日本社会のスピード感のなさを象徴する着任のご挨拶

谷本 真由美

私の近著「世界のニュースを日本人は何も知らない5」でも紹介していますが、日本には独自の習慣があります。その中には非合理的なものもあります。

4月の恒例といえば、日本では「4月1日から何ちゃらに着任しましたと」いう挨拶です。

私はこれを見るたびに実に日本的だなと感じています。自分が子供の頃から全く変わりません。今だにやっているのかという驚きがあります。

そもそも雇用の日付が習慣で決まってるのが謎です。

現在は世の中の動きが早く、業種や担当業務で人が必要なタイミングは違います。

そもそも仕事は金儲けの「ジャムセッション」のような時代です。一斉に働き始めて工場で同じ時間、同じ期間作業するという業種ばかりではありません。近年は製造業でさえかつてより遥かに流動性が高く、短期決戦、トレンドが変わるのも早い。しかも現在は戦時中です。世界は動いています。

「みんな一緒」なぞやっていたらタイミングを逃して負けます。

まるで日本人は全体が公家のようです。現実を無視して実に古臭い儀礼、慣例、しきたりを若いものも一生懸命守っている。今や上の方で色々決めている人間は私と同じ40代の氷河期やその少し上だと思われますが、「権威を疑え」「自由にやれ」と育ってきたのに古臭く、合理性に角ことをビジネスの現場でやっているわけです。これはもうビジネスではありません。会社自体が儀式です。

合理性の塊のようなイギリスは金儲けに熱心です。大学や役所でさえ採用、首なぞ一年中です。実にダイナミックです。彼らは国境を越えて移動しまくりです。ダメならスパッと逃げます。ダメなものは数ヶ月も待たずに首にします。遠回しであってもダメなものにはダメといいます。なんでも数値で評価するのが大好きです。そしてそれを晒し者にします。プロジェクト単位みたいな感じで物事が進みます。生徒の構成まで3か月単位ぐらいで変わります。動きが早いのです。

さすが腐っても大英帝国です。

Hiraman/iStock

日本は国全体が公家が支配する村のようです。のろのろしていたら全部ダメになります。世界は今は乱世の時代で戦国時代みたいなものです。ロシアや中国が何をやるかわかりません。南アジアや中東、アフリカも流動的。アメリカも不明です。

だから考え方ややり方を戦国時代式に変えなきゃダメなのですが、日本は江戸時代状態です。