日々時間内に仕事が終わらず残業でなんとかこなしている人も多いだろう。しかし実は、勇気を出して残業しないほうが視点・考え方に変化が起こり、結果的に驚くほど仕事が片づくようになる。
そう語るのは現役会社員・時短コンサルタントの滝川徹氏。今回は、滝川氏の著書『細分化して片付ける30分仕事術(パンローリング) 』より、「パーキンソンの法則」についての解説を、再構成してお届けします。
時間を制限すれば、仕事はどんどん片付いていく。
仕事の生産性を上げるという観点で、知っておいたほうがいい法則がある。それは「パーキンソンの法則」とよばれるものだ。
私の愛読書ティモシー・フェリス著『「週4時間」だけ働く』(青志社)の中でこの法則は「仕事は、完了するために割り当てられた時間に応じて(見た目が)重要で複雑なものへと膨れ上がっていく」と紹介されている。「与えられた時間いっぱいまで仕事は膨らんでいく」というこの法則はつまるところ「時間を制限すれば仕事はどんどん片付いていく」と言えるだろう。
たとえば会議。情報共有が目的のため想定では30分あれば十分だと思っても、キリのよい1時間でひとまずセッティングして関係者に通達する。すると設定した60分に合わせてなんとなく進行してしまい、結果30分で終わる会議も60分費やしてしまう。そんな経験はないだろうか。最初から30分でセッティングしておけば、無駄なやり取りもなくなるのだ。
私がこれを最初に体感したのは長時間労働に苦しんでいた時期だ。少しでも効率よく仕事を終わらせるために、当時の私は始業前に1時間以上前業(ぜんぎょう)(始業前に働くこと)することが習慣になっていた。
そんななかでブログをスタートしたのは2014年。といってもそれ以前に少しブログを書いたことはあったがうまく続けられずにいた。そんななかサポートしてくれる人に出会い、もう一度本格的にブログを再開しよう。そう決意を新たにしたのだ。
せっかく再始動したのだから、どうせなら毎日ブログを更新したい。そう考えがんばっていた。だが、ただでさえ時間がない。ブログを毎日書く時間を捻出する必要に迫られた私は、さんざん考えたあげく前業をやめてその時間をブログの執筆にあてることにした。もちろん、この決断は簡単ではなかった。
仕事への影響を考えれば睡眠時間を削るわけにはいかない。家族と過ごす時間を犠牲にすることも考えられない。そこで残された唯一の選択肢が、働く時間を減らすことだったのだ。「え? 時間が足りないから前業していたんじゃないの?」と思っただろうか。無理もない。
私は当時「働く時間を減らさなければいけない」とちょうど考えていた。とりあえず試してみて、仕事が回らなくなったらまた元に戻せばいい。そう思い、翌日から前業をやめてその時間でブログを書くことにした。
「今まで私が捧げてきた前業の時間は一体なんだったのか」
それからは毎朝オフィスでの前業に代わり、会社近くのマクドナルドでブログを書いた。はじめのうちはさすがに「就業時間内に仕事が終わらなくなるかもしれないな……」と少し不安になっていたが、1週間、2週間と経過しても仕事は問題なく回っていく。
さらに1カ月、2カ月と経過しても何も問題は起こらなかった。月単位で考えれば、間違いなく20時間以上働く時間は減っていたはずだ。にもかかわらず、何も問題は起きなかったのだ。
就業時間という限られた時間枠内で、それまでと同じ成果を保つことができたことに安心したと同時に、「今まで私が捧げてきた前業の時間は一体なんだったんだ……」と思わずにはいられなかった。
実は「残業ゼロ」の働き方をはじめたときも同じ経験をしている。私は当時色々あって(くわしく知りたい人は拙著『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』〔金風舎〕)を読んでほしい)2016年4月から「残業ゼロ」で働くことに決めた。
このときも、前業をやめたときほどではなかったが「時間内に仕事が終わらなかったらどうしよう」と不安になった。しかし蓋を開けてみれば、またもや問題なく仕事は回っていった。いや、むしろ仕事はどんどん片付いていった。パーキンソンの法則は正しかったのだ。どうしてそう断言できるのか。
「仕事起点」から「時間起点」へのシフト
働く時間を制限していなかった頃の私は、仕事が終わらなければ最悪残業すればよいと思っていた。だが働く時間を制限すると、必然的に仕事にかけられる時間が限られてくる。
残業をしていた頃は「この仕事にどれくらいの時間が必要か」という「仕事起点」で仕事に費やす時間を決めていた。しかし残業しないと決意してからは「この仕事にはこれくらいの時間しかかけられない」と考えるようになった。今の私は仕事に費やす時間を決めるとき「仕事起点」ではなく「時間起点」で考えている。
これは育児や介護、社会人スクールなどで残業ができない、または時短勤務をしている人には当たり前のことだろう。終業時間のリミットが決まっているので、上手く仕事をさばかないとそのあとの全てに影響が出てしまう。必然的に「この仕事にはこれしか時間が使えない」という考え方になるはずだ。だが迫られる事柄がなくても、考え方を変えれば結果は変わる。今の私がそうであるように。
時間を制限したことは結果的に80対20の法則と良い相乗効果を生んだ。念のため説明すると、80対20の法則とは仕事の成果の8割は2割の重要な仕事が生み出しているとする考え方だ。
時間がなくなった私は、必然的に生産性の低い8割の仕事に時間をかけられなくなっていったのだ。時間が限られると効率を重視し、人は過剰な品質を追求しなくなる。及第点で充分だ。そのおかげで結果的に最速で8割の仕事を片付けられるようになっていった。
繰り返すが生産性を上げたいならば、時間を制限することだ。いきなり「残業ゼロにしろ」なんて言わない。1日15分でも30分でもいい。できる範囲で少しずつ、働く時間を減らしていく。それを続けていけば、君の生産性は驚くほど上がっていく。
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滝川 徹(タスク管理の専門家)
1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年5月15日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。