パリ国立オペラ座、チレア「アドリアーナ・ルクヴルール」。
初見はここで、1994年1月。ミレッラ・フレーニがタイトルロール。なんて懐かしい・・・。筋も曲もほとんど覚えていない中、なぜかずーっと頭に残っていたのは、3幕冒頭、夜会準備シーンの旋律。なんてことないこの部分だけ、長年脳裏を巡っている不思議。今夜、このシーン聴いて、30年前の冬のパリ旅行を懐かしく思い出す。
今夜の目的は、アンナ・ネトレプコ。コヴィッド時期に組まれていたプログラムがようやく実現。コヴィッド後、戦争もあってアンナ様の美声を聴く機会なく、久々。
おぉぉ~、姫を卒業し、女王になってる!
柔らかくて繊細、情緒豊かな声は、深みを増しドラマティックに。ピアニッシモの透き通ったかつ味わい深い響きも、フォルテの舞台女優のようなオーラも、満杯この上ないオペラ・バスティーユ中に染み渡り、3800人が感動しているのが感じられる。
アンナ様、この感じだと数年後にはイゾルデ歌えるでしょう。その際には、万難を排して聴きます!願わくば、トリスタンがバーターテノールでありませんよう・・・。
アリアはもちろん、公爵夫人のクレマンティンヌ・マルゲーヌも素晴らしく、2幕のデュオも聴きごたえ抜群。マウリッツォとのデュオも悪くはないけれど、バーターなのでねぇ。エイヴァゾフ、初体験。声質がビリビリというかガリガリというか、ちょっと苦手。力強くメリハリもあって悪くはないけれど、好みでない声。
改めてこの作品見直して、音楽も台本も悪くないと感じる。最初から最後まで、テンポ良いストーリ展開で音楽もだれないし、引き込まれる作品。ミショネが、実はとても味わい深いというか悲哀もあるよい役だというのもわかった。
今夜のオケは、特に悪いところもなく、そつなく作品と歌手に寄り添ってる。モリエールやルイ14世の時代にピッタリ合わせた演出および舞台&衣装は、目新しさはないけれど物語の時代背景に完全にマッチしていて、目に心地よく世界観に直ぐに入れる。バレエシーン含め芝居としてとてもよくできてるなぁ。演出家デイヴィッド・マクヴィカー、多分初体験。後で調べたら、オペラだけでなく演劇の演出もしている。なるほど、だから芝居的要素が強くて心に沁みる舞台なのね。
アンナ様が出演した先週今週、オペラ・バスティーユは夜毎熱狂的なお祭り騒ぎだったそう。アンナ様は、カフェでくつろいだり美術館行ったり、オートクチュールデフィレみたりと、パリを満喫したよう。
来シーズンもパリで歌ってくれますように。できれば、高音がまだ出るうちに、もう一度タチアナ聴きたい。マッティinオネーギン相手に夢のように美しい響きだった。去年、ドンナ・レオノーラ聴かなかったのは後悔。テジエも出てたのになんでチケット買わなかったんだろう・・。
編集部より:この記事は加納雪乃さんのブログ「パリのおいしい日々5」2024年1月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「パリのおいしい日々5」をご覧ください。