せっかく集中して仕事に取り組んでいたのに同僚から声をかけられる。クライアントから連絡が入る。正直煩わしい「割りこみタスク」は、他人が起こす行動だから減らせないし仕方ない。そう考える人は多い。
しかし実は、ちょっとした行動・習慣を続けることで極小化できる。そう語るのは時短コンサルタントの滝川徹氏。今回は、滝川氏の著書『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング) 』より割りこみタスクを極小化する秘訣の解説を、再構成してお届けします。
「割りこみが好きではない」を暗に伝える方法
基本的に割りこみタスクは外部の要因によって発生するものだ。他者とのかかわりで仕事をする以上、発生頻度をゼロにすることは難しいだろう。しかし極小化することはできる。
そのひとつの方法が「私は割りこまれるのが好きではありません」というメッセージを暗に周りに伝えていくことだ。「上司やクライアントにそんなことが言えるか!」と思っただろうか。だがこれはそんなに難しいことではないのだ。いくつか私が日頃心がけていることをお伝えしよう。
ひとつは、上司や同僚から「今ちょっといいかな?」などと声をかけられたときに条件反射で「はい」と素直に応じないようにする。特にタスクに集中しているときは「急ぎでなければ、これが終わったあとでもいいですか?」と確認するようにしている。
その時点で相手が急いでいればもちろんその場で応じる。しかしこれまでの経験上、相手は大抵の場合「OK。都合がよくなったら声をかけてくれ」というリアクションが返ってくる。そうしたらとりかかっていた仕事に戻り、一段落ついてから相手に声をかけるようにしている。
この手法は地味ではあるが、効果は抜群だ。まず、声をかけられる前に取りかかっていた仕事への中断が数秒ですむので集中力を大幅に落とさずに作業に再び戻れる(少なくとも私の場合、中断の時間が長ければ長いほど集中力を取り戻すのに時間がかかる)。
次に、毎回「急ぎでなければ後でもいいか」と相手に確認していると、暗に「この人は中断されるのが嫌いなんだな」と伝えることになる。この「暗に伝えられる」というのがポイントだ。
「作業中は声をかけないでくれ」などとストレートに伝えたら「こっちだって仕事の話だよ!」と周囲に反感を買い、仕事がやりにくくなるだけだ。会社人たるものそんな波風をたてる必要はない。
「この人はそういう人なんだな」という印象程度でよいのだ。きれい好き、早口、時間に正確などと同じように「この人は割りこまれるのがあまり好きではないようだ」程度に印象づけられれば十分だ。
そのメッセージさえ伝われば、本当に急ぎでなければ相手も声をかけてこなくなる。声をかけてくる前にチャット等で「相談したいことがあるがいつなら大丈夫か」と確認が入るようになる。
即対応をしないことは相手にもメリットがある
後述するが私はメールやチャットは常にチェックしないようにしているので、それらの連絡が入っても割りこみタスクにならない。こうして私は苦なく割りこみタスクを減らすことに成功しているのだ。
こうして書くと、ものすごく自己中心的な仕事のスタイルと感じるかもしれない(まぁ、そのこと自体は否定しないが)。しかしこの習慣は相手にもメリットがあるのがポイントだ。それはこちらが準備ができた状態で相手と話をするので、相手としっかり向き合って対応できるようになることだ。どういうことか。
たとえば集中して作業をしてるときに声をかけられて、気もそぞろで相手の話に応じた経験はないだろうか。意外かもしれないが昔の私はイエスマンよろしく、上司や同僚から声をかけられたら常に相手を優先するようにしていた。
しかし作業の手は止めても、私の頭はその切り替えについていけていなかった。特に思考を巡らしてタスクに対峙しているときなどは、相手の話に相槌を打っても、それまでとりかかっていた仕事のことが気になり100%相手の話に集中することができない。時には早く話を終わらせたいばかりに相手に早く結論を言うように促したりしていた。正直、相手からすればかなり感じが悪かったと思う。
しかし一段落した後で声をかけるようにしてからは、相手の話に誠実に対応できるようになった。こちらから主体的に声をかけることで心の準備もできているので、思考も時間も余裕をもって相手に向き合うことができる。急かさずじっくり話を聞くことで、昔と比べればかなり印象がよくなったはずだ。
何回も言うが、相手はそんなに急いでいるとは限らない。ならばたとえ後のタイミングになっても、きちんと話を聞いて相談内容をくみ取ってくれるほうが相手にとってもメリットがある。そんな風に考えよう。
「後にしてほしい」と相手に伝えることに、はじめは気が引けたり罪悪感を感じるかもしれない。しかし割りこみタスクを本気で減らしたいならこれは避けて通れない道だ。勇気を出して相手に伝えてみよう。意外と相手はあっさりと「OK」と言ってくれるものだ。
ぜひトライして、この効果を体験してほしい。
■
滝川 徹(タスク管理の専門家)
1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。
【関連記事】
■「今日受けた仕事は原則、明日以降に取り組む」だけで仕事が回りはじめる理由 (滝川徹 時短コンサルタント)
■仕事の先送りをやめたいなら、先に仕事の順番を決めてしまえばいい。(滝川徹 時短コンサルタント)
■やるべき仕事をやるには1日を2時間単位で区切ろう(滝川徹 時短コンサルタント)
■あなたの仕事が終わらないのは「見えない時間」を考慮に入れていないから滝川徹 時短コンサルタント)
■仕事の先延ばしグセは時間帯を見直すことで回避できる(滝川徹 時短コンサルタント)
編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年4月24日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。