老害は、その人の元来の性格がもたらす「心の癖」だと思っています。
「心の癖」とは、怒りやすい人とか神経質な人とか、そういう生まれつき備わっている行動特性のことです。もともとの性格や思考を変えることは難しい。というより、ほぼできないと考えたほうがいいでしょう。
「老害」の人にならないコツ」(平松類 著)アスコム
あなたは果たして老害か
著者の平松さん(医師、医学博士。二本松眼科病院副院長)から質問です。
次の質問を考えてみてください。
【質問1】
この本を手にされているみなさんは、実際はどんな人が老害になるとお考えでしょうか。① 老害は若い人たちがつくった概念。そもそも老害なんて存在しない。
② 老害は脳の病気 自分をはじめ普通の人なら大丈夫。
③ 誰でもなるもの。だから自分もいずれ老害になる可能性がある。
この質問はとても簡単だったと思います。
そうです。 答えは③です。
①については、実際そういった背景もあるでしょうが、存在しないということはさすがにないですよね。
②のように「普通の人なら大丈夫」とは、つい思ってしまいがちです。しかし、はっきりいいましょう。老害といわれる人は、必ずしも特殊ではないのです。
あるポイントを知らないでいると、悪意もなく、間違った行動もしていないというのに、誰しもが「老害」だと勘違いされてしまう可能性があります。
とはいえ、世の中には老害になる人とならない人がいます。
その違いを知りたいとは思いませんか?
モラル教育の必要性
さて、話はかわります。老害を考えるにあたり、必要なことはモラル教育が重要ではないかと思います。とくに、医師と関わる関係者のモラル改善は優先すべき課題です。
10年以上前の出来事になります。筆者の祖父母が90歳を過ぎて認知症を発症した際、要介護5級と評価されました。家族だけで介護することは困難なことから、在宅医療とホームヘルパーの派遣を要請します。
数カ月が経過してからあることに気が付きました。祖父は郵政省を定年退職しており、退官時に金時計と贈呈品としてもらっていましたが無くなっていたのです。
ほかにも、希少価値の高い、切手シート、古銭、貨幣、エラー切手、エラーコイン、趣味で収集していた般若・おかめの面などもすべて無くなっていました。金庫の中に入れていた現金や有価証券類なども全て消えていました。
驚いたのは、新興宗教団体の入会申込書と、資産をお布施として提供する旨が書かれた書類を発見したことです。被害額は数千万円にのぼった可能性もあります。
関係者に照会したところ、「日頃のお礼に受け取ってほしいと言われて、仕方なくもらった」という回答でした。日常会話が不可能で、すでに家族を正しく認識することができない状態です。虚偽であることは明白でした。
リスク対策が身を守る
警察に相談したものの介入には消極的でした。録画など決定的な証拠が必要だったのです。その後、関係者とは連絡がとれなくなりヘルパー派遣会社は倒産します(事件発覚を恐れた結果の計画倒産と判断しました)。センシティブだからこそ、このような問題にも向き合うべきではないかと思います。
本書では数多くのベストセラーを出してきた、カリスマ医師の平松さんが、診療などで接してきた高齢者との体験、さらに国内外の膨大な医学論文やデータから導き出した「嫌われない老人」になるための方法を紹介する1冊です。320ページの大作、読み応えがあります。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)