だから自由度が低いんだよ
国境なき記者団の報道の自由度ランキング2024が発表
国境なき記者団の報道の自由度ランキング2024が5月3日に発表されました。
戦争中で報道に大幅な制限がかかってるウクライナよりも日本の評価が低いランキングなので、この報告自体はどうでもいいのですが、日本メディアによる日本のランキングに関する報道の仕方が歪なので指摘しておきます。
朝日新聞は電波利権・クロスオーナーシップの問題に触れず報道
報道の自由度ランキング発表 日本は順位下げ、G7最下位の70位 https://t.co/vrlEA9WjZH
国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)は3日、2024年の「報道の自由度ランキング」を発表した。調査対象の180カ国・地域のうち日本は70位(前年68位)となり、主要7カ国(G7)の中で、最下位だった。
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) May 3, 2024
報道の自由度ランキングの日本に関する詳細報告では、「メディアの状況」の項で電波利権の問題、「政治的背景」の項で記者クラブの問題、「経済的背景」の項でクロスオーナーシップ(テレビ局と新聞社による相互持ち株制と法的保護)が書かれていました。
ところが、朝日新聞は記者クラブについての部分には触れているものの、電波利権やクロスオーナーシップの問題に触れずにそれ以外の部分を報道しています。
他のメディアもそのような傾向があります。
「極端なメディア集中」が同団体の報告の問題意識の中心であるにもかかわらず、こうした姿勢は従前の通りです。過去の報告と報道については以下で記録しています。
アンケート手法:ジャーナリスト・研究者・学者・人権活動家が対象に含まれる
Methodology used for compiling the World Press Freedom Index 2024 | RSF(魚拓)
報道の自由度の指標の決定には報道の自由の専門家(ジャーナリスト、研究者、学者、人権活動家を含む)を対象としたアンケート結果がに基づいているとあります。
過去の「詳細な手法」ページには2002年版から2013年~2021年版の手法が書かれており、後者についてはメディア専門家、弁護士、社会学者を対象としているとありましたが、それぞれの期間ごとに対象の変更があったようです。*1
ほか、2013年のアンケート手法の記述では、パートナーである5大陸にある18の表現の自由NGO、150人の特派員、ジャーナリスト、研究者、法律専門家、人権活動家にアンケートを送付しているとあり、記述が完全には一致していない。*2
このような調査結果をそのまま受け取るのはどうかと思います。*3
米国NGOフリーダムハウスによる「報道の自由」報告と更新されなくなったことについて
Freedom of the Press (report) – Wikipedia
フランスを拠点とする国境なき記者団とは別に、アメリカのNGOのフリーダムハウスによる報道の自由に関する報告(Freedom of the Press)があります。
前者よりも遥かに歴史が深かったのですが、2017年の報告を最後に報道の自由単独の報告書は更新されていません。
「世界の自由」(Freedom in the World)レポートにおける市民的自由の内訳において報道の自由について触れられている程度です。
米国NGO「フリーダムハウス」の方の報道の自由度ランキングは2017年で打ち止め。何度かフリーダムハウス側に問合せしているけどなしのつぶて。どうも報道の自由という概念自身に疑問を抱き始めた香りがする。
— 不破雷蔵@毎日更新ガベージニュース管理人 (@Fuwarin) April 25, 2020
とはいえ、2017年度報告までは毎年公表していたわけなのですが、なぜかあまり報道乃至シェアされないという状況にあります。
フリーダムハウスの報道の自由報告に関して朝日新聞は報じているのが見つかりはするが、X(旧Twitter)の朝日新聞公式アカウント(@asahi)は一切シェアしていません。
他の朝日新聞系アカウントでは朝日新聞国際報道部(@asahi_kokusai)が2022年にフリーダムハウスの報告に関する記事を1回シェアしているだけで、国境なき記者団の方は複数回シェアしています。
フリーダムハウスは「ネット上の自由」についても13年間報告書を出しており*4、日本は毎年上位に位置していますが、「報道機関の自由」という概念の不自由さに気づいてしまった、ということなのでしょうか?
編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2024年5月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。