トルコ人が日本人に教えてくれること

イスタンブールで出会ったトルコの友人ムラートさんが今年も来日。一緒に焼き肉ディナーをする機会がありました(写真)。

トルコ経済は政府の圧力による金融政策の失敗もあって混乱し、トルコリラ安と異常なインフレが続いています。

調べてみると、2007年には1トルコリラ=90円台だったトルコリラは、国内経済の混乱と共に下落を続け、直近では4円台になっています。実に円に対して20分の1以下に下落しています。米ドルに対しては、何と30分の1以下になっています。

30分の1ということはドル円で言えば、1ドル=100円だったのが1ドル=3,000円まで下落したのと同じことです。想像を超える自国通貨安で輸入品の価格上昇による「輸入インフレ」が起こっています。

また、現在のトルコの政策金利は何と50%です。インフレを抑え、通貨下落を防止するために金利を極端に引き上げる金融政策を取らざるを得ない状態です。

トルコの銀行の定期預金金利も50%近い高金利ですが、トルコ人はトルコリラで預金しようとは思わないようです。金利よりも通貨下落のスピードの方が早いと懸念しているからです。

このような経済環境の激変の影響を最も強く受けているのが、トルコの国内で生活している一般の人たちです。給料もトルコリラでもらい、資産のほとんどはトルコリラの預貯金という人達は、給与の実質的な減少と保有資産の実質価値の下落というダブルパンチで困窮している状態です。

賃金も上昇を続けていますが、物価上昇には追い付かず、生活水準は切り下がっています。

ムラートさんのような海外でのビジネスによって外貨の収入と資産を持っている人だけが、自国通貨価値の毀損から自分を守る術を持ち、実践しています。

円高トルコリラ安になっても、日本人がイスタンブールに行って物価安を感じることはあまりないそうです。トルコリラの通貨価値が20分の1になっても、インフレで物価が20倍近くになってしまえば、円ベースでは物価はあまり変わらないからです。

私はトルコで起こったことは日本のこれからを暗示していると思っています。こう書くと、トルコは新興国で日本のような先進国とは状況が違うという反発の声が聞こえてきそうです。

確かに1ドル=3,000円になる可能性は極めて低いとは思いますが、私が大学生の頃は1ドル=260円前後でした。

トルコで何が起こったかを謙虚な気持ちで学ぶことは、日本人がこれからの資産を守り増やすためにとても大切です。

tawatchaiprakobkit/iStock


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年4月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

アバター画像
資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。