「こどもの日」はこどもでも読める社説を書こう

工夫する新聞は増える

5月5日の「こどもの日」の大きなニュースは、子ども(15歳未満)の推計人口が1401万人(総務省推計)だったことです。前年より33万人減り、43年連続の減少です。

12-14歳は317万人に対し、0-2歳はコロナ危機の影響で結婚、出産が減ったこともあって235万人と、大幅な減り方です。今後も子どもの人口がさらに減り、日本全体の人口も減っていきます。

政府は昨年「こども基本法」を施行し、国や自治体が施策に子どもの声を反映させ、遊び場の確保についても、子どもの声を反映させるよう求めました。新聞も社会全体の活字離れに加え、人口減少で購読者人口が減っていくことに危機感を覚えています。

私は何年も前から、「こどもの日」くらいは、こどもに読んでもらえるやさしい記事を掲載したらどうかと希望してきました。人口の減少という危機もあり、多くの新聞が社説で「こどもの日」を取り上げています。

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新聞の中で、構えて書く社説が最も親しみにくく、読者に敬遠されます。そこで主要紙の「こどもの日」の社説を読み比べてみました。

感心したのは産経新聞です。「考える楽しさを知ろう/本はいつでも『友達』だ」という見出しです。書き出しは「おはようございます。今日は『こどもの日』です。祝日ですね。皆さんは何をしてますか」と、やさしく語り掛けています。

「友達はいますか。いない人でもすぐあえる『友達』を紹介したい思います。それは本です」。「不思議な絵や絵本をかいて、子どもにも大人にも人気だった安藤光雅(あんどうみつまさ)という絵描きさんがいました」。

こんな語り口で「本を読んで考え、理解する。大切なのは『自分で考える』ということです。「スマホはボタンを押すだけで人をおもしろがらしてくれます。ところが本は自分『読む』ことをしないと、おもしろさはわかりなせん」。こんな調子で読書の楽しみを説いています。

毎日新聞はどうでしょうか。見出しは「こどもまんなか社会/『未来を育む意識を広げたい」と、いわゆる社説調の堅苦しい表現です。読んでいくと、静岡県富士市で、子どもの場所づくりに取り組むNPO法人「ゆめ・まち・ねっと」の紹介があり、これはなかなかいいと思います。

「空き店舗を使って『おもしろ荘』と名付けたスペースを設けている。放課後に子どもたちが集まり、思い思いに遊んだり、宿題をして時間を過ごしている」、「監視役になるのではなく、黒衣にてっして時間を過ごしている」、「こどもたちと信頼関係を構築すると、心を開いた子どもたちは、虐待やいじめ、自傷行為を打ち明けるようになる」。

街に目だつ空き店舗にも、こんな活用の仕方があるのだなと、感心します。「学校現場では、子どもの悩みなどを十分に把握できていないのではないかと、代表の渡部さんはいう」。

読売新聞は「五感を高める体験を大切に」が見出しです。「10-17歳を対象にしたネット利用調査(こども家庭庁)では、1日の平均利用時間は5時間で、2年前に比べ30分延びた。スマートフォンへの依存が強まっている」と指摘しています。

「『なぜ』という疑問が浮かんでも、自分の頭で考えずに、スマホで答えを探そうとしているのではないか」、「仮想空間に長時間浸るのではなく、五感を通して得られる現実の体験を大切にしたい」と。「いきなり五感を大切に」には飛躍があるにしても、「五感」の大切さは正論です。

朝日新聞は「子どもの日」は素通りしています。「適正評価制度/もっと具体的に説明を」(経済安全保障政策の実施上の問題点)、「河村市長の発言/戦争は道徳では語れない」(祖国のために命を捨てるのは高度な道徳的行為だとの発言を問題視)の2本です。

安全保障政策や戦争論の問題も人間、あるいは将来、おとなになっていく子どもあっての話のはずです。社説で扱うテーマに関して、朝日流の優先順位のつけ方に首を傾げます。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2024年5月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。