ラテンアメリカで拡大するイランの影響力

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先ずベネズエラをラテンアメリカの入口に

1990年代米国がラテンアメリカへの関心を少なくしている隙間に、中国がそれを利用してラテンアメリカへの進出を開始した。同様に、2000年代にはイランが反米主義を掲げるチャベス政権のベネズエラをラテンアメリカへの入口として進出を開始した。当時のイランは核開発に取り組んでいたことで、欧米から孤立させられていた。その脱皮を図るべく、新天地としてラテンアメリカへの進出を目指すようになっていた。

ベネズエラとイランは2005年に当時のウーゴ・チャベス大統領とマフムード・アフマディーネジャード大統領によって軍事、エネルギー、財政の面での20年間の合意が結ばれた。この協定によって、イランから革命防衛隊のコッズ部隊の隊員がベネズエラには常駐するようになっている。彼らの任務の一つがテロ活動だ。

そのテロ活動のひとつが2021年末に起こった事件だ。彼らはコロンビアの首都ボゴターのイスラエル人経営者2名を暗殺しようとしたが、当時のコロンビア政府の協力でこの二人は無事国外に脱出することができた。

余談ながら、現在のコロンビア政府であればこの2名のイスラエル人は殺害されていた可能性が高い。というのも、現在のペトロ大統領のコロンビアは左派政権で、むしろマドゥロ大統領のベネズエラ政府と良好な関係にあるからだ。

コロンビアはこれまで南米において米国が最も信頼していた国で、右派政権が長年続いた国である。が、2022年8月から元テロ戦闘員だったペトロ氏が大統領になってから外交に変化が見られ政策も左翼化している。

イラン進出でテロ活動も容易になっている

ベネズエラを起点にイランのラテンアメリカにおける影響力の拡大はイスラム原理主義を伴うものとなる。イスラム原理主義は欧米の議会政治や社会主義は否定され、イスラム教による宗教国家を樹立することを目指している。その樹立の為にはテロ活動も肯定されるようになった。その典型がイランのテロ組織ヒズボラである。

パラグアイ、ブラジル、アルゼンチンの3か国が国境を分かつ地帯は、ヒズボラの巣窟となっている。現在のヒズボラは、各国に勢力を張ってる麻薬組織と関係を深めて資金力もついている。例えば、パラグアイにはブラジルの麻薬組織、エクアドルにはメキシコの麻薬組織、チリには地元の麻薬組織がそれぞれ活動し、結果ラテンアメリカはどの国にも麻薬組織が蔓延っている。

しかも、ベネズエラとボリビアでは偽造パスポートが彼らの為に発給されているから、彼らの南米での移動は容易になっている。だから、これまで比較的麻薬組織の侵入が少なかったアルゼンチンも国境での警戒を強めている。

イランの広報手段

また彼らはイスラム原理主義の普及にメディアを積極的に利用している。例えば、HISPANTVはスペイン語でテレビとデジタル紙によるイランの典型的な報道機関である。更に、Al MayadeenはベネズエラのCanal Surと連携している。Cubavision Internacional、Canal Caribeなど。どれもイスラム原理主義の普及の為のメディアである。

最近のイスラエルのガザ地区への侵入に反対してコロンビアとボリビアがイスラエルとの国交を断絶したが、これもイランにとって両国での活動を容易にする要因となっている。