4月25日の東京市場の崩れ方は個人的に不甲斐ない酷い下げ方だとみています。引き金はメタ社の決算で1-3月期の数字は良好だったものの今後、AI開発を推進するため、投資を上積みする点が嫌気され、本日25日のナスダック市場で一時14%の下落となり、アメリカの1-3月GDPが想定より低い数字となったことも重なり、NY市場は大幅安の展開となっています。
私が捉えたのはその正面の切り口ではなく、前日決算発表したテスラ社とメタ社との比較です。テスラ社の1-3月決算は減収減益で想定通りの散々な数字でしたが、マスク氏が書簡で「もっと安い画期的なEVの開発を前倒しにする」と述べたことで10%以上の株価上昇となったのです。
ではメタ社のAI投資積み上げで十数%株価が下がるのとマスク氏の何の具体的根拠も示さない得意のつぶやきで10%も株価が上がるのとどう違うのか説明せよ、と言われたらできますか?
私も長年の経験で市場の論理とこじつけはある程度理解しているつもりで、私なりの解釈です。メタ社はマグ7の中でも株価が高値水準にあり強気だった一方、テスラ社は52 weekの安値をつけたところです。この心理を読み解くとメタは業績が調子よいのに実になるかわからないお金をつぎ込むことで水を差したのに対して、藁をもつかむテスラ社からは口先でも心地よいことを言われてスルスルと株価が上がる心理ゲームにしか見えないのです。
マグ7のうち、グーグルとマイクロソフトが本日引け後に決算発表し、両社とも良好な結果で夜間市場では共に大幅高となっています。日本の株式市場がこのマグ7に右往左往するのはハイテク関連が相場の主導役だからでしょう。特に日本の半導体関連は期待先行で実力以上に株価が上昇してきたこともあり、決算の明暗で振り回されるというのが私の見方です。
私の4月17日のブログで「北米市場を見ている限り、地合いが良いとは言えません」とし、「日本の株価はどうなのでしょうか?…短期的な調整も指摘していたと思います。今、まさにそこにあるということです」と述べたうえで「これから2週間は緊張感をもって情勢の動きを確認したほうが良いでしょう。ばくちをするなら別ですが、基本は静観するのが正しいと思います」とさせていただきました。今のところは外していないと思います。
市場で強弱感が対立した場合、株価の揺らぎは大きくなります。東京市場はその典型です。では誰が買っているのかといえば個人なのです。外国人投資家が引いている中、逆張りが大好きな個人投資家が果敢に買っており、4月第三週の個人の買い越しは史上最高の9086億円です。(外国人投資家は5925億円の売り越し。)
では本日の日銀の政策決定会合で何が発表されるか、ですがQT、つまり量的緩和の縮小を何らかの形で表明する可能性があります。昨日、為替の話をしましたが円安万歳と思う人はもう古いのです。昨日JALの社長が円高がいいと述べたと申し上げましたが主要経済団体のトップは今の為替は行き過ぎと皆発言しています。円高や円安のどちらが良いというのではなく、為替は安定する方が良い、という点で経済界はほぼ足並みが揃っています。
では誰が円安でもいいといっているのかといえば一部の経済評論家なのです。彼らは実務ではなく机上の理論なので耳障りが良い話をしますが、経営をしている側とすれば何をぬかす、ということです。
黒田元総裁はタカになろうとしたハト、植田総裁はハトのような気遣いを見せるタカと申し上げました。たぶん、今日の昼にそれが妥当かわかると思います。QTに何らかの形で言及すれば植田氏はタカだというイメージが一気に広がるでしょう。それは円高へのバイアスになります。株価にはむしろスパイスのような形になり、中長期的には悪い結果にはならないと思います。あと効果は別として、為替実弾介入には要注意です。ゴールデンウィークまで待たず今日以降、いつでもありうるかもしれません。
決算発表で大事なのは決算の数字そのものと先行き見通しが株価に響きます。ただ、決算の数字はアナリストがある程度予想をしており、その予想に対してプラスかマイナスかで判断されるため、インパクトはどちらかといえば先行き見通しを会社がどう見ているか、そこにかかります。日本の会社はコンサバな見通しを出す傾向が強く、株価への刺激が十分でないとも言えます。ただ、日本は今回は本決算の発表となるので今期の見通しは要注意だと言えます。
分厚い雲から抜けるにはもう少し時間がかかりそうな気配を感じます。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年4月26日の記事より転載させていただきました。