地方議員から見た緊急事態条項の意義 --- 早坂 義弘

東京都内選出の都議会・区議会・市議会の地方議員が集まり、憲法改正に関する勉強会が開かれた。

私にまとまった時間が与えられので、その意義を報告させて頂いた。

自民党は以下の通り、憲法改正重点4項目を掲げている。

① 自衛隊の明記(憲法9条)
② 教育拡充(憲法26条)
③ 合区解消(憲法47条)
④ 緊急事態条項(憲法73条)

地方議会の立場から、④ 緊急事態条項の意義について、少し長くなるが説明したい。

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東日本大震災の教訓

2011年3月11日に東日本大震災が発生し、死者行方不明者1万8500人となった。

そうした混乱下、4月には統一地方選挙が予定されていた。

しかし被災地での選挙実施は困難と判断され、岩手県・宮城県・福島県・茨城県で計71の選挙が7ヶ月間延長された。

地方議員と首長の任期は4年間と、地方自治法93条で定められているのを、特例法を作り、7ヶ月間延長したのだ。

ところで国会議員の任期は、衆院4年(憲法45条)参院6年(憲法46条)と定められており、例外規定はない。

そこで現状では、東日本大震災のような災害が発生しても、国政選挙は必ず実施されなければならない。

しかしそれは余りにも理不尽なので、憲法を改正して、国政選挙の延期(国会議員の任期延長)を可能にする例外規定を定めておく必要がある。

新型コロナの教訓

法律は、税を課すなど国民生活に大きな影響があるので、行政が決めてはならず、国民から選挙で選ばれた立法府(国会)で決める必要がある。

これを「法律による行政の原理」と呼ぶ。

地方議会でも同じで、(知事や区長市長でなく)各議会が条例を定める。

しかし特に緊急を要する場合には、議会の承認を得ずに首長が決定出来る例外措置(専決処分)が定められている(地方自治法179条)。

これによって東京都は新型コロナ対策で15回の専決処分を行った。(通常議決は31回だった。)

ちなみに専決処分を行った際には、次に開催される議会でその内容の承認を得る必要がある。

ところで「国会は国の唯一の立法機関(憲法41条)」と定められており、例外規定はない。

仮に衆院が解散して衆院議員がひとりもいない状況で、新型コロナのような国民全体に外出自粛をお願いするような状況になれば、参院を開くことも困難だろう。

そうした場合に備えて憲法を改正して、地方自治体での専決処分と同じように、政府が法律と同じ効果を持つ緊急政令を定められるようにしておく必要がある。(その場合には当然、次に開催される国会でその内容の承認を得る必要があるようにすべきだ。)

東日本大震災と新型コロナの教訓から、緊急事態条項に関する憲法改正を急ぐ必要があると強く考える。

早坂 義弘(はやさか・よしひろ)東京都議会議員(杉並区、自民党)
1968年東京都杉並区生まれ。立教大学法学部卒業、明治大学公共政策大学院修了。2005年都議選に出馬し、初当選(現在5期目)。令和防災研究所理事、日本AED財団常務理事、防災士研修センター(初代)代表取締役。ニックネームは「ミスター防災」。公式サイト