能性を睨んでのものだろう。
東京15区は、私は乙武候補有利と思っていたが、小池都知事の学歴詐称疑惑問題が再燃したことで、その可能性は低くなった。都民ファーストが全面的にバックアップしているのは間違いないが、さりとて無所属で出馬せざるを得ない状況は、予測を困難にしてしまったと言える。
乙武候補は前回出馬の折もスキャンダルにより断念した経緯があり、今回も自分のことではないとは言えど、混乱を呼び込んだ。つくづく、この人は国会議員に縁が無いのかもしれないと思わないでもない。
とまれ、今回の補選を解散に向けての試金石とする見方は、ここに来て様相が変わったと感じている。
むしろ、結果次第ではあるが、岸田総理の腹づもり一つで政局が大きく変わる展開になってきたことを踏まえると、岸田総理の運の強さを感じる。自民党は派閥解消に追い込まれ、野党は選挙対策が不十分なままだ。与野党ともに岸田総理の気持ち一つでいくらでも状況が変わるし、言い換えるなら、今、国政で最も強力な立場にいるのが岸田総理ということになってしまった。
今回の訪米は、内外ともに反響が大きく、アメリカの対中政策にすら少なからず影響を与えているし、野党は日米安保の一線を越えたのではないか?と外交委員会等で小西ひろゆきなどが騒いでいるが、逆に、日本政府が安全保障上、過去と一線を画す段階に踏み込もうとしていることで、新たな枠組みの時代に突入したことを示している。
むしろ日本国民がそのことを実感できるが故に、野党がギャーギャー騒いでいるのだ。野党が騒ぐことは中国も同様に騒ぐ。彼らはある種、一蓮托生で自民党政治が大嫌いなので、騒ぐのである。このあたりを踏まえて、外交や安全保障問題を見ていくと、日本政府の立ち位置が鮮明となるだろう。
アメリカはウクライナとイスラエルの二正面状態の中、対中戦略、対北朝鮮戦略の上で日本と韓国を重視している。安倍元総理がインド太平洋の安全保障という概念を打ち出したことで、AUKUSが生まれたと言ってもいい。つまり、安倍元総理は太平洋の安全保障の在り方を変えた。ここが、歴史の大きな転換点だった。
岸田総理は、その安倍元総理が作り上げた新たな安全保障の枠組みを継承している。その上で、今回の訪米における岸田総理のスピーチを読む時、アメリカとの関係性に重要な指針を示していると言っていいだろう。岸田総理は、来るアメリカ大統領選を見据えている。共和党にも民主党にもいい顔をしただけだと酷評する前に、その中身を読み解けば、ある種の周到さも感じるのだ。中国の近隣諸国への武力と経済力を背景にした圧力を、むしろ逆に利用しているとも言える。
もちろん、今の自民党への逆風がある中で、同盟国アメリカでのスピーチの内容は、解散総選挙や自民党総裁選を控えながら果たしてどこまで踏み込むべきか?との疑問はある。あるのだが、少なくとも、岸田総理自身は解散総選挙のキャスティングボードを握っているのは確かであって、つまり、今の時点で仮に解散しても野党に勝ち目は無いことも見越しているし、有権者目線で見ても、今の野党に対して自民党に成り代わって政権担当能力があるなどとはとても思えない。
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以後、
・岸田総理の勝ち戦?
続きはnoteにて(倉沢良弦の「ニュースの裏側」)。