痛みを伴う経験でしか人は成長しない

黒坂岳央です。

「辛く、苦しいことから逃げても良い」昨今、こうした優しげな提案がなされる事が多い。確かにただただた心を痛めるだけの人や環境に身を置くメリットはないだろう。自分自身も、気持ちがネガティブになるだけのマスメディアの情報や、不快な相手は積極的に遮断している。

だが、こと「挑戦」という文脈においては痛みを伴わない経験は残らない事が多いと思っている。「失敗しか筋肉にならない」という言葉があるように、人間が真の意味で成長し、開眼するのは多くの場合、痛みを伴う経験によるものだ。

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ギャンブルで9割が負けるシンプルな理由

ギャンブルはほとんどの人が負けてしまう。いわゆる、テラ銭とか期待値といった言葉でその負けを説明される事が多く、「統計的に負けるように出来ている」といった話だ。

しかし、個人的にはもっと本質の理由は数学的に説明されるのではなく、心理学的な側面だと思っている。すなわち、「人は負けないとやめられないから」というシンプルな理由で説明できる。

たとえば、株式投資でもパチンコでも、勝っている時に降りて利益を確保できる人は少ない。勝っている時は「もっともっと!」とドンドン手元資金を投じて勝負しに行く。多少、小さな負けが続いたところでは「なあに、まだまだ上がる」とさらに躍起になって勝負を続ける。

結局、完全に降りるのは手元の資金がすべて解けてもはや掛け金がなくなってしまったか、大暴落の末に塩漬けで損失を確定できなくなった時である。

勝っている時は人は有頂天になる。「勝っている自分は天才だ!」と勘違いして、リスクリワードを考えない蛮行を継続する。目が覚めるのは負けという痛みを確定した時だけだ。株式でも債券でも堅実な投資をしている人の多くは、過去に大敗北を経験しそこからリスクリワードのマネジメントを学んだ人である事が多い。

投資やギャンブルでは、手元資金の少ない段階で一度、二度、手痛い経験をしておくことは悪くないと思っている。

勉強、人間関係やビジネスも痛みが成長させる

勉強、人間関係やビジネスに主語を置き換えても同じことが言える。

勉強について言えば、読むテキスト、解く問題のすべてが分かる簡単なものだけでは力はつかない。脳に汗をかく応用問題で悩み、苦悩し、それを突破した時に大きく成長することができる。

人間関係も同様で、最初は適切な距離感で接することができていたのに、いつしか相手に甘えて依存的になってしまい、とうとう相手が立ち去っていく痛みを経験した時に、初めて相手との上手な距離感を学んだりするものだ。

優秀なビジネスマンほど、人並み以上に壁を超えた回数は多いのは間違いない。すぐに答えや解決策を他人に求めて助けてもらってばかりの人は、いざ一人で突破しなければいけない時に手も足も出なくなる。

筆者は会社員時代に何度もホテルに泊まり込みでトラブルや鉄火場を突破したことがあったが、今振り返ると「早く終わってくれ」と苦しみながら頑張っていたタイミングが一番スキルアップしたという感覚がある。

毎日、何の苦痛も困難もなくずっとやってきたルーチンからは真の成長はない。そうなると次第に「変化したくない」と感じるコンフォートゾーンが形成され、いよいよどうにもならなくなったタイミングで手も足も出なくなる。世の中や社会は変化している。自分自身も変化しなければ置いていかれる。代わり映えのない快適なルーチンより、多少の負荷をかけ続ける痛みで成長を目指すことを意識したい。

 

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