海外との物価の関係:輸出物価・輸入物価・交易条件

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1. 輸出物価指数と輸入物価指数

前回は、日本銀行の企業物価指数のうち、国内企業物価指数についてご紹介しました。

また、相当する物価指数としてOECDの生産者物価指数(国内製造業)について、国際比較もしてみました。

日本は物価が停滞していた事が良く知られています。

一般的な消費者物価指数が2000年頃から停滞していた事に対して、国内企業物価指数は1980年ころから長期間停滞していた事になります。

先進国の中でも、このような状況は日本くらいです。

今回は、企業物価指数のうち、輸出物価指数輸入物価指数についてもご紹介します。

総務省統計局による解説では、次のように説明されています。

企業物価指数とは、企業間で取引される財に関する物価の変動を測定するものです。その主な目的は、企業間で取引される財に関する価格の集約を通じて、財の需給動向を把握し、景気動向ひいては金融政策を判断するための材料を提供することにあります。

基本分類指数は、国内企業物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数の3種類から構成されています。(中略)

これらの物価指数を算出するための価格調査は、原則として、調査先企業すなわち採用品目を構成する商品を生産している企業と輸出入取引を取り扱う卸売企業を対象に実施しています。

2. 輸出物価指数

早速、輸出物価指数からみてみましょう。

図1 企業物価指数 輸出物価指数 日本
日本企業 企業物価指数より

図1が日本の企業物価指数のうち、輸出物価指数(円ベース)です。1960年の数値を基準(1.0)として、その倍率として計算しています。

また、為替レートの影響も受ける事には注意が必要ですね。特に1985年以降は、プラザ合意の後に急激に円高が進んだ時期となります。

黒が総平均で、1980年代に向けて上昇し、その後は低下傾向が続いていた事がわかります。2022年、2023年で上昇している事も確認できますね。

それ以外の色のついた項目が輸出物価指数の構成項目です。

なんといっても、電気・電子機器が大きく下落しているのが特徴的ですね。通信速度や処理速度の向上に伴う単位性能あたりの費用が減少している影響も大きいと思われます。

他の構成項目も総平均値と概ね連動しています。

全体的に1980年代から下落していたり停滞が続いているようですね。

2022年、2023年でどの項目も上昇しています。

それぞれの項目で傾向は異なるものの、輸出物価は全体で見れば徐々に下落してきた事になります。

3. 輸入物価指数

続いて輸入物価指数についても眺めてみましょう。

図2 輸入物価指数 日本
日本銀行 企業物価指数より

図2が日本の輸入物価指数です。とても特徴的ですね。

1972年~1985年頃までに急激に輸入物価が上昇しています。

その後、1985年~1987年にかけて急激に低下し、その後はアップダウンしながら徐々に上昇しているようですね。

特に1987年以降に注目すると、飲食料品・食料用農水産物や、化学製品は徐々に上昇しています。

輸送用機器はん用・生産用・業務用機器は横ばい傾向、電気・電子機器は大きく下落しています。

2022年、2023年はどの項目でも急激な上昇が見られますね。

それぞれの項目で特徴がありつつも、輸入品は全体で見れば徐々に値上がり傾向であることがわかります。

4. 交易条件

輸出物価がやや下落傾向、輸入物価が上昇傾向であることがわかりました。

この輸出物価指数と輸入物価指数の比率を取ると、交易条件という指標となるようです。

交易条件 = 輸出物価指数 ÷ 輸入物価指数

内閣府の資料によれば、交易条件は次のように説明されています。

交易条件とは、輸出価格指数を輸入価格指数で除した比率であり、輸入価格に比して輸出価格が上昇(下落)する場合には、交易条件は改善(悪化)し、自国にとって貿易を行うことが有利(不利)となる。

商売でもそうですが、仕入れは安い方が良く、売値は高くしたいものですね。

日本全体として、海外との貿易によってより有利な交易条件となるには、輸出物価指数が上昇するか、輸入物価指数が下落する事が必要となります。

日本の交易条件はどのように推移してきたのか、実際に交易条件を計算してみましたのでご紹介します。

図3 交易条件 日本
日本銀行 企業物価指数より

図3が、日本銀行の企業物価指数のうち輸出物価指数と輸入物価指数から、交易条件を計算したものとなります。

交易条件を見ると、1960年から1972年まではほぼ横ばいでしたが、その後は徐々に下落傾向が続いてきたことがわかります。

2023年では、0.29と1960年の3割未満という状況ですね。

日本にとって海外との貿易で不利になり続けていたという事が言えそうです。

5. 輸出入デフレータとの関係

今回ご紹介したのは日本銀行の企業物価指数のうち輸出物価指数と輸入物価指数です。

国民経済計算やOECDの統計データでは、輸出デフレータや輸入デフレータといった指標も公開されています。

これらの関係がどの程度連動しているのか、検証してみましたのでご参考までにご紹介いたします。

図4 輸出物価・輸入物価 日本
日本銀行 企業物価指数、OECD統計データより

図4は日本銀行による輸出物価指数(青)、輸入物価指数(赤)に、OECDの輸出デフレータ(緑)と輸入デフレータ(橙)を重ね合わせたグラフです。

多少の誤差はありますが、どちらもよく一致している事がわかりますね。

6. 海外との物価の特徴

今回は日本の輸出物価指数輸入物価指数交易条件についてご紹介しました。

日本は1980年代後半以降、多少のアップダウンがありながらも、輸出物価は下落傾向、輸入物価は上昇傾向が続いてきました。

海外との取引の交易条件は、長期的に悪化し続けていた事になります。

為替レートの変化もありつつ、貿易相手国の変化なども大きな要因として考えられるかもしれませんね。

日本にとっては輸出も輸入も以前はアメリカが最大の相手国でしたが、近年ではそれが中国へと変化しています。(参考記事: 貿易相手の変化

中国との貿易割合が増大していく過程で、輸出品を安くしていく必要性が強まったという事も考えられそうです。

皆さんはどのように考えますか?


編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年5月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。