ファッションの深層?素材と形で見る個性が重要

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自分に似合うものを知る近道。それは、自分自身をもっとよく知ること。もともともっている特徴や魅力を知り、それらを最大限にいかす方法を知ることが、とても大切です。

パーソナルカラー春×骨格診断ナチュラル 似合わせBOOK」(海保麻里子 著)サンクチュアリ出版

似合う素材と苦手な素材

素材もまた、似合う・似合わないを決める重要なポイントになると海保さんは言います。筆者の場合、色は気にするものの素材までは考慮に入れてはいませんでした。

「骨格診断でわかるのは、似合うファッションアイテムの『形』と『素材』。形だけでなく素材もまた、似合う・似合わないを決める重要なポイントです。ナチュラルタイプは、筋肉や脂肪より骨の強さや大きさが目立ち、肌質はマットな方が多いタイプ。骨感を包み込むような風合いのある素材や、厚手の素材が似合います」(海保さん)

「麻や綿などの天然素材は大得意。 とくに、しわ加工が施されたものや、オックスフォード生地(注)のように表面に凹凸のあるものは、骨格や肌質にマッチしてこなれた雰囲気に。デニム、コーデュロイ、ブリティッシュツイードなどの厚手でかための素材も◎。 冬に着たいムートンやダウンのジャケットも、ナチュラルタイプなら着太りせずさらっと着こなせます」(同)

一方で、合わせにくい素材もあります。海保さんは次のように言います。

「同じ厚みのある素材でも、パリッとした綿シャツやギャバジン生地のトレンチコートなど、フラットできれいめの素材はちょっと苦手。 骨感や体の細さが強調され、寂しく物足りない印象になります。また、シフォンやポリエステルなどの薄い素材、モヘアなどのやわらかい素材、エナメルなどの光沢がある素材も、骨格や肌質にあまりマッチしません」(海保さん)

(注)オックスフォード生地は、「オックスフォード・シャーティング」が正式名称。平織組織の中でも斜子織り(ななこおり)に該当する組織の名称とされています。

ファッションは奥が深い

その日の私はキマっていた。新調したばかりのトムフォードのスーツに、ターンブル&アッサーのシャツ、ブルーのレジメンタルタイをあわせた。足元はEdward Greenのレースアップに、左手に輝くのはヴァシュロンのパトリモニーである。

来日したてのハリウッドスターに間違えられてもおかしくない、と鏡に映る自分の姿に朝から惚れ惚れとしていたのだった。

本日の取引先は、重厚長大の歴史ある会社。成功すれば、年間数億円の取引も夢ではない有望なクライアントである。前夜までプレゼン資料を必死に練り上げた私は、書類の再確認と身だしなみと髪型のチェックに余念がなかった。

「おはようございます」

通された会議室には、専務をはじめとする重役が勢ぞろいしていた。最新のIT機器が備わった、スマートかつファッショナブルな会議室だった。この日のために提案資料は練りに練り上げ、資料の文言は一字一句頭の中に入っていた。

プレゼンも完璧と思っていた……「受注は確定」のはずだが、見事に失注した。

担当者が次のように言う。

「尾藤様の服装が少々弊社にはそぐわないという話になりまして。他社に決めさせていただきました。また、プレゼンの際の横文字言葉も気になりました。申し訳ございません」

受話器を置いた後も、私は呆然としていた。「スーツや調度品は良いものを身に着けるように」と指導されていた私は、少々、身分不相応な格好をしていたのかも知れない。まだ20代の頃の話である。

さて、このようなときに、本書があればとても便利ではないか。ファッションに興味のある方、スタイルを変更したい方に読んでもらいたい一冊として紹介したい。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

2年振りに22冊目の本を出版しました。

読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)