世田谷区が公開した「新型コロナウイルス感染症 世田谷区の対応記録」が酷すぎる。4月25日、福祉保健常任委員会で突如報告されたが、その内容たるや、保坂区長の自画自賛ばかり。あの「誰でもいつでも何度でも」とテレビでぶち上げ、区民を大混乱に陥れた「世田谷モデル」を成功例と位置づけるこの記録は、速やかに撤回されるべきだ。
委員会では、ひえしまが「保坂区長の宣伝に他ならない」と指弾したほか、自民の委員から「バランスを欠く内容だ」との指摘があり、立憲の委員からも「(世田谷モデルの)広報の仕方についての記述が必要ではないか」と苦言を呈せられる始末。
行政は「各界の声をコラムとして掲載しているので、偏りはない」と答弁していたが、そもそも、区長はじめ行政の落ち度を指摘する内容など一切掲載されていないし、そんなことをわざわざ書く人もいないだろう。両論併記でも何でもない、ただの保坂区政の“成功譚”に成り下がっている。
そもそも、保坂区長主導の「世田谷モデル」は、すでに(財)日本公衆衛生協会がまとめた「新型コロナウイルス感染症対応記録」(p264)の中で、
(世田谷モデルは)メディアでは好意的に報道された。当初対象とされた90万区民は、介護施設職員ら約2万3,000人に大幅に縮小され、しかも、陽性と判明したのはわずか25人であった。これは、事前の計算から十分に予測できたことであり、予算が4億円超と聞けば、区長の事後のコメント「施設関係者の感染を減らし、医療の逼迫を抑える効果はあった」を肯定的に受け取るのは不可能だ。
と、失敗例として報告されている。
専門家に一刀両断されているのに、この期に及んで区民の税金を使い、区長の礼賛記録を発行するとは言語道断である。
PCR検査対応はもとより、抗原検査キットを無料で駅頭でバラ撒き、転売ヤーの餌食にされたり、学校では修学旅行を一律に中止しようとしたり(ひえしまの指摘で後に撤回)、黙食をダラダラと続けたり(同じく後に撤回)、と世田谷モデルは失敗例としてしか、多くの人々にとっては意味をなさない。そのことに一切触れないところに、保坂区政の本性が象徴的に表れている。
保坂区長はこのほど『国より先に、やりました』を上梓したが、肝心なことは「何をやるか」であり、何でも国のやることを否定することではない。区民は、世田谷区が国と都と連携し、スピーディーに必要な政策を効果的に実行することこそを求めているはずだ。